<前回の続き>


この時期京都に来たことの無かったもれにとって、これまでは「ただの並木だったもの」や「ただの木だったもの」が桜だったり、梅だったりして非常に目を楽しませてくれる。もちろん、葉桜であっても手入れされて情緒深いものなのだが、この時期は格別だ。


南禅寺へ向かって歩いていると、地下鉄東西線蹴上駅の近くに琵琶湖から水を引いた琵琶湖疎水というものがある。煉瓦造りの建物なのだが、その横に工事用の廃線となった線路がある。


この線路沿いが全て桜並木だった。ただの並木であったものが、桜並木で満開なのだ。しかも廃線の線路は開放されていて、線路上を歩くことができる。もれたちは線路と並ぶ幹線道路の反対側を歩いていたので、道を渡れず、線路を歩くことはできなかったが、眺めて歩くだけでも素晴らしい。


線路沿いに歩くと程なく南禅寺前交差点に到着する。南禅寺近辺は湯豆腐で有名だ。

南禅寺(なんぜんじ):京都五山の最高位におかれる格式のある禅寺である。石川五右衛門が「絶景かな」と絶賛した三門(さんもん)からの眺めは南禅寺の松林越しに京都を見渡せる絶景ポイントだ。


今回は急遽コースに組み入れたので他の仏閣は見ずに三門に登るだけにした。三門は荘厳な門で大きさとしては知恩院の門より小さいが先の説明の通り、南禅寺の松林越しに京都を眺められるのがポイントだ。門に向かって歩くと、門の左右から桜と松が門を鮮やかに飾っている。


階段というより梯子に近い急勾配を手すり沿いの縄を持って登る。高さは15mほどだろうか?


階段を登り切ると・・・・・・・外国人がいた。まず景色が飛び込んでくると思っていたもれは意表をつかれたが、振り向いてノ氏を見る。ノ氏は高所が苦手らしく、縄にしっかりとしがみついて登ってきた。

白と緑のコントラストの向こうに京都市街地が見える。非常に綺麗だ。


地上から修学旅行生がこちらを見上げている。横に教師らしき中老のおじさんがいる。

もれ「上から見ると・・・はげてるのが丸わかりだな・・・。」

ノ氏「先生かな?」

もれ「あれは間違い無くセクハラ教師だな。」

ノ氏「根拠は?」

もれ「見た目」


くだらない話をしながら5分ほど眺めてから門上を一周する。

と、気づいた。

地上から桜越しに2,30人のカメラマン(といっても素人だろうが)が、門を撮影していた。

『これでは無闇に手すりから顔を出すわけには行かんなァ。』


裏へ回る。

そこは地上の苔と桜と松が見事な庭を造形していた。

ノ氏もさすがに「これはすごい・・・。」と絶句していた。

そこへ修学旅行生が登ってきた。

おっさん「じゃあそこに並んで。」

生徒は一列に並ぶ。

おっさん「そうじゃなくて、手すりの上に!」

生徒「えぇっ。それはできねぇべ!おっそろしい。」

『!。東北訛。そうか東北からも修学旅行は京都か。さすがはみやこ!』

生徒「運転手さんはいつもここ登んのけ?」

『!セクハラ教師ではなくタクシー運ちゃんだったのか・・・。』

運ちゃん「いやぁ。いつもは車で待ってんだけど、お嬢ちゃんたち可愛らしいから。」

『なんだセクハラ運ちゃんか。』



そして降り口へ向かって歩き始めたとき、後ろから女の人が声をかけてきた。

女「すみません。シャッター押してもらえませんか?」

もれ『よしっ!撮ったるわい!!』

と勢い良く振り向いたらもれよりも年上の女性二人だった。

『まあ、もれの巡り合わせなんてこんなもんだろう・・・。』


もれ「どういう風に撮りましょうか?」

女性「あの桜の木を背景に・・・。」

『あの桜って真下の!?』

もれの身長ではその角度を撮るのは難しい。

ノ氏は身長が180弱あるのでノ氏にカメラを渡した。


ノ氏はカメラを構えた。

ノ氏「じゃあ撮ります。」

女性「は~い。」

ノ氏「・・・・。何て言いましょうか・・・?

女性「・・・?」

もれ「はい撮ります!で撮れば良いんだよ!」

ノ氏「じゃあ、撮ります。」

女性にカメラを手渡す。女性は写りを確認する。

女性「あれ?撮れてませんね。」


ノ氏はメカオンチだった。


女性「このボタンをグッと押してください。」

ノ氏は再度シャッターを切った。

言われた通り、グッ。


物凄くブレた。

『本当にメカオンチっぷりをアピールしているな。』


そして南禅寺を後にした。

霧雨程度に雨が降っていたのでタクシーに乗った。

もれ「コースを変更して清水まで行こう。円山公園は花見シーズンだろうから、多少遅くなっても大丈夫だけど、清水は17時までだから。」


もれ「運ちゃん。今日は清水道は混んでますかねぇ。」

運ちゃん「今日は清水近くに行ってないけど、雨が降ったし、きっと大丈夫だよ。」


平安神宮の大鳥居の前で神宮道を通って青蓮院、知恩院の前を抜ける。

運ちゃん「知恩院の門は日本一の大きさなんだよ。寄らなくて良いの?」

もれ「ええ、ここはいつも前から見るだけですね。」

運ちゃんはいろいろな豆知識を教えてくれたが、もれは全て知っていたので軽く受け答えした。

知恩院を過ぎた辺りで陽がさし始めた。

もれ「もう少し早く晴れてれば歩いたのになぁ。」

運ちゃん「今からでも遅くないよ。歩くかい?」

もれ「ノ氏どうする?」

ノ氏「・・・どっちでも。」

もれ「運ちゃん。このまま行きましょう。」


運ちゃんが「降りますか?」と聞いてくれるのは京都ならではだろう。


道は運ちゃんの予想通りすこぶる快調で清水門前町まで一気に来れた。

さあノ氏の期待の清水寺だ。

<つづく>