3人で隣町へ行って、まずは雑貨屋さんでその子に合う簡素だけど清潔な服や靴など買って身支度整えた後、その子にとってこれから大事になるであろう名前をつけた。
スクスク伸び伸び樹木のように真っ直ぐに育ってほしい、
そんな想いからリーフと私で、林(りん)という名を授けた。
楽団を訪れて、楽長に経緯を手短に話したら
りん君を快く受け入れてもらえることになった。
懐の広い穏やかな人だった。
りん君に、また何年かしたら必ず元気にしてるか会いに来るねと約束し、リーフは旅に持ってきてた大事なウクレレを手渡した。
「どんなに上手に弾けるようになっても、決して謙虚さを忘れてはいけないよ」そう言い残して。
それから20年後くらいに、ちょうど所用の帰り道でその町を通ることになり楽団の演奏を聴きに行ったら、あのまだあどけなくてボサボサ髪の眠そうな目をしてたりん君が、綺麗な金髪の髪をオイルできちんと整えスラッとした青年になって、ウクレレ以外も沢山の楽器を自分の体の一部のように生き生き弾きこなしていてキラキラしていた
素晴らしい演奏にも、りん君の成長や幸せに溢れた様子にも胸がいっぱいで、りん君が見えなくなってしまうから我慢しようとしても涙が溢れてどうしようもなくて、仕方なくかばんからハンカチを出そうと不意にリーフに目をやると、目が真っ赤で泣き笑いのようなクチャッとした見たこともない顔をしていた。