秋の夜長を楽しむように

  虫の声がにぎやかに聞こえます。

 

  縁側で上弦の月を眺めながら

  ため息をつく貴族

 

たけし源氏 「あぁ…満月が近づく…はあぁ……」

 

―――

 

たぬき(さとみ) 「たけし源氏様は、ここしばらく

           ずっとため息ばかりついてるけれど

           なんでだろう~?」

 

たぬき(ひろじ) 「う~~ん? 

           秋はセンチメンタルになるとか…」

 

たぬき(さとみ) 「それは乙女の話しでは?

           まさか?! たけし源氏様も乙女?」

 

たぬき(ひろじ) 「まさかぁ~~」

 

たぬき(さとみ) 「ここは、ひと肌ぬいで (たぬき皮をベリッ)

           ちゃう! ちゃう!

           姫君達を呼んで元気になってもらわないとね~」

 

たぬき(ひろじ) 「妹よ! それは良い考えだ!!」

 

  こうして満月の夜に合わせて姫達を呼ぶ

  「月見の宴」を企画するたぬき達であった。

 

―――

 

  美しい夜空に皓皓と輝く満月

  いつもの年よりも大きく妖しく輝くのでした。

 

  姫達が少し遅れたけれど

  源氏の君のお誕生日のお祝いにと集まって来ました。

 

たぬき(ひろじ) 「たけし源氏様

           姫君達がお誕生日のお祝いにお越しです。

           どうか座敷までお願いします」

 

たけし源氏 「そうか~わかった。 すぐ参る」

 

―――

 

  ポンポコ~ ポンポコ♪

  たぬきの腹鼓の音に横笛と琴の音が重なり

  美しい調べが奏でられる中

  香『あの月へ帰りたい?』を漂わせながら

  しずしずと現れました。

 

姫達 「たけし源氏様、遅くなりましたが

     お誕生日おめでとうございます♪」

 

たけし源氏 「姫達、どうもありがとう~♪ とっても嬉しいよ」

 

花子姫 「たけし源氏様、少しお元気がないように

      お見受けしますが、どうかされたのですか~?」

 

たけし源氏 「実は…今日で姫達と…

         お別れするかもしれないと思うと…」

 

姫達 「ええっー!! なぜですか?」

 

たけし源氏 「今宵の月は…あまりにも大きくて

         何やら胸騒ぎがするのです」

 

komo姫 「それは…どういうことですか?」

 

たけし源氏 「もしかして、僕は月の子かもしれないのです」

 

とし姫 「えっー!! かぐや姫?」

 

春風姫 「いえいえ~

      それを言うなら、かぐや殿かも~ ふふっ」

 

mii姫 「では、もしかすると月より使者が

     たけし源氏様をお迎えに来るということですか~?」

 

たけし源氏 「はい。それが今宵かもしれません」

 

小春姫 「そんなぁ~ 嫌です!!

      どうか行かないで下さいませ」

 

kumu.kumu姫 「私は今日初めて、たけし源氏様にお逢いできたのに

          もうお別れだなんて…悲しすぎます…」

 

たけし源氏 「あぁ… kumu.kumu姫、すまない。

         僕だってどんなに悲しいか……」

 

ユル姫 「なんとか防ぐ手段はないのですか?」

 

たけし源氏 「僕にも分かりませんが、

         今宵さえ乗り越えれば大丈夫なような気がします」

 

エコー姫 「では、みんなで たけし源氏様をお守りしましょう!」

 

ふく姫 「はい。朝までお守りします」

 

恵美姫 「これは一大事!!

      今宵はお酒を我慢してお守り致します」

 

みなこ姫 「私も呑んでる場合じゃないので我慢! 我慢!」

 

たけし源氏 「いやいや~ 折角のお月見なので

         料理もお酒も召し上がって下さいね」

 

みなこ姫 「はい。では少しだけ…ふふっ」

 

キヨ姫 「みなこ姫様、よかったわね~ ちょっとだけよ!」

 

チロリン姫 「しかし、お月様の子っていうのは、

        何か思いあたることがあったのですか?」

 

たけし源氏 「うむっ。夜な夜な『…たけが恋しい』と

         お月様から聞こえてきて

         『たけ』は僕のことじゃないかと思うんだけど…」

 

たぬき(さとみ) 「うん?!」

 

hina姫 「それで、お月様の子と思われたんですね~」

 

たけし源氏 「うん。お月様が僕を呼んでいるのかもって思って…」

 

バンビーナ姫 「たけし源氏様の綺麗な歌声やお顔を

           お月様も恋しがっているのかしら~」

 

ゆう姫 「でも、お月様にたけし源氏様が帰られたら寂しくなります」

 

しづ姫 「ほんとに~ たけし源氏様のいない

      世の中なんて考えられません」

 

とりたま姫 「私も一緒にお月様に行きたいです!」

 

たけし源氏 「みんな、ありがとう~♡

         僕だって姫達のいない世界は考えられないよ~」

 

たぬき(さとみ) 「#&%@*$…」

 

れい姫 「何だか、さとみたぬきさんが もごもごと仰ってます~」

 

たぬき(さとみ) 「#&%@*$…」

 

浜姫 「なになに~? 通訳します。

     『…たけが恋しい』って言ったのは、

     もしかしたら私が月に向かって叫んだ

     『松茸が恋しい! 食べたい!』って言ったのが

     聞こえたのかも……って (笑)」

 

姫達 「えええっー!!!」

 

ローズ姫 「さとみたぬきさん

        夜な夜な仰ったんですか~?」

 

たぬき(さとみ) 「はい… 食べたくて… すみません。

           まさか、そんな誤解を与えるとは思わなかったので…」

 

亮殿 「さとみたぬきさん、安心致せ。

     そなたの食べたいという松茸を

     私が持って参っている。

     沢山あるので召し上がるといい!」

 

たぬき(さとみ) 「ははぁ~! 有り難き幸せ♡」

 

たけし源氏 「ふふふっ…。そんなことだったとは…

         僕としたことが一世一代の不覚!!

         姫達に心配をかけてしまってすまなかった」

 

姫達 「ほっ。 よかったぁ~!!」

 

花子姫 「これで、いつものたけし源氏様が見られますね。

      本当によかった♡」

 

とし姫 「あ~ 安心したらお腹が空いてきたわ。ふふっ」

 

恵美姫 「私もこれで気兼ねなく呑めるわ」

 

みなこ姫 「んだんだ!」

 

たけし源氏 「それでは今宵の月を楽しみながら

         僕の歌を聴いて下さい」

 

姫達 (パチパチパチ…)

 

たけし源氏 「満月だけど『三日月が綺麗だから』を歌います」

 

    誰よりも心が 傷つきやすいのに

    強がりでいるのが 今では愛しい

    涙の色は 十人十色

    素直に流せば良い

    怖がらないで 俯かないで

    笑顔で頷けば良い

 

    三日月がね 綺麗だから

    僕はこの愛誓うよ

    そして君は 愛に照らされて

    幸せに 幸せになる

 

姫達 (パチパチパチ…)

 

 

 

 

  この物語はフィクションです。