邦楽の会に伺う。
【第二部】
(曲間の解説は、葛西聖司氏)
◆一中節(いっちゅうぶし)
「花の段」 作詞 谷崎潤一郎、作曲 二世都一廣
浄瑠璃 都一せつ、都一まり、
三味線 都一のぶ、都一志朗
人生初だと思う、生一中節。
この浄瑠璃は、谷崎の「細雪」の印象的な場面、
平安神宮の紅枝垂れ桜を愛でる一シーンを題材にしたもの。
ただし、ちょっとアレンジしてあって、
原作では、幸子、雪子、妙子の三姉妹に幸子の娘が加わって四人の場面だが、
浄瑠璃では原作者自らが娘はカットして三姉妹のものとしている。
この日もまさに桜の盛り。国立劇場前の桜も見事に咲き競う。
◆琵琶
曲垣平九郎(まがきへいくろう)
琵琶 都穂鳳(すいほう)
人生初が続く。
琵琶も生で聴くことはなかった。非常に多彩な音を出す楽器で魅力的だった。
お一人で唄いながら弾かれる。
「曲垣平九郎」は、寄席で講談として何度も聴いたストーリー。
愛宕神社の石段を馬に乗って駆け上り、駆け下るという、たいへんな馬術の名手の噺だ。
たおやかな女性が語るのだが、多彩な琵琶の魅力で惹きこまれる。
元は、梅枝を手折ってまいれと将軍家光から命じられるのだが、
こちらの流派では「桜の枝」ということで通されているとのこと。
それが今回の桜尽くしに適ったというわけだ。
◆常磐津節
「靭」(うつぼ)
浄瑠璃 常磐津清若太夫、常磐津若羽太夫、常磐津松希太夫
三味線 常磐津一寿郎、常磐津美寿郎、岸澤満佐志
これは、狂言でおなじみの「靭猿」のストーリー。
ここまで比較的短めの演目が続いたが、これは歌舞伎舞踊にもなっている曲で、
ある程度の長さのある物になっている。
太夫の語りも、歌舞伎の台詞調で面白い。
◆三曲
「おちや乳人」
筝 羽鳥藤令柯 五十嵐藤栄柯 日原藤花維柯
三弦 岩田柔柯 羽鳥省三 江夏藤綾柯 大原藤景柯
上方の地唄。
お琴の音色というのは落ち着く。
◆長唄
「四季の山姥」
唄 今藤郁子 杵屋秀子 今藤政子
三味線 今藤長十郎 今藤長由利 杵屋三澄
山姥は八重桐という遊女だった、というのが歌舞伎の世界。
近松の「嫗山姥」(こもちやまんば)以来。
これも、そのスタイルのようで、華やかだ。
◆義太夫節
「義経千本桜 川連法眼館の段」
浄瑠璃 竹本駒之助
三味線 鶴澤津賀寿 ツレ 鶴澤寛也
駒之助師お目当てで伺った会だったが、ここまでもなかなか楽しめた。
「待ってました」の掛け声で、いよいよ登場!
駒之助師では「すしや」を聴いていたが、四の切の「川連法眼館」(かわつらほうげんやかた)は初めて。
いつも通り明瞭な語りで、子狐の親狐を慕う気持ちにすぐに惹きこまれていく。
歌舞伎や文楽でおなじみの演目だが、素浄瑠璃で聴くと、また違った思いがする。
言葉の力というものがぐいぐいと迫ってくる。
もちろん駒之助師は、長年の相三味線の津賀寿師の糸に乗って、
一語一語、大変な研鑽を重ねた上での語りをされているので、
それを受け止めることがとにかく嬉しい。
このお二人の浄瑠璃を、一度でも多く聴いていきたいと願うばかりだ。
開演前のロビーでは、邦楽器に触れることのできるワークショップが開催されていて、
私も初めて「中棹」と呼ばれる三味線(清元、常磐津)に触れさせていただいた。
教えて下さる方がご親切で、全くのど素人に構えから撥の持ち方、押さえ方を指導してくださって、
「まかしょ」の伴奏にあたる弾き方を教えていただいて、実際に弾かせて頂いた。
(つい、唄ってしまった・・・。)
邦楽って素晴らしい!という思いを新たにした午後だった。


