ラウンジでブログを書いていると、突然

主治医が現れた。

若手へのセミナーが今日あるので、ついでに患者を見回ったらしい。

「どうですか。変わりない?」

―はい、変わりはないです。―

「足の差はすぐにはなくならないから。」

―先生、レントゲンで見たら、脚長差は9.6mmなんですよね。―

「そう、でもCTは7mmだから。」

―7mmの小数点以下はいくつですか?―

「6かな。」

―7.6mmですね。

主観的な感じ方はなくなってもこの解剖学的な差はなくならいんですよね。―

「そう。」

―この差は左の骨盤を上げることで解消させるんですか?―

「そうね。でも、手術前もそうだったじゃない。左が短くて。」

ー術脚の方が長くするのは、健脚側に負担かけないためとおっしゃってましたが、

長い方の左脚を斜めにして右脚をついて傾いて歩くと、よけい右に負担かかるんじゃないですか。

「もともと重心が右に来てたから、術脚を長くして重心を左に移すようにして歩くの。」

―よくわからないです。―

 

―骨頭(ボールのこと)が28mmでしたけど、32mmが一番脱臼しにくいんじゃないですか?「そうなんだけど、ライナーも薄くなっても大丈夫にもなってきたんだけど、ボールを大きくしなくても他の組織で支えるから、脱臼はしない。」

―でも、28mmの方が可動域の角度が狭いんじゃないですか。

「バレリーナが高く脚上げてる時も、180度股関節でやってるんじゃなくて、骨盤をスライドさせて上げてるの。だから股関節だけで可動域を考える必要はないの。」

―先生、次回のお話合いですが、再来週でなく来週の水曜日でもいいですか。―

「調整します。看護師長の都合もあるし、若いのも同席させないといけないから。」

 

ここでセミナーのお時間となりました。

 

……また若いチーム医以外の人も同席させるんだろうか。

前回向こうは4人。こっちは夫と私の2人だけ。人数で既にプレッシャーかけられてる。

こっちもだれか同席させようか。……

 

主治医の話の補足として以下、人工股関節置換術についての主治医へのインタビュー記事を抜粋転載しておきます。

 

 

「手術の若年齢化を考えても、術後の脱臼リスクなどを軽減し、どのような動作でもできる限り行えるようにすることが重要です。そのための方法として注目が高まっているのが、関節包靭帯を切らない手術です。股関節は周りを筋肉で覆われ、その中で関節包という柔軟性のある袋状の組織に包まれています。股関節を動かすと、筋肉は関節包の上を滑らかに動きます。関節包の内側には滑液包という膜と関節包靱帯がありますが、従来の手術方法では切らざるを得ませんでした。しかし、これらを残すことで股関節の安定性が高まり、脱臼リスクは大幅に低減できます。筋肉が動的安定性を保つのに対して、関節包靭帯は静的安定性を保ち、どちらも大切な役割を担っています。この両方を残すことでより高いレベルでの軟部組織の温存が可能となり、患者さんの早期の回復も期待することができます。

関節包靭帯を切らない手術では、骨折に気をつけていれば、動きの制限はありません。関節包靭帯を残すことで、曲げたり伸ばしたりする動きに骨盤が連動し、動作が安定します。関節包には、位置覚といって体の各部分を感知する感覚があるので、患者さんも「この動きをしても私は大丈夫」というのが体で感じられて、不安を感じないようです。バレエ教室の先生が手術を受け、術後に仕事復帰した例もありますが、バレエで足を高く上げるような動きは、股関節の可動域の広さだけでなく、骨盤がスライドすることで成り立つものです。」