新・白蛇伝 ~千年一度の恋~ (原題:新白娘子传奇 2019年 全36話)

 

許仙  于朦朧 アラン・ユー

 

白素貞 鞠婧禕 ジュー・ジンイー

 

小青  肖燕 シアオ・イエン

 

法海  裴子添 ペイ・ズーティエン

 

金如意 虞朗 ユー・ラン

 

 

Amazon で見ました。

物語はやや複雑で、テーマが難しいです。

 

簡単に言うと、こんな物語です。

白蛇の妖怪・白素貞は千年の修行を経て人間の姿になります。
観音様に人間界で修行するよう諭され、

臨安へ行き、医者の許仙と出会います。
臨安にいた青蛇の小青とも知り合い、姉妹になります。

白素貞と許仙は愛し合うようになりますが、
ここから許仙の受難がはじまり、
許仙の姉やその夫、師匠とその娘など、

周囲の人々が巻き込まれます。

僧侶・法海は、師父に妖怪探知機の禅杖と、武器の紫金鉢を授けられ、
魔物退治のため臨安に来ます。
それは法海にとって悟りを得る修行でもありました。

白素貞は許仙と結婚し、医師として許仙とともに人々を救います。
法海は白素貞の許仙への無償の愛や街での善行を眼にし、
手を出しませんが、すべては人々を惑わす偽善ではないかと、
妖怪が悪との偏見と魔物退治の執念を拭いきれず、
その迷いがやがて心の魔を生みます。

許仙は白蛇姿になった白素貞を見て、命を落としかけますが、
白素貞を受け入れ、ともに生きていくことを誓います。

許仙を慕っていた金如意は、白素貞への恨みを募らせ、
その怨念が法海の心の魔を増大させ、
心の魔はついに許仙の姉の胎児にとりつきます。

白素貞は命がけで胎児を救い、無事子供が生まれますが、
法海の誤解による攻撃で、元神を失います。
法海はようやく妖怪が悪とは限らないことを悟ります。

許仙は法海に白素貞の元神再生を懇願し、白素貞は蘇ります。

心の魔に憑りつかれた金如意は、身をもって魔を封じますが、
それを託された許仙は自身とともに心の魔を滅ぼそうとします。

法海が許仙と心の魔を焼き尽くそうとしたとき、
白素貞が妹分の小青と現れ、許仙を救うため法海と対峙し、
人々を巻き添えにして、
東海の水を逆流させ、金山を水没させようとします。

白素貞の所業を知った天界は、天軍を差し向け、
許仙は雷に打たれ、心の魔は除かれます。
雷劫によって白素貞に宿る子供が生まれ、許仙は助かります。

そこに観音様が現れ、居合わせた者をそれぞれ教え諭し、罰を与えます。

白素貞と許仙にとって何より辛いことは、
ともに生きられなくなることでした。
白素貞の罪は情に溺れたことで、
その罰は許仙と子供と会えなくなることでした。

白素貞は西湖の水が枯れるか、霊峰塔が倒れるまで、
霊峰塔に幽閉されます。
白素貞に会えなくなった許仙は旅に出ます。

許仙と白素貞の子・許仕林は成長し、状元(首位)で科挙に合格します。

許仕林が状元となった褒美として、一家再会を天に祈願すると、
龍の姿となった小青が現れ、西湖の水を飲み干し、
白素貞は霊峰塔から解放され、許仙と再会します。

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テーマが少し難しくて、
善とは、悪とは、慈悲の心とは何だろうと考えさせられました。

許仙は白素貞に出会って恋に落ち、
それは許仙にとって何よりの喜びでしたが、
人生が狂い、身を滅ぼしかねない事態になります。

白素貞は人間界で人々を救い、
何も悪いことはしていないようにも思えますが、
本当にそうでしょうか。

そもそも本当の自分を偽って、許仙と結ばれ、
そのために許仙は命を落としかけます。

何度かこのまま一緒にいると大変なことになると
悟る機会があったのに、愛を貫こうとしました。
人々を巻き込んでも許仙を救おうとしました。

二人だけを見ると美談ですが、
急に現れた白素貞に許仙を奪われた金如意は人生が崩壊し、
恨みを募らせました。

「恋は罪悪」だと夏目漱石が「こころ」で書いています。
二人の恋が生んだ金如意の怨念が人々を巻き込むことになりました。
他人を不幸にする恋を貫くことはある意味で悪です。

 

「恋は盲目」とも言います。

白素貞と許仙は賢いのに、二人でいることが、

悪い方へ向かうとは思いません。

金如意はもともとわがままな娘ですが、悪人ではありませんでした。
許仙を奪われた悲しみ苦しみ、白素貞への恨みで悪に染まってしまいます。

むかでの妖怪と結託した呉娘子はなぜ子供を誘拐したのか。
妖狐の胡可心はなぜ男を惑わすのか。
金如意はなぜ何度も白素貞と許仙の邪魔をするのか。

法海の存在が面白いです。
わたしは「レ・ミゼラブル」のジャベールを思い出しました。
悪人が善人になるとは認められず、悪人を絶対に許せない。

ジャベールは自分が間違っていたことを受け入れられず死んだけど、
法海は悟りを得て生き延びました。

迷いが生じた法海の前に、師父が姿を現し、諭します。
「白蛇と青蛇は決して妖ではない なぜ悪意があると疑う?
 この世の全てを愚者は区別し 知者は見極める
 善か悪かを決めるのは 心しだいなのだ」

「罪を憎んで人を憎まず」とはよく言ったもので、
慈悲の心とは罪の裏にある事情に向き合うことだと思います。

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白素貞が妖怪というより、もはや天女様のように美しい。
冷静かつ聡明で、常に白っぽいので変化に乏しいとも言えますが、


青蛇の小青が反対に表情豊かですばしっこく、見ていて飽きません。
故意に対照的に描いているかもしれません。

許仙は見る人を選ばない顔立ちで、安心して見ていられます。
声が吹き替えのようですが、とても優しくていい声です。
聡明で洞察力があるけれど、
特殊な能力も特別な身分もなく、
中国ドラマに登場する男性としてはめずらしく凡人です。

法海は真面目さが、どこかとぼけた風に見えて、なんとなくおかしい。

この人の迷いが、ドラマの大きなポイントになってますが、

「心の魔」の生まれかたがなんとなく唐突で、

法海の苦しみが伝わりにくいのが残念です。


ファンタジーとしては地味めかもしれませんが、

人とは異質なものを登場させることで、

人とは何か、人はどうあるべきかを考えさせるところがあって、

ファンタジーの原点といえる物語ではないかと思います。