これは、夢だ。

先の震災で流され、土台を残して消失したはずの夫の実家を目の前にして、私は思った。
空はマーブル模様の夕焼けだった。
玄関から入らないで、私は窓から久しぶりに夫の家に入った。
洗ったように廊下が綺麗だった。
こんな長い廊下は実際の実家には無かった。
妙に静かで、光源がわからない明るさ、妙に清潔な家内に、ああ、あの世の光景っぽいな、と夢の中で私は変にリアルに思った。

二階に上がると、震災で亡くなった義理の母が部屋に来て、普通に「ん?ああ、あんたか」みたいに、彼女の生前に嫁であった私を見た。
久しぶりに見る義母はいつも通りだった。
やることがいっぱいで忙しそうで、家人の誰かにいつも少しイライラしてる感じ。
姿は見えないが、亡くなった義理の祖母の気配も家の中にあった。
義母と義祖母は生前仲が悪かったから、ああ、あっちでもまだやってるのか、と思った。
やはり震災で亡くなった義理の父の気配は無くて、なんとなく、この家には女しかいない、という感じがした。
久しぶりに会う義母に何か話そうと考えていると、義母が先に、思い出したように私に言った。

「あんだも、来年の春にはこッちさ来んだからね」

…それはそれはいつもの調子で。
例えば「なんとかちゃんとこ、二人目生まれてさ、あんだだちの名前でお祝いやっといたから」とか、「布団足りてる?綺麗な毛布あんだけど、持ってく?」とかみたいな、連絡事項の口調だった。
しかし。

おいおいおいおい。
勘弁してくれよーーー😱

「はあっ?」と、義母に突っ込もうとしているところで、目が覚めた。

目が覚めても私は夢の光景をずっと考え続けた。
どう考えても、死のお知らせの夢やんか。
不思議と、ざわざわはしなかった。
私はぼんやり布団の中で考え続けた。

今が2016年の秋だから、2017年の春ってこと?
死ぬのはしょうがないと思う、誰だって死ぬんだし、今健康でも事故とかあるもんね、お知らせがあるだけ有り難いのかも。
え、でもおかあさん、せめて何月か教えて、色々予定とかあるし…。

今思えば、この夢が、この奇妙で壮大な物語の始まりだったかもしれなかった。