◆花子
男・茂山千作
妻・茂山七五三
太郎冠者・茂山宗彦
後見 茂山茂、島田洋海
◆木六駄
太郎冠者・茂山千五郎
主人・茂山逸平
茶屋・茂山茂
伯父・茂山あきら
後見 松本薫、井口竜也
プログラムに、こんなご挨拶が。
昭和の終わりから、三十年の長きに渡り続いてきた伝統の狂言会が、終わりを迎えた。
理由はいろいろあるだろうが、
一番は、当代の千作師のお身体が万全とは言い難く、
東京公演はお辛いということではないだろうか。
その千作師が最後に選んだ曲が、
極重習の「花子」だった。
並々ならぬ覚悟があったと思う。
「花子」は、茂山童司改め千之丞さんの襲名披露曲として、
昨年末以来二度拝見している。
まさか、三度目に千作師の(おそらくは東京での納めの)「花子」を拝見できるとは。
歌舞伎だったら、一世一代というところだろうが、狂言は気負いがない。
これだけ続くと、
こちらとしてもいろいろと鑑賞の仕方が違ってくる。
まず、全体に千作師のセリフのリズムが非常にゆったりとしているので、
全体にゆっくりとこせこせしない舞台に仕上がっている。
一つ一つの台詞廻しの妙を楽しみ、ゆっくりと笑う。
ああ、このゆったりとした間があるからこそ、
会場がのんびりとした笑いに包まれるのだなぁ、と感じた。
若手の鋭い感性での狂言も楽しいのだが、
なんだか原点のような、お手本のような狂言を観ていて、幸せに浸ることができた。
千作師の台詞や謡の面白さ。
また、七五三師の妻の恐ろしさ!
このご兄弟の、六十年以上にわたる共演の芸歴を思うと、深い感慨に浸ってしまう。
太郎冠者の宗彦さんにとっても忘れられない舞台になったのでは?(また、後見のお二人にとっても。)
「木六駄」は、千五郎さんが、
しっかりと受け継いだ芸を見せてくれる。
大雪の中、牛を十二頭も一人で追う冒頭のシーン。
いもしない牛が、目の前にたくさんいるかのような演技。これぞ狂言の楽しさ!
観客が脳内補完して、「雪中牛追図」を目の前に立ち上げる。
大雪で凍えて、牛を追う声が震えて聴こえる。
さぞ冷たかろう、草臥れたろう、と太郎冠者に同情する。
狂言の主人は大抵無慈悲に太郎冠者を使うことになっている。
心安い茶屋の主人に勧められるまま、
お使い物の酒を飲んでしまい、二人で楽しい酒宴を繰り広げる。
顔を見合わせて、仲よさそうに宴に興じる
千五郎、茂兄弟。
これからの茂山千五郎家を背負っていくお二人。
息もピッタリで、ゆくゆくは父と叔父のような芸域に達することだろう。
こんなことを妄想した。
次回の千作千五郎の会は、
当代千五郎さんが隠居して千作になり、
長男の竜正くんが千五郎になってから。
それは、何年後か?
25年か30年後になることだろう。
杖をついて能楽堂の席についているかもしれない私…
無理か!?無理でしょねぇ(笑)
