おはようございます。


毎日読んでくださって本当にありがとうございます。


日々お伝えしている日本航空と海上保安庁の衝突ですが、今日は事故が起こった羽田空港についてのお話です。


ご存じの通り、羽田空港は日本で一番忙しい空港です。


ここ数日、C滑走路(34Rー16L)が使えないためにかなりの便が欠航または大幅遅延しています。


長距離国際線の旅客機も一部は、燃料を満載した状態では羽田空港D滑走路(2500M)では短かすぎて離陸できないため、何と成田空港で一度着陸、給油してから(テクニカルランディング、略してテクランといいます)目的地に向かう、という方法を取っている便も。


羽田空港は滑走路が4本ある日本で唯一の民間空港ですが、全て同時に使える訳ではありません。なぜなら2本が横風滑走路で、重なる部分があったり空域の問題(騒音含む)だったりで、全てを同時運用はできません。

だからたった1本が使えないだけでもこれだけの混乱が生じるのです。





羽田空港は、歴史的にどんどん沖合展開してきましたがこれ以上の大幅拡張は難しいといわれています。


そもそも羽田は国内線専用(一部を除く)で、国際線は成田という役割分担がありましたね。

しかし「羽田空港の再国際化」という名目で国際線ターミナルが建設され国際線を多数誘致、それまでも混雑していた狭い羽田空港が更に過密になってしまいました。小型機による多頻度運航が主流となっている航空の現状も問題だと思いますが・・・


羽田空港のアクセスのよさは誰もが認めるところです。

ですが狭すぎます。そして拡張もできない・・・結果としてこの超過密な状況が生まれているのです。


航空会社はスポットの運用に四苦八苦、トーイングが多発して更に誘導路混雑・・・という現状です。


離着陸も大混雑なのはご存じの通りです。

一機でも多くの飛行機を離着陸させるため、飛行機同士の間隔はミニマムまで短縮されています。

離陸、着陸機は滑走路占有時間を最低限とするため気を使います。


土地の少ない日本に求めるのは酷ですが、航空先進国の空港と比べるとどうしても見劣りしてしまいます。

やはりこんな日本では羽田空港に加えて成田空港も必要です。

そして成田空港も同様に4000MのA滑走路が使えなくなると、今回の羽田と同様のことが起こり得ます。現在工事中のB滑走路伸延とC滑走路の増設は危機管理上、必要なことでしょう。国内、国際線の再配分も。。。


ということで、前置きが長くなりましたが羽田空港の混雑がパイロットにあたえる心理的負担はかなり大きい、ということです。


あとは雑草が延び放題で看板がみえない、とか言われていますがこれは実際に見ていないのでよくわかりません。


あと「ストップバーが使えない」というのが問題という方がいますが、ストップバーシステムというのは低視程下において滑走路手前で待機するように表示する赤い灯火のことなので、今回の事故においてはそもそも運用されていないので問題ないと思います。

しかしながら私たちパイロットに提供される航空情報(NOTAMといいます)の数があまりにも多く、使えない設備が長い間放置されている現状は確かにあります。

それだけ空港が忙しかったり予算の関係もあるのもしれませんが。。。

滑走路の中心線灯なども含まれていて、これは早く修理していただきたいとパイロット的には思います。


この事故を受け、斉藤国土交通大臣は「2度とこのような事故が発生しないよう、基本動作および手順の徹底を、航空会社および管制機関に指示した」といっています。


これだけの事故を受けて、何も感じない航空従事者はいません。

自分ならこんなときどうするのか、自分の会社の規程ではどうなっていたか?を個々必ず考えていると思います。

この国交大臣の指示を「現場をしらない人の発言だな」という人もいますが、さしあたってはこんな指示しかできなのが現状かと思います。


ミスするなというのは人間である限り不可能だと思っていますがそれをどうマネージメントしていくかが重要と思っています。


パイロットとしては、羽田空港の現状を再度見直して、ミスが発生する要素(スレット)を減らすように国土交通省が動いていただければ嬉しく思います。


今日は羽田空港の問題点について少しお話しました。



昨日、私もフライトでアナウンスをする際、日本航空の事故に触れさせていただきました。

これから航空機を利用される方々は特に今回の事故が頭をよぎることが多いと思います。

日本航空のクルーは素晴らしい動きをされ、乗客の命を助けました。

どの航空会社のクルーも、保安要員として厳しい訓練を積み、規程を日々レビューしています。どの飛行機の機長も、自分の後ろにいらっしゃるお客様やそのご家族、関係者を傷つけずに無事に飛行機を降りていただくべく、通常時も非常時も責任感をもって業務にあたっています。

飛行機は安全な乗り物です。

ですが今回の事故を通して、お客様のご理解、ご協力も大変重要であると再確認しました。


このブログを通して、お客様も乗務員を信頼していただき、安心して指示に従えばいいんだと思ってくだされば幸いです。


皆さん、今後とも飛行機を好きでいてください。常に皆さんの命をお預かりしているという責任感を持ったクルーばかりです。我々乗務員を信頼して、安心してこれからも飛行機を利用してください。


いつもありがとうございます。


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