<前回のつづき>
海中は真水よりも浮力があるはずですが
あがいても既に力の入らない腕では
もれの体と宮本氏の体を浮かべることは
不可能な状態でした。
もれだけでも浮上できたかどうか
微妙なところです。
海中で目を開けると目が痛いですよね?
でもそれどころじゃない場合
なりふり構わず目を開けてしまうものなんですね。
透明度は低かったですが
さっきまで足が付いていた海底の砂が見えました。
砂から海草が生えているのも見えました。
よく憶えてるな、と言われるかもしれませんが
もしかしたら、それが人生最後の景色だったかも
しれないと思うと脳裏に焼き付いています。
大量に飲んでしまった海水の味は
憶えていません。
味うんぬんよりも
呼吸のできない苦しみが上回ったのでしょうか?
スポーツ新聞の一面が脳裏に浮かんだ時
もれはここで一度、死を覚悟したのでしょうか?
それとも朦朧として
覚悟などしていなかったのでしょうか?
今回の東北、関東大震災の大津波に飲まれた
被災者のかたも、意識は数秒だったのでしょうか・・・。
既にもれは
宮本氏に押さえつけられているという
感覚すらなくなっていました。
<つづく>