<つづき>

 

女性スタッフと一緒に多くの犬が居るケージに戻ると

犬達が一斉にキャンキャンと

甘える声を出して鳴きだしました。

 

この女性スタッフが

一番世話をしてくれる人物なのでしょう。

 

この時ばかりは

大人しいダックスもキャンキャンと

甘えていました。

 

ポメラニアンの親犬を見て

施設を後にしました。

 

次は母の調査で

この近くに居るというポメラニアンの仔犬が

生まれる予定の場所へと向かいました。

 

そこは小さなお店で

店内に数人が座れる程度の

飲食スペースがありました。

 

母が「この裏手に居るはず」というので

裏手にまわりましたが犬は居ません。

 

『う~む・・・嫌な予感だなぁ。』

 

母の情報収集ってかなりざっくりなので

行ってみたら全然違う

ってことが多いのですが

今回もそのパターンの予感です。

 

再びお店に戻ると

おばちゃんが戻ってきて

別の客と話していました。

 

話し終わるのを待って母が

「ここに可愛らしい犬が居るって聞いたんですけど」

と話しかけました。

 

おばちゃんは訝しげな顔をして

まるの事やろか?」と答えました。

 

『まる?まるって名前はポメラニアンには

 あまり似合わない気もするけど

 人それぞれだし、仔犬の頃から

 丸々と太っていたのかもしれない。』

 

などと思いながら会話を聞いていました。

 

母が「今度、仔犬が生まれるって聞いたんですけど。」

と言うとおばちゃんが

「ん?生まれるよ?マルチーズでしょ?」

と言いました。

 

『マルチーズ・・・!?

 だからまるなのか!』

 

すると母は「そうそう。マルチーズ!」と

嬉しそうに答えました。

 

『いや・・・マルチーズと違うし・・・。』

と思って訂正しようと近づくと

おばちゃんが「今はここには居らんよ。」

と歓迎されてない感じの

よそよそしい態度に一変しました。

 

『ははぁ。これは仔犬狙いってバレて

 譲りたくないんだな・・・。』

と思いました。

 

そもそもポメラニアンの仔犬が欲しいのであって

マルチーズは眼中に無いのですが

母は一生懸命、喰らいつこうとしています。

 

『どうやって止めたものか・・・。』

 

<つづく>