こんにちは。
いつもありがとうございます。
さて、最近事故の報告書が続きますがこちらをご覧ください。
この事故については、ブログで取り上げていませんでした。
様々な憶測を呼んだこの事故ですが、このような中間報告となって個人的にはとても残念に思います。
これをみる限り、「誤った方のエンジンを停止した結果、エンジンが両方止まった」ということでしょうか。
先日エア・インディアの件も取り上げましたが、「エンジンが両方停止した」という点では全く同じです。
チェジュ航空の場合、バードストライクによる片方エンジン故障→誤って正常なエンジンを切る→事故、という流れのようですが、みなさんどう思われますか?
「正常な方のエンジンを切るなんてあり得ない」と誰もが思うでしょう。しかし記事にもある通り、台湾で過去同じ事故がありました。
絶対にしてはならないミス、ってたくさんあると思います。パイロットとしては、飛行に重大な影響を与える操作は特にそうです。
今回のエンジンスタートレバーとか燃料コントロールスイッチの操作は、2人のパイロットがお互いに間違いがないかを確認してから動かさねばならないことになっています。
私がパイロットだからといって、このパイロットを擁護するわけではありませんが、突然バードストライクでエンジンが片方停止し、更にゴーアラウンドして緊急手順や管制交信などが一度に起こる状況を考えてみてください。
パイロットは高い給料貰ってるプロなんだから、そんなの冷静に対処できて当然でしょ?と思われる気持ちもわかります。
しかしどれだけ訓練を重ねても、上記のようなことが一度に起こると、いつもの冷静さを保つことは困難なことも理解できます。
普段考えられないミスも起こすでしょう。
しかしそんな中でも、決して起こしてはならないミスがあります。それが今回のスイッチ操作です。
だから、パイロット2人で確認しないと操作できない手順になっているのです。
人間は、頭で分かっていても「突発的なことが起こったときやワークロードが高い時、ミスをしやすい」傾向があります。
私自身こんな大きな事態に遭遇したことはないですが、似たような経験をしたので皆さんにもお話したいと思います。
その日は天候が非常に悪く、前方の悪天候をどのように回避しようかという話を副操縦士と話していました。すると、本来押さなければならないスイッチを押すことを忘れ、しばらく飛行してしまった、というものです。

このケースでは、副操縦士も機長も前方の積乱雲回避に集中してしまいました。つまり2人が同じものを見ていたがために、片方はスイッチを押すことを忘れ、他方はそれをモニターすることができませんでした。
2人が同じものをみる、というのは良い面もあるが、悪い面もあるという例です。
お互い本来の業務の上に、共通認識を持たせることがとても大切だと思います。
「こういう時は通常操作が疎かになりやすいんだよな」とお互い声に出せれば、そのクルーが陥るミスはグッと減らせることでしょう。
今回も私の例と似たようなケースなのではないかと個人的には思いますが、突発的な緊急事態であっても、「生死にかかわる判断」はやはり「立ち止まって考える」ことがどれだけ大切かということを学んだ事例でもあります。
「そんなことするわけないじゃないか」と思うのではなく、「人間の傾向を理解し、自分ならどう対策をするか」という視点で捉えるべき事案だと思います。
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