おはようございます、昨日からの続きで低酸素症(ハイポキシア)について書きたいと思います。
私は登山が好きですが、登山でも2000m級の山に登ると人によっては低酸素症の症状が出たりします。めまいや頭痛などですが、これはまだまだ軽いものです。
普段よりも酸素が必要な登山ではこんな高度で症状が出ますが、基本じっとしている飛行機内では以下のようになります。
(今日は、イメージしやすいように高度の単位をM(メートル)で揃えます)
人の体は、高度によって低酸素症の症状に分類があります。
0〜3000M :無感域:ほぼ無症状だが夜間視力は低下
3000M〜4500M:代償域:呼吸、心拍数の増加
4500M〜6000M:障害域:視覚障害 知能活動の低下等の症状が現れる
6000M以上 :危険域:意識喪失、生命の危険が生ずる
生命の危険が生ずる 低酸素状態が始まってから意識喪失までを有効意識時間といいます。
個人差はありますが、
3000M〜4500M:1時間以内
5500M :30分
6000M :5〜10分
7500M :2〜3分
10500M :45秒
12000M :30秒
となっています。
12000mではなんと意識喪失まで30秒しかない、ということですね。
あまり考えたくないことなのですが、勉強のために。
例えば、巡航高度12000mで突然乗降用のドアが開いたとします(構造上ありえませんが)。
そうすると、減圧がおこります。
今まで客室内は高度2400m程の高山にいるほどの気圧で与圧されていたものが、突然12000mの外気と同じ気圧に急降下することになります。
これを「急減圧」といいます。
低酸素症の症状は、急減圧では通常の2〜3倍の早さで現れると言います。
体が突然すぎて対応できない、ということです。
上記の「有効意識時間」の欄を見てもらうと、30秒です。
その3倍の早さとすると・・・・10秒ですね。。
つまり、高高度で巡航中に急減圧が起こると、早くて10秒で意識を失うことがあるのです。
もしパイロットが前方で2人共意識を失っていたら。。。考えるだけで恐ろしい事態です。
我々は、この要な場合に備えて訓練を積んでいるのでご安心ください。
訓練と言っても、体を鍛える訓練ではなく、すみやかに緊急降下をする訓練です。
急減圧が発生すると、まずは私達は酸素マスクをつけます。
上記のように10秒で意識喪失の危機があるのです、一刻の猶予もありません。
コックピットのマスクは、昨日ご説明した「耐空性審査要領」により、「片手で5秒以内に装着できるものでなければならない」と規定されています。
ですので、5秒以内にマスクを装着することで、少なくともパイロットは意識喪失することなく緊急降下に移れるわけです。
そして大体安全高度である3000Mに降下して、乗客の皆さんにマスクを外すように指示を出します。3000Mは最初の表のように「無感域」ですね、問題ありません。
昨日お話したDCH8-Q400ですが、最大巡航高度25000feetでしたね。
ここで急減圧が発生して、乗客は酸素なしに大丈夫なのか?というお話でした。
まず上記の表から、25000feet=7500Mの有効意識時間は2〜3分です。
パイロットは酸素マスクを装着し、速やかに緊急降下をします。
大体1分に1000M以上の降下率が出るというDHC8-Q400パイロットの話から、2分後には高度5000Mには到達しているでしょう。すると、有効意識時間内に安全高度まで降下することができますね。
つまり、低酸素症で苦しむことなく安全高度まで降下可能なので、ご安心ください!
もっとも、そのような事態にならないように日々整備やパイロット、客室乗務員は努力しています。
みなさんも、飛行機に乗る際は安全のしおりをもう一度よく読んでいただいて、イメージトレーニングをしていただければありがたいです。
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