それでいて青



ある朝


陽のあたる部屋の 慣れない明るさに戸惑い

真っ白な天井に こんなにも低い空でさえ

手が届かないのだなと  

ゆめかうつつか 現か夢かの狭間で


薄桃色の花瓶に 起こる光の干渉が

あまりにも優しく 力強い 虹色を作り

それでいて青



ある夕刻


茜称えし 晩秋に

帰らぬ雲を 送りながら

さて、何処へ帰ればよいのかと

ポケットの中の よく知った銀細工の感触


次第に狭くなる歩幅の その一歩一歩が

重なり合ったイチョウの 黄を一層色濃くしていくのだが

それでいて青



真夜中


全てを遮断した

聞こえるのは秒針と冷蔵庫の稼働音

あるのは闇

黒 黒 黒

しかし

それでいて青