假屋崎省吾さんの華道家25周年記念展が、10月8日から、飯塚の伊藤伝右衛門邸でございました。

合わせて読んでいたのが、林真理子さんのこの一冊。


伝右衛門の妻「柳原白蓮」の物語です。


年下の書生と白蓮が駆け落ちしてからの話に重点を置いているのかなぁと思いきや、白蓮が嫁いでからの葛藤にウェイトを置いていらっしゃった。



炭坑で財を成した、伊藤家2代目の伝右衛門。

妻に先立たれた彼は、親子ほど離れた華族の娘を迎える。

財は有るが無学だった伝右衛門は、華族というステイタスが欲しくまた、白蓮の家族は財産が欲しかった。


女性好きな伝右衛門は、睾丸手術をしてまで、沢山の女性と戯れた。

妊る夢も絶たれた白蓮の心は益々、夫から離れていく。



やがて彼女は、歌人としての生き方を見出す。

美貌も教養もある彼女は「筑紫の女王」と呼ばれ、華やかな生活を送るようになった。

菊池寛の「真珠夫人」のモデルにもなったそうだ。

これって、昼のメロドラマであったやつだろうか?


そして、運命の男性、龍介と出逢う。

年下の学生だったが結局、駆け落ちをした。

当時は大スキャンダルで、御法度中の御法度だった。


しかし、伝右衛門には男気が有った。

彼の面子を丸潰れにした白蓮を「こらしめてやりましょうぜぇ!旦那!」という筑豊の男達に、

「一度は俺が惚れた女なのだから何もするな」と言い返したのだ。



白蓮と龍介は出逢ってから、700通もの文通をしている。



晴れて、白蓮と龍介は正式な夫婦になった。



私は最後のページを、通勤中のバスで読んだ。

涙が溢れた、、、女性運転士さんが、気にしてチラチラ見ていらっしゃった。


心臓の病で床についた82歳の白蓮を、龍介は自らの手で看病した。

愛おしげに話しかけ、自室に寝かせて誰にも触れさせなかった。

下の世話も、75歳の龍介が行った。

妻が逝った時、新聞のインタビューで龍介は「うちに来てからは幸せな人生でした」ときっぱりと言った。


白蓮と龍介は、700通の手紙を全て大事にとっておいた。





愛ですね。

また泣けました。




白蓮れんれん

著者:林真理子