トラックバックテーマ 第25回 夢★物語 にTB.
こんな夢を見た。
棒がついたキャンディをなめながら、私はにこにこ笑っている。
雲に乗ってやってきた仙人が、おいしいですか、と尋ねたので、ええ、おひとついかが、と私は答えた。
私の頭は真っ白だというのに、ポケットからキャンディをとりだすしぐさは童女のようだった。
仙人は雲からぴょんと飛び降りて、では、私もいただくとしますか、と答え、私が差し出したキャンディを受け取った。
これは何味ですか、と仙人が聞くので、おかしかった。
オレンジシトラス味です、と答えたら、あなたのは何味ですか、と聞いた。
私のはミックスベリーよ、と言うと、そのほうがおいしそうですね、と言うので、ヘンな仙人だと思った。
仙人と老婆の私は、広い川の岸辺に座って、棒のついたキャンディをなめた。
キャンディはいつまでもいつまでも元のままの大きさだった。
次の日も、その次の日も、二人はキャンディをなめていた。
ある日、思い出したように、仙人が言った。
ずいぶん月日が経ちましたね。
歯がないのに、言葉がはっきりしていた。
きっと仙人だからだわと思うと、なんだかおかしくなって、私はくすくす笑った。
なにかおかしいことを言いましたか。
仙人は、もっと偉そうにしゃべるんじゃなかったかしら。
ほんとうに仙人らしくない仙人だわと思うと、いっそうおかしくなって、私はまたくすくす笑った。
それから、二人は黙ってキャンディを何日もなめていたが、ある日、仙人は、ゆっくりと私のほうを向いて言った。
どこか行きたいところはありませんか。
仙人もデートに誘うんだわ。でも、若い女じゃなくて、相手は老婆なのね。
けらけら笑ったあと、真面目に考えた。
そうね、桃源郷がいいかしら、と、私が言うと、仙人は長くて白いあご髭を二度、三度、しごいてから言った。
わかっていなかったのですか。
ここが桃源郷なのですよ。
前にある広い川ばかり見ていた私が、後ろを振り返ると、見事な桃の花が咲いていた。
ああ、ほんとうに・・・・・。
ずっと、ここでいいわ。
はるか遠くまで霞む桃色の景色を、キャンデーをなめながら私はずっと見ていた。