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筆者の経験では、台湾で支店を設置しても、現地の会計処理や税務申告などの手続は本店サイト(日本側)がコントロールしているケースは少なくありません。この場合、台湾支店の関連登記事項に生じた変更(例えば、代表者、支店住所の異動など)につき、法に従って変更登記を申請するのが当たり前だと思われますが、「本店の」登記事項に生じた変更につき、「台湾側での」変更登記手続を失念したことによって、当局から指摘または処分された実例があります。
特に、会計士や税理士等のサポートにより台湾支店を設立した後、どの登記事項に変更が生じたら変更登記を申請しなければならないのかを当該専門家から教わっていないので、変更登記を適法に行っていない日系企業もあります。
高額な過料ではありませんが、スケジュールに与えてしまうリスク(後述)がありますので、予め留意する必要があります。
以下、登記事項の変更(異動)に関する申請の規制、及び台湾支店に関連する変更登記を行うべき事項を解説しましょう。
解説
1. 登記事項の変更に関する規制はどのようなものですか
台湾の会社登記規則(中国語:公司登記辦法)4条1項によると、会社(台湾の会社法に基づいて設立した会社もしくは支社)及び外国会社(外国法に基づいて設立した会社もしくは支社)の登記事項が変更した場合、原則として変更の事実が発生した後の15日以内に、主管機関に変更登記の申請を提出しなければなりません。
もし、15日以内に変更登記の申請を提出しなければ、その責任者(現地法人の董事長、台湾支店の支店長)がニュー台湾ドル(以下同様)1万元以上5万元以下の過料に処される可能性があります(会社法387条4項)。その後、当局の期限付き改善命令を受け、さらに期限内に変更登記を行わなければ、2万元以上10万元以下の過料に処されることがあります(会社法387条5項)。
2. 期限超過は厳しく取り締まられているでしょうか
以前の経験によると、主管機関が上述の処罰規定を厳格に執行しているというわけではなかったので、仮に前述の15日期限を超えても、自主的に変更登記を提出すれば、当局から処分されることにはならないというイメージでしたが、当局が処罰基準(※)を公布した2019年2月15日時点から、期限超過の理由をしっかり調べられることになっています。つまり、変更があったのに、15日の期限を超えて変更登記を行った場合、当局からなぜ期限を超えたのかを説明するよう命じられ、適切な理由がなければ、処罰されることになります。
最終的に処罰されたとしても、初犯は1万元以上5万元以下(4.5万円~22万円)のみなので、高額な過料とは言えませんが、その当局からの調査に対する対応により、ビジネスのスケジュールに影響を与える可能性があります。例えば、筆者が担当した台湾支店の閉鎖手続は、変更登記を行っていないことによって、約1ヵ月以上遅延することになりました。
したがって、台湾進出の皆様、まずは「会社登記事項に変更があった場合、変更後15日以内に変更登記を行わなければならない」ということを念頭においてください。
※ 登記期限超過の処罰基準(経済部2019年2月15日経商字第10802402390号通達)
(1) 期限超過は1ヵ月未満の場合、1万元
(2) 期限超過は1ヵ月以上3ヵ月未満の場合、2万元
(3) 期限超過は3ヵ月以上6ヵ月未満の場合、3万元
(4) 期限超過は6ヵ月以上1年未満の場合、4万元
(5) 期限超過は1年以上の場合、5万元
3. どうしても間に合わなければ、対応策あるでしょうか
会社変更登記に必要な書類には、本社または本社代表者の捺印が求められています。それ以外、登記事項によって、本社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や本社の取締役会決議などの議事録を提出する必要があります。
筆者の経験では、法務局による手続、取締役会議の日程や捺印の稟議などの原因により、「変更後15日以内に」書類を整えられないかもしれません。
「変更後15日以内に」という期限を守るために、変更事実があることを事前に把握できれば、前倒して関連書類を準備することがベストですが、もし15日以内に準備を完了するのが難しい場合には、先に未捺印の書類を提出することや、捺印済のコピーのみを提出することで期限内に変更登記を申請し、後で書類原本を補正の形で提出することも考えられます。
4. 台湾支店の場合、どの登記事項に変更があれば、変更登記手続を行うべきでしょうか
台湾支店を設立する場合、「台湾支店の登記表」と「外国会社(本社)の登記表」を取得することができます。基本的には、下記の事項に変更があれば、15日以内に変更登記を申請しなければなりません(2023年2月17日時点の規制)。
(1) 台湾での代表者(中華民国における代表者)の交代
(2) 台湾での代表者(中華民国における代表者)の氏名や住所の変更
(3) 台湾支店の資本額(中華民国における運営資金)の増加
(4) 台湾支店の資本額(中華民国における運営資金)の減少
(5) 台湾での登記上の事業の変更
(6) 本社会社所在地の変更
(7) 本社取締役の変更
(8) 本社社名(英訳や中国語訳を含む)の変更
(9) 本国での会社合併により本社社名が変更した場合
(10) 台湾での支店を増加する場合
(11) 台湾支店の経理人(支店長)の交代
(12) 台湾支店の経理人(支店長)の氏名や住所の変更
(13) 台湾支店名の変更
(14) 台湾支店所在地の変更
(15) 台湾支店の廃止(閉鎖)もしくは継続営業
(16) 営業停止
(17) 営業再開
(18) 設立後の開業日の後ろ倒し
実務上、よく見落とされたのは本社関連の(6)~(9)です。実際にそれによって当局より調べられたり、処罰されたケールもあります。
また、上記の手続にそれぞれの必要書類が異なり、場合によって前置きの許認可を取得する必要もあります。事案ごとに検討する必要があります。ご留意ください。