<前回の続き>
三年坂を下った辺りにある喫茶店で一休みすることになったもれとノ氏。一番奥の席に案内された。何とも古風な感じの喫茶店だ。よくよく見てみると天井で換気用のでっかいプロペラが回っているし、煉瓦っぽい造りだ。明治時代のイメージを復刻した店のようだ。
飲み物とケーキを注文して20分ほど一休み。もれは煙草に火をつけて顔を上げた。ノ氏の後ろには老夫婦が座っていて、その向こう側の席に女の人が一人で座っている。
『一人旅か?』
と、女の人と目が合ってしまった。決して好みのタイプではない。ついっと目をそらして煙草を吸う。でも視線を感じる。ノ氏に対して「絶対もれのいうことに反応せずに聞いてくれ。」
ノ氏はよく分からなそうな顔をしている。
もれ「ノ氏の2つ後ろの席に女が一人でいるんだけどさ、こっちを凝視してんだよ・・・。トイレに行くときにでも見てくれ。」
ノ氏「じゃあトイレ行ってくる。」
ノ氏が立ちあがった。
まだ見ている。
ノ氏もさすがにもれの従兄弟だけあって、何気ない素振りで歩きながら、チラッと見ていた。
その間も女はもれを凝視している。
『待て待て・・・。もれが変なのか?いやいや、そんなことはない。さっきトイレで鏡を見たが、妖気アンテナも立ってないし(80年代ギャグ)・・・。』
とりあえず無視することにした。
と、ノ氏とすれ違いに男がトイレから出てきて、そのまま女の正面、つまりもれに対して背中を向けて座った。
『ああ、カップルだったのか。これで凝視されずに・・・まだ見てる。そろそろ男も気づいてくれよ・・・。』
ノ氏が戻ってきた。
もれ「そろそろ出るか。」
そしてもれは女の視線から逃げるように店を出た。
あとは二年坂を越えれば高台寺の前に出れる。
ノ氏「高台寺っていうのは見なくて良いの?」
もれ「高台寺は豊臣秀吉の正室のねねを奉ってるんだが、去年、ライトアップを見に来たらUFOみたいなライトアップだったから、評価を下げた。いかに桜が綺麗でも、あのセンスはいただけない。」
ノ氏もそれには納得したようでそのまま円山公園へ向かった。
もうじきに円山公園の敷地という辺りで舞妓さんが歩いてきた。
ノ氏「あ!舞妓さんがおるで!」
もれ「あれは偽者だな。観光客が変身スタジオで舞妓さんの衣装を着てるだけ。ああ、ノ氏も変身スタジオで全裸になれば?」
と、くだらない会話が再発したとき、目の前の角から人力車が走ってきた。
これにも舞妓さんに扮した・・・60歳前後のオバハンが二人乗っていた・・・。
ノ氏「が、頑張ってますなァ・・・。」
もれ「見るな。京都の恥部だ・・・。」
真白な白粉でも隠し切れ無い年齢・・・。
罰ゲームなのだろうか・・・?
クラクラしながら円山公園に辿りついた。坂本竜馬と中岡慎太郎の銅像があったので記念撮影。予想よりも二周りくらい大きい。円山公園は京都府民の花見スポットだ。既に大学生が盛り上がっていたり、場所取りのブルーシートがいたるところにある。でも桜は既にピークを越していた。特に期待していた名物の枝垂桜(しだれざくら)は4割程度しか花が残ってなかった。
もれ「これは残念だ・・・。」
その足で隣接している八坂神社を通り抜けて四条河原町まで歩いた。河原町はさすがに繁華街だけあって物凄い渋滞。ノ氏はいままでの京都のイメージが変わってしまったかもしれない。
四条河原町から電車に乗ろうと思ったが、ここまでくれば四条烏丸まで歩いても変わらないので、人のやや少ない地下道を歩いた。
京都駅に着いた。地下街でお土産を探す。25分後に集合ということで各々が土産物屋を巡ることにした。解散するや否や、ノ氏は本屋に駆け込んでいた。
『そういえばノ氏は雑誌を買うというのが目的だったなァ・・・。』
もれは黒胡麻おたべと山椒ちりめんを購入した。ノ氏も雑誌と土産を購入したようだ。
帰りの新幹線でもれは試しにノ氏に今回の日帰り旅行の評価を聞いてみた。
ノ氏「95点」
もれ「高!?」
ノ氏「え?もれ兄ちゃんは?」
もれ「65点」
ノ氏「低!」
折角の桜が雨に降られたこと、もちろん春雨の桜と言うものも良いには良いが、どうせなら晴れの中、歩きたかったというのが最大の原因だ。二番目の要因は喫茶店の女。なぜもれを凝視したのか。不可解だ。
近いうちにHPに写真も公開します。
ノ氏も満足したようなので、全体としては良かったのかもしれない。
滅多に無いであろう無職期間。謳歌しております。