邦画好きには周知のバイブル、知らぬは、をんなばかりなり、の本ならん。
過日、ミイ子さん のblogにて、さりげなく記せられたる書なり。そのリンク辿りてアマゾンの古本で購入せしもの。1989年６月第一刷、定価560円、全522頁の文庫本なり。
第Ⅰ部 ベスト150作品を一挙封切！
第Ⅱ部 ジャンル別マイベストを選ぶ
第Ⅲ部 監督・女優・男優ベストテン
第Ⅰ部には
１位 七人の侍 黒澤明
２位 東京物語 小津安二郎
３位 生きる 黒澤明
４位 羅生門 黒澤明
５位 浮雲 成瀬巳喜男
以下、150位まで。
否、その後、たつた１頁に小さな活字にて、150位以下204位まで記したり。
をんなの開きたる本覗きて、をとこ不満げなり。
をとこの一番を問ひたれば、小津の戦後作「浮草」と答へけり。
をんな、「羅生門」か「麦秋」か「雨月物語」か、一番決められぬまま、頁繰りぬ。
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「映画好き370人が選んだベスト150」なれば、かの人、この人の「ベスト10」一覧もあり。
１位「七人の侍」の頁に小田島雄志氏。
「あ、お久しぶりでございます」と、茶屋のをんなのごとき挨拶、一覧表にむかひて言ふも愚かなり。
永六輔氏、ベスト10を挙げし後、＜もう一回見たい映画はこの中に無くて「狸御殿シリーズ」＞とあり。
さてもさても、36位「人間の条件」をベスト１に選びし橋本治氏のベスト２、「歌ふ狸御殿」なり。
ううむ。さうか、過日お勧めいただきし は、さういう映画であつたか、と、をんな、驚きぬ。
吉行淳之介は「エノケンのちゃっきり金太」を１位にあげをり。２位「天城越え」、３位「幕末太陽伝」４位「椿三十郎」とつづくを見て、逝きし人に再びまみえる心地す。
（「天城越え」の田中裕子は、よかったとですたい。）
井上ひさし、歯をむき、うんうんうなりて、独りでベスト100選出にトライする頁もあり。
第Ⅲ部には、監督、女優、男優に捧げられし、熱き文の数々。
内藤陳、白井佳夫、高橋治、中野翠、安西水丸･･････。
書棚に置き、ときに取りいだして味はひ、また資料としたき本なり。
とにもかくにも、その密度、その水準、その編集の熱意に、感服仕つて候。
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今、同じ様式のものを出版すれば、定価いかほどにならん。
同じ水準の仕事はできぬ、といふは、業界の衰退たり。
採算取れぬ、といふも、業界の衰退たり。
をんな、もつてしばし瞑目せり。