6月1日(火)
大都会の都立病院へ。
ここはもう30年前、58歳で亡くなった父を看取った病院でもある。でも、外来に来ることはなかったから記憶の印象とは違う感じがする。
初診受付も、待合室も、レントゲン室も、どこも空いている。現在コロナでERは休止、他の科も外来者を抑えているという。K病院も大学病院も、混みに混んでたから、こんな空いている病院が信じられないほどの光景だ。
整形のH先生。
経過説明。K病院での術前術後写真のCDも持参したのでそれを見てくれている。
―再置換術は断られた埼玉県の医師から
『最後は脚延長の先生が救ってくれます』と、
ここを教えられました。
あと、この雑誌見たので、リスクや流れのだいたいはわかっています。お話を伺いたいと思って―
「聞くだけなら、タダですからね。」
(皮肉なのかフランクなのか、面白い先生だ。)
まず、寝て脚長を測ってくれた。
75と77cm。
そしてお話。
・THA後の脚長差による脚延長手術はやった事ないし、保険診療もきかないのではないか。他院もわからない。
・2cmまでは、我慢してと言っている。2cm過ぎると腰痛等発生すると言われている。
・右側を脚延長した後に、将来もし右もTHAになって脚長伸ばしたら、また左もさらに伸ばすのかという話になってくる。
・術前悪かった脚が長くなってるから、動きも悪いのもあるだろうから、半年とか様子を見るとまた違ってくるかもしれない。
う〜む。やはり門前払いか…と思ったけれど。
それはそれとして、質問リストを見せて手術の詳細を質問すると、ちゃんと答えてくださった。
・延長期間終了後も、その3倍の期間、固定具を付けて骨が固まるのを待つ。それは自宅でやる。傷がふさがり、ピンの消毒を自分でできるようになったら、退院していいので。
・1cm伸ばすなら2ヶ月〜3ヶ月は創外固定器を付ける。(その後も3ヶ月は、装具をつける)
・大腿骨は遠位部(膝近く)を骨切りすることになる。
・大きな後遺症はない。
「何センチ違うかが問題だから、ここでも1枚レントゲン撮ってみましょう。」
向かったレントゲン室では、右足下に1cmぐらいの厚さの板を入れて立位で撮る。
撮ってから診察室前に戻り、しばらく待っていると、創外固定器を下腿につけているらしい女性が、松葉づえをついて出てきた。
固定器の周りに布製のカバーをかけているので、一見してはわからないが、足の向きが通常ではないので、病気等で曲がったものを修正しているのだろうなと想像する。
再度診察室に呼ばれた。
先ほどの女性は、去年の10月に手術されたそうだ。もうすぐピンも抜けるという。
ピンを抜く前にネジを緩めフル荷重する期間で、通院して様子を見ているのかもしれない。
車じゃなくてもこうやって電車に乗って通院もできるのかな、人にぶつからなければ、と思う。
約1cmの板に右足を載せて撮ったレントゲンの結果、骨盤の傾きと水平線の差は1度だったそう。
「これだと差は約1cmということになります。
ただ、その板が1cm丁度かどうかわからないのであとでレントゲン室に見に行きます。」
(…えっ、そこまでしてくれるんだ。…)
―ちょっと1cmより厚い気はしました。―
「1から1.5の間ぐらいかもしれませんね。」
「埼玉県の病院は部長先生ですか?」
―いえC先生です。でも部長先生も気にして脚延長の先生方を検索してスマホで見せてくれたりしました。―
「お世話になってるんで。。」
(…あれ、ちょっと検討してもいいかなって感じかしら。)
ー脚延長手術してスポーツ復帰している人いますか。アスリートとか。ー
「それはいないですね。仕事に復帰してる人はいますが。」
ー登山とかダンスはできますか。ー
「登山はできるんじゃないですか。バレエの動きはどうかな。延長後固定を待つ間に筋肉どれだけ落とさないかにかかるかな。」
ー固定器つけたまま筋トレはできますか。ー
「膝曲げたりはできないから、脚伸ばして動かす。全加重で歩行する。」
―先生から見て、再置換術して大腿骨割れて内固定するのと、外から脚延長するのではどちらがリスクありますか。―
「大腿骨割れたら大変でしょう。ワイヤーで固定したら、しばらくおとなしくしといてってなるでしょうね。」
ー骨はワイヤーがついてても強度は問題ないんですか。ー
「そう、大丈夫。要は筋肉ですね。」
「K病院でこれだけ伸ばしたってのも、何か理由があったんじゃないですか。
だからそれを脚長揃えるってことだけを主にして再置換しても、どうなのかな。K病院執刀医は有名な先生でしょ。」
ー有名かどうかはわかりませんが、
関節包靱帯機能不全の時は脚長を伸ばす
という自説でされてます。ー
(うん、ここにも天下のK病院かぁ。…)
「骨盤で1cm変えるって、大変なことですよ。」
「あと、骨が修復する速度っていうのは確実に年齢が関係します。」
ーはい、高齢なんで。。骨を強くするにはどうしたらいいですか。カルシウムとるとか。ー
「荷重をかけることですね。」
(よく、かかと落としが骨粗鬆症防止の運動で紹介されてる、あれと同じか。…)
「あとは、保険ですね。使えるかどうか。」
―そうなんです。自費だと1cm100万円とか、聞いてます。―
「まあ外国なんかで両脚1000万とかいいますね。
また、6月中旬に来てくれたら、それまでに師匠に聞いときます。
保険適用になるか、そんな手術やめとけって言われるか(笑)。師匠は別の病院にいるんで。」
ーはい、来ます!ありがとうございます。ー
「僕らも1cm伸ばすというのはやったことがありません。」
ー自覚的には2cm違うんですが…ー
「ぴったり合わせたいですよね。」
ーはい。もしこんな大変でせっかくやるならピッタリ合わせたいです。今日はありがとうございました。ー
脚長を測り、レントゲンも撮り、思いがけず師匠にも聞いてくださるという。
とても親切な都立病院の若手先生だった。
コロナのせいで、少し暇なのもあったのか、ゆっくりお話をしてどんな質問にも答えてくださった。お陰でだいぶ脚延長の実際が見えてきた。
思い返せば、この都立病院の予約を取った時は、再置換か脚延長か、どうやって脚延長の医師に会うか、と追い詰められた精神状態だった。
そしてここにも脚延長の医師がいらっしゃることを思い出し、電話して初診予約を取れたのが奇跡のようだった。コロナ禍下というのに。
都立病院は料金も安かった。紹介状なしの受診でかかる選定療養費、普通5000円ぐらいするのが1300円しかかからない。職員の方も感じ良く親切で、都民のための病院なんだなぁと感じた。