変形性股関節症で人工股関節全置換術を受けようとお考えの方へ

どんな術式が良いのかとお悩みの方へ

アメンバー申請して過去記事を読みたいと思われた方へ

2021.3の自分の経験から是非お伝えしたいことがあります。

ここに書く事は真実で、裏付けもあります。

ですから、自分がTHAで脚を延ばされしまった恨みによる

執刀医への誹謗中傷ではありません。

自分の様な被害を受けて苦しむ人が、これから出て欲しくないために情報を公開します。

私は、間違った関節包(靭帯)温存術のおかげで

仕事の休みが長引き、

引いては退職に追い込まれ、

再手術を受けるためにたくさんの病院を行脚し

経済的にも身体的にも精神的にも

多大な苦痛を味わいました。

それは今も続いています。

よろしければ参考にしてください。

 

 

2020年の4月頃、左股関節にピリッとした痛みを感じた。

自宅近くの病院で、変形性股関節症との診断を受け、手術を勧められた。

登山とジャズダンスが趣味なので

手術してもそれができる、と言う医者を探した。

日本で一番有名な私立大学病院に、

『自分の関節包温存術なら、登山やダンス等の高い活動もできる。

感染は一度も起こした事がない。

出血もほとんどないから貯血もしない。

バレエの先生の手術も最近行った。』と言う医師がいた。

自宅や職場からもそれほど遠くなく、退院も急がされることもない、手術の時期も遠い先ではなく設定できる、そんな好条件もあってここでの手術を決めた。

この医師は前側方侵入、MISの関節包温存術を行う医師だった。

 

術前最後の診察で執刀医は、CTを見て

「あなたは左脚が5mm短くなってるから、それも揃えてあげますよ。」と言った。

私は罹患期間も1年足らずと短かかったし、術前、脚長差は全く感じていなかった。

また、ネットで読んだ他の何人かの医師の記事やブロ友先輩の記事からも

『人工股関節全置換術で脚長を揃えるのは今や当たり前』のことに

なっているのかと思っていたから、

この執刀医も同じく、脚長を揃えてくれるんだと思っていた。

 

ところが

術後2日目、回診に来た執刀医が、カーテンの隙間から言った。

「あなたの関節包ボロボロだった。

すごく関節がゆるかったから、

左脚の長さを1.5cmぐらい延ばしました。

この長さは時間が経っても変わりません。」

その後リハビリが始まったが、

インソールなしに左骨盤を上げて歩けと言われた。

それでは右脚が爪先立ちになってしまい、

右脚ふくらはぎの筋トレになるばかりで、とても無理だった。

自分で反対側の短いほうの脚の下に本を敷いて測ると、

2cm近くも脚長差があった。

後に他院で正確に計測し、

脚長差は17.4mm=1.74cmと判明。

 

PTに、これでは歩けない言っても、

先生の指示がないのでと、らちが開かず、

看護士さんから執刀医に伝えてもらって

そこでようやく短い方の足へ補高(インソールを入れる)

をしてもいい指示が出た。

院内出入りの装具屋さんに執刀医が出した指示は

1.5cmの補高だった。

その後は右足に1.5cmの補高をして歩行練習していたが

執刀医からもPTからも看護士長からも、

『これに慣れてはいけない、

補高を徐々に減らしていかなくてはならない。』

と、プレッシャーを受け続けた。

その後1分とない回診で質問しても

「脚長は説明したでしょ!手短にしてください。」

とキレられたので、家族同席でこの手術について執刀医から説明を受けた。

それによると

 

①ご本人(私)がダンスや登山など高い活動を望んでいたので、脱臼しない様に安定性を重視した。

②関節包は人によって硬さ(緩さ)が異なる。今回は開けてみて、

健側の二倍以上関節包が延びる感じが見られた。

こういう状態を自分は「関節包靱帯機能不全」と定義している。

その場合は通常よりも脚長を延ばして

人工股関節が脱臼しないように手術している。

③術前のCTからナビゲーションシステムで計画したものは、3mm延長の予定だったが、

安定性を見ながら設置した結果、

CT上7mm延ばした。

(後に小数点以下を医師に尋ねて7.6mmと白状した。)

レントゲン上では9.6mm延びている。

これはこの手術の許容範囲である脚長差1cmより少ないので問題ない。

(しかし、前述の様に、彼は少なくとも1.5cmは延ばしたことを知っていた。だから装具屋さんに1.5cmの補高をするようにと指示を出していた。

その後も、絶対に脚長を測ろうとしなかった。

本当の脚長差が判明すると、1cm以内の基準を超えていることが判明するのを避けるためだろう。)

④この術式では、

開けてみないとわからない関節包靱帯の硬さや緩さによって、

術前計画より脚長が延びたり、

逆に硬くて計画通り延ばせないこともある。

(その説明が事前に足りなかったのではないですか?←夫の質問。)

それはお詫びしたいと思います。

(この時は確かに事前のインフォームドコンセントがなかったことを認めたが、後にはそれを否定するようになった。)

 

一度目の執刀医との面談の経過は概ね以上です。

 

