トラックバックテーマ 第25回 夢★物語  にTB.

そそられるテーマのようだ。とくにここのところに。

<夏目漱石の『夢十夜』みたいに、「こんな夢を見た。」からトラックバックはじめてみましょう>



こんな夢を見た。

日がギラギラと照っていた。私は草原にいるらしかった。
瑠璃色のトカゲが、足もとをしゅるしゅると走り去った。


私は立ちすくんだ。
なにを怖がっているの、と隣で笑いを含んだ女の声がした。
だって、トカゲが・・・。怖いんだもの。
トカゲは噛まないわ。
でも、怖いんだもの。
どうして怖いの?
しばらく考えた。
いろんなことが浮かぶのに、どれも本当の理由ではないような気がした。


私は尋ねた。
あなたは、どうして怖くないの。
そんなの、きまってるじゃないの、と女は答えた。
私に害を及ぼさないんだもの。
それから、女は真顔で言うのだった。
あなたのほうが、ずっと怖いわ。
どうして。
考えてみて、と、女はまた笑って答えた。


私は急に悲しくなった。
ぼろぼろと涙がこぼれ始め、やがてさめざめと泣いた。
夢だなと思ったが、醒めなかった。


私が泣きやむと、女は草原に隠れたトカゲを、おいで、と呼んだ。

瑠璃色に光るトカゲが現れた。

女はかがみ、トカゲの頭を撫で、掌の上に乗せて立ち上がった。

季節はすっかり秋になっていた。立ち上がった女は娘になっていた。


さようなら、待っていてね、と、笑って娘は言った。
さようなら、待っているわ、と、笑って私は答えた。


百年待っても、この草原に娘が帰ってこないことを、私は知っていた。



ポチっと押していただけますか? ra