<つづき>

 

鉄工所を手伝い始めてから

早一ヶ月が経過して8月20日になりました。

 

もちろん、その間、もれは学校の用事や

お盆などで数日は休んでいますし

日曜日は鉄工所自体がお休みです。

 

それにしても一ヶ月間

毎日ドリルと梱包だけを延々と繰り返す・・・

当時のもれは我慢強かったのですねぇw

 

そしてこの日は給料日なのです。

もれにとっては鉄工所のアルバイト最終日でもありました。

 

ひとりずつ明細と封筒が渡されました。

 

もれの手取りは

時給400円でおよそ27,000円でした!

当時の高校生にとっては大金です (¥v¥)。

 

時給400円って安いだろ!?と思うでしょうが

もう30年も前の相場です。

当時、もれ地域の高校生のバイト賃金というと

時給500円前後が良いところでした。

※もれ高校は禁止でしたけどw

 

相場に比べると100円も安いことになりますが

単純作業だったので特に気にしていませんでした。

 

鉄工所のおじさんが

「ちゃんと明細と金額が合ってるか数えてくれよ。」

というので、札と硬貨を数えていると

首筋辺りに人の気配を感じて

ハッと振り返りました。

※当時は給料は手渡しが主流でした。

 

そこには親戚のおばあさんが居ました。

 

そして今にも目玉がこぼれ落ちそうなほど

目をかっ広げて、もれの明細を見ています。

 

「もれ君!あんたの時給400円なの!?」

と大声を挙げました。

 

もれ「ナイショでお手伝いですから。」と

少ない理由を告げると

おばあさんは何も言わずに

鉄工所のおじさんの所へ歩いて行って

大きな声で怒鳴りつけました。

 

「あんた!もれ君の時給が400円ってどういうこと!?」

 

『いやぁ・・・安いことを直談判してくれるのは

 うれしいけど・・・

 元々そういう約束だったからなぁ・・・。』

とちょっと居づらい雰囲気でしたが

次のおばあさんの一言に驚愕しました。

 

「私より時給が100円も高いってどういうことなんよ!?」

 

『えぇぇぇぇっ!?おばあさん・・・時給300円かよ!?@@;』

 

鉄工所のおじさんもタジタジですが

「だって、台車で物運ぶだけでしょ?

 もれ君は機械使ってたでしょ?」

と逃げ腰になりながら言いました。

 

おばあさん「私だって教わればできる!」と

引き下がりません。

 

仕方なく、全員でドリルの前に移動して

おばあさんにドリルの使い方を教えました。

 

もれ達も遠巻きに見ていると

一本目のサッシを持ち上げた途端に

ガラガラガッシャ~ンとサッシの山を崩しました。

 

おじさん「ほら。やっぱりおばあさんには無理でしょ?」

 

おばあさん「手が滑っただけや!」

 

おじさん「でも・・・ほら。」とサッシの傷を指差しました。

 

「この傷は消えない・・・。」

 

もれも横から覗き込むと

ザックリとアルミが削れてしまっています。

 

しかも積んであった翌朝分の10本のほとんどが

消えない傷にやられているだけでなく

角が削れてしまっているものもありました。

 

おばあさんは渋々諦めて

「時給300円で良いわ・・・。」としょんぼりしました。

 

その姿に鉄工所のおじさんも

「わかった。長く勤めてもらってるから

 来月から400円にしよう!」と値上げ宣言です。

 

おばあさんは大喜びです。

 

ところが他のおじさん達から

「わしらは?」という声が挙がると

鉄工所のおじさんは聞こえないフリで

傷ついたサッシを拾っています。

 

おじさん達がもう一度「わしらの・・・」

と言いかけた瞬間、おばあさんが

「あんたらは据え置きでええやろ!?」と

鬼の形相ですw

 

おじさん達は「はい」と肩を落としました。

 

こうしてもれの初バイトは終わりました。

 

最近、その鉄工所が潰れたので

思わず記事にしてしまいました。

 

良い経験だったと思います。

 

ただ、例のオッサンがもれの事を

トモダチと思ったのか

最近までもれをジ~ッと見ながら

スクーターで通過していくのが

やたらと気になりましたけどね^^;

 

<おわり>