シナリオ
大地をえぐる鋭い爪と
血肉に飢えた疎らな牙と
砂埃と雨で幾度と洗われた毛皮を纏い
我が為に拓かれた 満ち月照らす草原を
誰よりも気高く 何よりも美しく 闊歩する
あらゆる脚本が 僕を殺そうと躍起になるが
獣の僕は人様の思惑など理解しないし
そういう都合は無視されるべきなのだ
微かな明かりでも黄金色に輝く
斑点模様の毛を夜風になびかせ
僕は今
まさしく全身からなる表現者で 限りなく自由だ
陽の当らない沼地の 腐ったボートに生えたカビの胞子が
風に運ばれてきたとしても 微塵も干渉されない
まさしくそれが自由であり 孤高であり 孤独な僕の描く世界
やがてそこにある全てを食いつくし
飢餓に倒れるか 老いに倒れる時
それをもって終わりとする