ムーラン(2012年 原題:巾帼大将軍)  感想とあらすじ

 

とてもいい話で、いいドラマでした。最後まで見てよかったです。

中国のドラマとしては、登場人物が少なく、ストーリーも分かりやすいです。

ムーラン(木蘭)は中国の伝説的なヒロインで、架空の人物だそうです。
このドラマでは、ヒロインの名前を木蘭から若蘭と改め、時代が隋王朝に設定されています。
原題「巾帼大将軍」の「巾帼 jīn guó」とは女性という意味です。

 

以下が物語の本筋となります。

・隋と揉冉(じゅうぜん)の戦い

・これに乗じて北周の再興をもくろむ宇文家の画策

・華若蘭と、その結婚相手だが彼女とは知らない趙宇および隋の三皇子・楊俊との関係

・楊家の家族模様

・それにからむ華若蘭の妹・華玉荷の野望の行方

 

西暦581年、異民族の揉冉(じゅうぜん)が侵攻します。
時の皇帝は8歳の幼帝・宇文闡(うぶん・せん)で、この国難に対処できないとして、北周の朝廷は皇帝を退位させます。
そして、宇文闡の母方の祖父・楊堅(よう・けん)が、皇帝となり、隋王朝がはじまります。

楊家の者が帝位に着くことが許せない、宇文闡の母・楊麗華と宇文家の重臣・宇文述は、政権奪還をもくろみます。

華家には二人の娘がいて、姉の若蘭は勝気で正義感が強く、妹の玉荷は美しく、頭がきれます。
若蘭はある日、一人の女性・潘晴(はん・せい)を助け、家に連れ帰ります。



             若蘭と玉荷

 

姉妹の父・華武(か・ぶ)が国境警備の任務から帰ってきます。

華武は皇帝の秘密を知っていて、そのことが物語に大きくからんできます。


華若蘭は趙宇(ちょう・う)との縁談が決まりますが、幼い頃から互いによく思っていませんでした。

妹の玉荷は、姉の若蘭が良い縁談に恵まれ、面白くありません。

姉より自分のほうがきれいで賢いのに、名家に嫁ぎ、いい暮らしをすることが許せません。

若蘭は本意ではないけれど、両親のことを考え、嫁ぐ決心をします。

 

ところが、父に出征の命が下り、若蘭は婚礼の日に、父に代わって出征することにします。

趙家には潘晴を代わりに嫁がせ、自分は花生と名乗ります。

この偽嫁の設定が話をとても面白くしています。

 

一方、玉荷は姉の結婚への当て付けに芸妓に応募します。
玉荷は、皇宮というもう一つの戦場で権力闘争に飲み込まれることになります。

 

趙宇は、潘晴と婚礼を挙げた後、出征し、戦場で若蘭と出会います。

若蘭は趙宇を知っていましたが、趙宇は若蘭と知らず、互いに距離を縮めていきます。

戦地では宮廷での権力争いを好まない三皇子・楊俊が軍を率いていました。


皇后が最も愛する三皇子・楊俊は、皇太子とその座を狙う二皇子・楊広に疎まれ、

帝位奪還を狙う宇文述は、皇子たちの関係と、揉冉人を利用し、策略をめぐらし、楊俊を葬ろうとします。

 

皇后の独孤加羅(すごい名前ですね)は、楊家において非常に影響力を持っていて、とても怖い人です。

宇文家の再興を望む娘の麗華を退け、ついには亡き者にしようとさえします。

もともと、楊家は帝位を譲られたのだから、幼帝が大きくなれば、帝位を返すことにすれば、

争いごとにならない気がしますが。

国の安定のためといいつつ、結局は楊家のことしか考えていないように思えます。

最後は皇后のもとから3人の子供たちが去る結果となります。

 

若蘭と趙宇はともに艱難辛苦を乗り越え、義兄弟となります。

また、三皇子・楊俊とも義兄弟となります。

 

書生気質の趙宇の話し方が、くどくどしく書面的で、とてもおかしみがあります。うまいですよね。

そういうところを若蘭は嫌っていたのですが、趙宇の知識にたびたび救われます。

 

楊俊は趙宇と正反対で、武人ですが、誠実で思いやりがあり、だんだんとすてきな人に見えてきます。

というか本当にすてきな人ですよ。

 

このドラマの何がいいかいうと、華若蘭がとても真っすぐでいい人なんですね。

家族と忠義に尽くそうと、命を投げ出します。どこまでも筋が通ってる。

男の人以上に男らしいです。

 

