大好きな漫画である「きのう何食べた?」がドラマ化されるニュースを聞いて、大好きな漫画がドラマ化される喜びと、大好きな漫画がドラマ化されることで世界観をぶち壊されるのではないかという不安とのアンビバレントな気持ちに揺れている今日この頃であります。
自分が20代の頃はゲイの存在が今のように世間に知らしめられてはいなかったので、自分がどういう40代、50代を歩むのか想像もできなかったし、当時は30代くらいになると自殺するゲイの人が多いという話を聞いたりしていたので、漠然とした不安だけが若い頃の自分にはあった次第であります。
「ゲイなんて年齢を重ねたら幸せになれないんじゃないか」と思っていた20代の頃の自分は、それが故にかなり退廃的で刹那的な日々を過ごしていたものであります。
自分が「ゲイなんて年齢を重ねたら幸せになれないんじゃないか」と思っていた理由の一つとして、見本になるようなゲイの40代、50代が自分の周囲にはいなかったということも挙げられるわけです。
そもそも年上が好きな自分は「30代後半から40代前半」くらいの相手を探して夜な夜な新宿二丁目を彷徨っていたけれど(当時はインターネット
がそんなに普及していなかったので、新宿二丁目には出会いを求めて通っていた。)なかなかいない30代後半から40代前半のゲイたち。
「いったい30代後半から40代前半のゲイたちは何処へいってしまうの!?」と新宿二丁目で叫んだものであります。(実話)
さらに、新宿二丁目のゲイバーのカウンターの片隅で「若いからっていい気になってんじゃないわよっ!」みたいな感じで若さに対してやっかんでくるアラフォー、アラフィフのゲイを見て(そういう憧れられない年上だけは二丁目に残留してて目につく。)「自分も年をとったらこんな風になるしかないのかな。そうなる前に死んじゃいたいな。」と思っていた次第であります。
月日は流れ、そんな自分も今年で40歳になりました。30歳になるまでは前述のように退廃的で刹那的に生きてきたけれど、30代はすごく充実した10年間であったと思うし、自分の今後の人生に対して絶望を抱いたりはしていない今日この頃であります。
その理由の一つに「生き方を見つけた」というのがあるかと思います。20代の頃に「30歳過ぎると自殺する人が多くなってくる。若い頃は周囲からチヤホヤされるけど、若くなくなってくるとチヤホヤされなくなってくるからね。」というお兄様(オネェ様?)からの言葉と、結婚を強くすすめてくる親(親にはカミングアウトしていないので)の「自分のためだけに生きるのには限界がある。でも家族がいれば家族のために生きていける」という言葉を参考にして「自分のためだけに生きなければいいんだ。」「じゃあ誰かの役に立ちそうな仕事をすればいいのでは?」と考えて一念発起して33歳の時に看護師になるために大学に入りなおしたのであります。(33歳で看護学校に入って18歳の小娘たちと体育とかやったの。マジで拷問だった。)
看護師になった今では「別に看護師でなくても、仕事をしている多くの人が仕事を通して社会貢献しているので誰かのためになっている。」と思えるけれど、当時は「誰かの役に立っている」というのが実感しやすい職業として、なんとなく看護師だった次第であります。
実際に看護師として働いていると「誰かの役に立っている感」はすごく強いので、誰かを助けることで、自分がすごく精神的に助けられているわけです。ちなみにこれはヘルパーセラピー原則と呼ばれていて理論化されており、このヘルパーセラピー原則により、30代を退廃的や刹那的でなく、楽しく過ごせたのではないかと思っております。もはや患者さんたちに生かされた30代でありました。(患者さんも、まさか自分が一人のゲイの人生を救っているとは夢にも思っていないだろうが。)
それと、もう一つは前述の「きのう何食べた?」であります。この作品は本当にワタクシを救ってくれている今日この頃であります。まさに人生のバイブルであります。(ちなみに若い頃のバイブルは『SEX AND THE CITY』だったww)このバイブルがあったからこそ、迷うことのない40歳を迎えられたのではないかと思うわけです。
マツコデラックスなどテレビに出てくる年上のゲイの人はいるけれど、あの人たちはあくまでも「芸能人」であるため、生き方の参考にはならないわけです。(芸能人になりたいゲイの参考にはなるかもしれないけれど)そんなワタクシに「フツーのゲイの生活」としての見本となったのが「きのう何食べた?」であります。
漫画とはいえ、すごくリアルなゲイの日常が描かれているので、登場人物である「シロさんとケンジ」は「将来はこんな風に生きていけたらいいな。」と思える二人であります。第1巻冒頭での「東京に住んでいても新宿二丁目に行かないゲイというのは実はけっこういます。」というのが、もう既にリアル!!。
自分がゲイであることを言うとよく言われるのが「アタシ、一度、新宿二丁目に行ってみたかったんだよね。今度連れてってよ!」というものであり、ワタクシも新宿二丁目には通わないゲイであるため、これがかなり困るわけです。最初の頃はそれでも何とか、ノンケでも入れるお店を探してノンケの子を連れて行ったりしていたけれど、ぜんぜん楽しくなかったww
さらに、よしながふみ氏のすごいのは「フツーのゲイの日常」がリアルに描かれているだけでなく「フツーのゲイの感性」までもがリアルに描かれている点であります。「ゲイとして生きていると、こういうことがこれくらい面倒くさくて、こういうことで、この程度傷ついたりする。こういう事が、これくらい楽しい。」みたいな所がかなりリアルであります。
「よしながふみっていう人は本当はアラフィフのゲイなんじゃないか!?」と思い、ググったほどであります。(顔写真はなかったけれど、公の場に姿は出すらしいので、女性で間違いなさそうであります。)
それくらいリアルなので、お手本にしてもよい作品なわけです。(余談だが、お手本にしちゃだめなファンタジーな世界観ってあるよね。ワタクシ若い頃にユーミンの曲に憧れて『2人のストリート』という曲のようにドライブ中に喧嘩した時に助手席から降りたことあったりしたけれど、あっという間に別れたわ。ユーミンは実践してはだめ。最近の曲はよいけど。)
そんなわけで、ワタクシを救ったもう一つは「きのう何食べた?」でありました。
原作では主人公の二人はもう50歳になっているので、40歳のワタクシめは彼らのような「ゲイの50代」を目指していく所存であります。
因みに…。
「30代後半から40歳前半のゲイはどこに行くの!?」という20代の頃のワタクシの疑問についての答えは「充実している30代後半から40代前半のゲイはパートナーがいて、いちいち新宿二丁目に飲みに行かずパートナーと幸せな日々を送っている。」であり、まさに「きのう何食べた?」の二人のような生活を送っているため、めったに飲みには出ないわけですね。今、やっとあの魂の叫びへの回答を得た今日この頃であります。