小学校の家庭訪問で、毎年、母が先生に、
「この子は学校での事をほんとにあまり話さないんです」
って言っていたのを覚えている。
確かに、あんまり話さなかったな。
泳げないとか、鉄棒がニガテだとか、できないことはあったけど、それを別に話さなかったな。出来ないのは恥ずかしかったけど、幸いにも学校に行きたくないって思うほど困ったことがなかったし。なんていうか、特に何も考えてなかったっていうか。
けれど、私が母になって、イチコが学校に行くようになって気づいてしまった。
私、聞かれたことないな、って。
学校のこと、あんまり話さないんです、って言ってたけど、学校どうだったかなんて、一度も聞かれたことないや。
イチコは、学校での出来事、良いことも悪いこともよく話します。
女の子だから男の子より話すってのはあるけど、イチコが自分から話すこともあれば、私から話題をふって話すこともあります。
私は、「今日学校どうだった?」て聞かれても答えにくいと思うので、たとえば、図工の授業で持ち物があったとき、
「この前○○持ってきてくださいって言われたけど、あれはどうやって使ったの?」
とかって聞くと、あれはこうやって使ったの、っていう話から、授業中○○くんがふざけて先生に怒られた、とか、○○ちゃんが上手だった、などいろんな話をしてくれて、クラスの雰囲気を知ることも多いです。
だけど、私はそんなふうに聞かれたこと、一度もなかったな、と。
子供なので、聞かれないとなかなか言わないですよね。話すってことを思いつかないっていうか。
私は二人目の子なので、だいたい2番目は親も1番目で経験したことをくりかえすから、慣れが出てくる。子供の頃は、「きよらはしっかりしてる」って言われて、嬉しくもあったけど、だんだん大きくなるにつれて、それを理由にけっこうほっとかれて育ったな、とは感じていました。それで逆にしっかりした、とも言えるけど。
それに、母のことで母の妹である叔母と連絡を取り合うようになって、この前こんなことを言われた。
「きよらちゃんが子供のとき、サッカーやってる○くん(私の兄)にお姉ちゃん(母)もお義兄さん(父)もつきっきりで、二人ともそっちばっかり見てたから、いつもお姉ちゃんに、きよらちゃんが可哀想だよ、って言ってたんだわ。でも、そう言うと、「あの子はしっかりしてるから大丈夫」って言うの」
兄は、小学生からサッカーを始めて夢中になって、もちろん中学でも続け、高校はサッカーで入学しました。
サッカーに近い家庭で育ったので、今でこそサッカーは好きだけれど、子供の頃は、試合があるとついていかされて、友達もいない、グランドじゃ遊び場もない、あの頃は確かにつまんなかった。振り回されてもいたと思う。正月に、選手権があるからって、私だけ祖父母の家に預けられたこともある。
そんなこと忘れかけていたけど、叔母の言葉を聞いて、あの頃の私は端から見てそういう風に見えてたんだな、と思うと、ちょっと寂しい気持ちになった。
「しっかりしてる」て言われるのは嫌いじゃなかったけど、「あの子はしっかりしてるから大丈夫」っていうのはなんか意味合いが違う気がする。母も、妹によけいなこと言われたくなかったかもしれないけど、「しっかりしてる」で全部を片付けられた気になる。
親になって、こうやってチクチクした刺が思い出したようにささる。
傷つくほどじゃないけど、自分が子供の頃に認識してたことと、親になって母と同じ立場になったときに、あれ、ちょっと変だったのかもしれないと気づくことが少しずつ出てきた。
他の人はそういうこと、ないのかな。