「通小町」、見てきました。友人が熱を出したので(私のをうつしちゃったんだろうか。咳が出るから違うわよ、と言ってくれたけど)、有無をいわさず(--;Mを誘って、南青山にある銕仙会能楽研修所 に。



響の会 」第29回研究公演  

◎仕舞「楊貴妃」  観世栄夫

◎狂言「鎌腹」   シテ(夫):山本東次郎  

            アド(妻):山本則秀  

            アド(仲裁人):山本則俊

◎能「通小町」   シテ(深草少将の怨霊):西村高夫  

  あらすじ      ツレ(里女=小野小町):浅見慈一 

            ワキ(僧):工藤和哉              

            


以下、能楽鑑賞初心者の感想ですm(_ _)m


観世栄夫さんの舞台は初めてでした。ネスカフェ・ゴールドブレンドのCM(--;を覚えている方もいらっしゃるかもしれません。ご高齢になられて足元が少しおぼつかなくていらっしゃいましたが(伝統芸能ではそう珍しいことではないし、私は気にならずに集中できるのですが・・見るべきところ、受け取るべきところは別にあると思います・・、Mが倒れないか心配したと申したのでございます)、最初のお声で後頭部がビィィンときました。それぐらいお声(単に声だけじゃないことはいうまでもないですが)がよくてハリがあって・・・なんとも風格がありました。

狂言「鎌腹」は、夫婦喧嘩のお話・・・。と、わかった瞬間に、隣のMをちらっと見てしまいました。そしたら、Mもニヤニヤしていました。

鬼嫁に「山(仕事)に行ってこい」といわれたアカンタレの夫。堀に身を投げて死のうか、持っている鎌で腹を切ろうか、首を切ろうか、鎌の上につっころんで死んでしまおうか、臆病者が自殺の算段。そうこうしているうちに、妻が来て押し留め、最後は仲良く去っていきます。要するに、夫婦喧嘩は犬も食わない、というお話です。途中、自殺の方法があまりにあれこれありすぎて、ちょっとダレましたが、自殺の算段に観客が声をたてて笑ってしまう場面もありました。


西村高夫さんという能楽師は、能のお稽古をしていた友人のオススメの方。

ツレもお上手でしたが、やっぱり西村さんの深草少将。橋懸りのところで、かなりの時間、被衣(かつぎ)をかぶっていて、それを脱ぐと、痩男の面が現われる。そこがハッとゾッとする(これだって下手がやったら、はぁ、そうですか、でしょう?)。そのままで、「薄生いたり」だったかのときの手(右腕を挙げてゆっくりと前後に)がよい。能にしては大きな手の動きだと思うのですが、西村さんの周りが幽界になりました。それから舞台に来て、(たぶん、この能でたった一箇所だったはず)背後から小町に触れるところがあるのですが、恐かったです。とくに、手の仕草に能らしい情緒を表現できる方なんでしょうか。



銕仙会能楽研修所、とても気に入りました。収容人数が少ないんです(100席足らずか)。
満席でしたが、これぐらいの人数っていいですねぇ。

見終えて、「正面の3段目あたりに座ったら、寧々にはなれなくても、浅井長政の妻ぐらいの気分になれそう」と、Mに言ったら、にやりと笑って「知ってますよね? お市の方が絶世の美女だったって」。そういう意味では全くないんですが。

女主人の気分とまではいかないけれど、家臣の妻ぐらいの気分になれそうなほど客席が少なくて、江戸以前の(近世は女性の名が歴史の後ろに隠れてるから、戦国・安土桃山時代あたりがよいかと)能の鑑賞者気分になれる、という意味だったのですが、確かにあつかましいことでした。

素直に「大変、失礼しました!」と謝ったら、まだイヤミを言った。このぉ!

「いましたよね。秀吉の妹で家康のところに嫁がされた・・・(朝日、旭姫)」 はいはいはいはい、あなたの同居人は、だっさぁいオバサンであると言いたいわけですね。

「家康が下にも置かぬ待遇をした女性ね」ぐらい、イヤミったらしく言い返してやればよかった。

(ったく、イイ年して、なに書いてるんだか)



「鎌腹」と「通小町」を見て、中古や中世って女がまだまだ強かったんだよなぁ、としみじみ思ったことでござります。

う~む、こういう演目を、急遽、Mと見ることになったのも、なにかの因縁でござりましょうズリズリ(((((-_―>э――( ・_・)