2日間ご無沙汰で申し訳ありませんでした。。。
先日温泉に行ったときに、たまたま話しかけてくださった方がパイロットに大変興味を持っていただき、聞いていただいた質問が、「離陸と着陸、どっちが難しい?」でした。
皆さんはどちらだと思われますか?
よくある質問ですが、大体のパイロットは「両方」と答えています。
私は、難しさの種類が違うと思っています。
離陸は、操作自体は簡単です。「ローテーション速度」が来たら、3°/secぐらいで機種を引っ張れば離陸させることができます。
多分少し説明すれば誰でも容易に離陸させることができると思います。
では何が難しいのか?
それは、「判断」が伴うからです。
V1というスピードがあります。「離陸決定速度」です。
V1までに何か起こればRTO,離陸中止をします。
V1以降に起こったトラブルはGo,離陸継続します。
書いてしまうと簡単なようですが、加速しながら風で流される中センターラインを維持しながら、速度ごとに離陸のGo,No-goを決めるのはなかなか大変です。
現在ある飛行機では、着陸はオートで可能ですが離陸が自動の飛行機はありません。エアバスが開発中と聞いたことはありますが。
操作が簡単な離陸こそオートパイロットができても良さそうですが、上記の「速度による判断」がまだ機械ではできないため、離陸は常にパイロットが行うのです。
たとえば、離陸滑走中にタイヤが破裂したら?とか、タヌキが横切ったら?とか、エンジンが停まったら?とか、様々な要因が考えられます。
RTOポリシーというのが各社決められています。
ボーイングは80kt,エアバスは100kt以上を高速領域と定めていて、高速領域ではV1以前でもEngine FailやFire,WindShearなど離陸の継続に支障となる大きな事象を除いてGoしたほうが安全性は高い、という「Go-Minded」を推奨しています。
つまり、V1=130ktで今110ktの場合、鳥が当たったりしても離陸継続をしたほうが安全性が高い、ということです。
そこでRTOするかどうかは、その日の滑走路状態や滑走路長にもよりますし、その他天候にも左右されるので最終的にはすべての条件を総合的に考えた後の「機長判断」となります。
迷っていたらRTOはできません。加速しながらその一瞬でジャッジするということはなかなか難しいものです。
パイロットは常に最悪の状況を考えている、その典型がこの「RTO」に現れているといっていいかと思います。
ということで、パイロットは、離陸のときにシビアな判断をする必要があるので、離陸は難しいということが分かっていただければ嬉しいです!
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