華若蘭は最初は全然強くなくて、普通の女の子で、それが物足りなく感じたのですが、

何度ピンチが訪れても、諦めず、強く正しい行動を貫きます。

性別を超えて、一人の人として、尊敬できます。

それで、趙宇と楊俊は花生に心をつかまれていきます。

 

ただ、若蘭も、皇后に父の命と引き換えに、人を殺せと言われたときは、窮地に立たされます。

その時、「良心に背いてはいけない」という父の言葉が頭をよぎり、思いとどまりました。

 

終盤で、若蘭の秘密が少しずつ明かされていくところも、運びがうまいです。

 

まず、楊俊が若蘭が女性であること知りますが、若蘭はそのことを知らない。

その後、趙宇が若蘭が女性であることを知り、若蘭は知られたことを知ります。

楊俊と趙宇は互いが若蘭の秘密を知ったことを知らない。

趙宇は若蘭が妻であることを知りますが、楊俊は最後まで知らない。

といった感じです。

 

玉荷は、家族思いで、忠義に厚い若蘭とは対極にあります。

玉荷を突き動かしたのは、姉へのライバル心みたいなものだと思います。

いい結婚相手に恵まれながら、若蘭が男装して従軍したと知り、よけいに腹を立てます。

どこまでも薄情で、計算高く、野心家で、嫌なやつですが、

機転をきかせて皇宮の男たちを手玉に取る場面はちょっと小気味よくもありました。

 

玉荷は、栄華を極めることを望んでいるけれど、人にとって何が幸せかわかっていないです。

最後に家族を殺せと言われ、ようやく自分の愚かさを知ります。

「自分は人でありたい」と言った玉荷の言葉が印象的です。

若蘭はそんな玉荷を最後まで見捨てず、自我を喪失した玉荷をようやく連れて帰ります。

 

若蘭の楊俊への忠義は、楊俊への愛に根差したものだったと思います。

若蘭は最後まで自分の気持ちを告げませんでした。

楊俊との関係は戦場でしか成り立たないものです。

女性として楊俊の妻となり生きることは現実的ではないです。

この限られた状況での限られた愛が、物語を悲しくも美しくしています。

 

ラストもわたしは満足しました。

愛しているがゆえに、若蘭を生かすために、去らせた楊俊。

若蘭の気持ちを静かに受け止める趙宇。

ふたりともとても素敵でした。

 

でも、わたしが一番好きなのは、若蘭の父・華武ですけれどね!

 

 

メインキャスト

華若蘭(花生)― 江若琳(エレイン・コン)

趙宇―袁弘(ユエン・ホン)

楊俊―陳思誠(チェン・スーチェン)  

 

登場人物

華家の人々

華若蘭―父の代わりに従軍し、花生と名乗る

華玉荷―華若蘭の妹、芸妓となり皇宮に入る

華武―姉妹の父、秘密がある

華夫人―姉妹の母、気が強い

 

趙家の人々

趙宇―若蘭の結婚相手、博学で書生気質、出征し若蘭と知り合う

趙夫人―趙宇の母、未亡人

潘晴―若蘭の代わりに趙家に嫁ぐ、北周の官吏の娘だった

 

楊家の人々

楊堅―隋の初代皇帝、宇文闡の祖父

独孤加羅―皇后、やたら発言力がある

楊麗華―楊堅の娘、宇文闡の母、宇文家の復権を切望する

楊勇―皇太子、放蕩で思慮が浅い

楊広―第二皇子、従順を装い、皇太子の座を狙う

楊俊―第三皇子、権力争いを嫌い、軍を率いる 陣営で若蘭と知り合う

            

宇文家

宇文闡―北周第5代皇帝、静帝、母は楊麗華

宇文述―褒国公、宇文家の重臣、北周の再興をもくろむ

宇文全―宇文述の弟

 

揉冉(じゅうぜん)  

鉄骨木―揉冉の可汗(君主)

珠児公主―鉄骨木の娘

鉄抜硅―鉄骨木の弟、後に可汗となる

阿奴法―鉄抜硅の息子、珠児公主の恋人

 

そのほか

胡都統―宇文述の配下

李教官―玉荷に舞踊や教養を指導する

疤臉(バーリエン)―若蘭が命を助け、武術を教わる

大刀(ダーダオ)―華武の戦友

石虎(シーフー)―楊俊の腹心

兎子(トゥーズ)―若蘭の戦友