脚長を延ばした一番の理由が

①の本人(私)が高い活動を望んだからといわれ、

言わば「自業自得」との説明で

私は随分落ち込みました。

しかし、

『もし活動性の高いことを望まず、

普通の日常生活ができていればいいと言っていたら、

脚長はどれくらいの延びですんだのか?』

と言う疑問が湧き、二度目の面談で執刀医に尋ねたところ

「普通の活動で良い場合でも、

同じ位、脚長を延ばしていたと思います、今は。」

と前言を翻されました。

 

またこの医師は、MISをうたっており、

傷口は8cm程しかありません。

その小さい入り口からさらに関節包をコの字型に切って侵入します。

後にそこも閉じると言う。

だから、

開口部が小さいため、カップ(シェル)は小さいサイズを選択されてしまいます。

カップが小さいと骨頭も小さいサイズ(私の場合28mm)になるため、

エビデンスのある32mm以上の大きい骨頭で

脱臼のリスクを減らす、という選択肢がなく

関節の安定性のためには、

脚長を延ばすしかないのです。

 

関節包を温存しない手術(普通切除する)では、

関節包の硬さや緩さは関係ないので、術前計画通りに

骨格上の最適の位置に人工股関節を設置することができます。

最近はナビゲーションシステムに加えロボットを使って

計画から外れることができない様に制御する病院も増えています。

 

ところが、この執刀医のように

何が何でも関節包を温存し、

しかも関節包靭帯が脱臼防止として働くようにとこだわる場合

靭帯がよく延びる人は、緊張をかけるために計画以上に脚長を延ばすのです。

靭帯が硬い人の場合、普通なら硬ければ切除してしまえばいいものを

この医師の場合だと、硬い関節包を残すがために、計画より短い位置に人工股関節を設置することになるのです。

関節包温存術を行っているという医師でも、

関節包靭帯に問題があって計画通りに人工股関節を設置できない場合には、

温存せずに切除するという医師もいます。理にかなった方策です。

 

この執刀医は、この11月から有名私立大学病院を辞めて

関西や中部地方に拠点を移した様です。

病院の股関節センターホームページにも関節包温存術後の脱臼率の低さを宣伝しています。

しかし、関節包温存術と同時に脚長を延ばし、

筋緊張をかけていることには全く触れていません。

私の様に術前は脚が揃っていたものを

1.5cm以上も引っ張っていれば、

そりゃ脱臼もしないだろう、と思います。

 

 

バレエ系のダンスをする方に付け足しです。

私はダンスをすると言ったのに

通常15~20度の前捻角を44度に設置されてしまいました。

(他院でMRIを撮り、設置角度を正確に測ってもらいました。)

前捻角44度ですと「過度前捻」になり、脚は外旋しにくく、

普通に足を出すと内股になってしまいます。

つまりダンサーには最悪の前捻角です。

これは、前側方侵入の場合、伸展外旋で脱臼し易いため

それを避けるために外旋しにくい角度で設置したのではないかと思われます。

(PT先生の推測です。)

 

 

彼の手術実績で脱臼率を低く支えている要因は

①脚長を延ばして筋緊張をかけていること。

②前捻角を大きくして、外旋しにくくさせる位置に人工股関節を設置していること。

 

 

脚長をピッタリ揃えなおかつ脱臼することなく

スポーツ復帰まで果たせるような手術を行うことができる名医達の中には、

「関節包を残すことなど全く意味がない」「ナンセンス」とまでおっしゃる先生方もいる。

そんな中で、関節包靭帯温存術で実績を上げていくためには、

脚長を延ばし過度前捻にする、という裏の操作を行うしかないのかもしれません。

 

もし関節包(靭帯)温存術で人工股関節全置換術を行うことを検討されている方がいたら、

とにかく事前に医師によく確かめておく事をおすすめします。

特に片脚手術の場合、

 

①脚長差はどれぐらい発生するのか。(私は0がいいと思う。CT上7mmしか延ばしてないといわれても実際には17mmの脚長差が発生しているから。)

②関節包が緩くても、術前計画通りに正しい位置に人工関節を設置するか。

③関節包が硬くてのびない場合、関節包は切除するか。

④ ②③の場合、どうやって安定性を確保するか。(オフセット、32mm以上の骨頭、等)

⑤(バレエ系ダンスをする人の場合)前捻角は通常の20度までに設置するか。

 

これらをよく聞いて、理解納得した上で手術を受けてください。

出来れば音声記録など録っておく方がいいです。

私の様に、術前は「脚長を揃えてあげるよ。」と言われたにも関わらず、

2cm近くも延ばされることもあるからです。

 

最後にもう一つ。

医師達がよく言う

「脚長差があっても、その長さ全てを補高せず、少なめに補高してください。

脚長差1.5cmまでは支障ありません。」

というのは嘘です。

脚長差が1cmでも、膝痛や腰痛は発生します。

変形性膝関節症のリスクが増加する、

という海外の研究論文もあります。

今、脚長差がある方は

ご自分の心地よい高さまで、

ためらわずにインソールを入れて歩いてください。

もちろん自分が必要なければしなくてもいいかもしれません。

身体の感覚は人それぞれです。