仁左衛門の実盛をお目当てに、歌舞伎座夜の部へ。
(配役はチラシにて)
先月75歳という、後期高齢者になられた仁左衛門の実盛。
以前に変わらぬりりしさで、全く、全く、年齢による衰えを感じる事はなかったのは、先月同様の感想だ。
このところ、後輩にお手本を見せるかのような一座での主役が続いているが、
今回の実盛も、まさにそういった、第一級品のもの。
文楽ではここまで実盛の人形が活躍するということはないが、
歌舞伎ではタイトルの通りの物語をするところが眼目で、
この家のの娘、小万が源氏の白旗を命がけで守りぬき、
実盛が斬り落とした腕がここへ戻ってきたことを感嘆し、人々に語って聞かせる。
この場には死体として帰ってくる小万。
ほんのしばらく生き返って、二言三言言葉を交わすが、
文楽で、この女の八面六臂の活躍を見ているから、
どうやってこの姿になったのか、がよく分かるのだが、
歌舞伎の舞台でいきなりこれでは、まったく分からないなぁ・・・。
ひとえに、実盛の語りだけでここまでのゆくたてを理解しなければならぬ。
長い年月を経て、歌舞伎は演技を洗練させ、引き立てるようにしてきた。
歌舞伎は役者を見せる、魅せる芸能だから、
見得を切ったり、調子を張ったりして、
クローズアップさせて主役を引き立てる。
歌舞伎を観るのも、
丸本ものだと、一々文楽と比べる癖がついてしまった^^;
智・情・理、全て兼ね備えたのが、実盛の人物像だというが、
理に縛られながらも、心は源氏身体は平家と、
情が勝つ。
また、太郎吉(寺島真秀、先月に続き好演!ちゃんと動きが糸に乗ってる!)
との絡みで、人の良さ全開の情に溢れる実盛様もいい!(達磨さんが転んだ、みたいなところ和むなぁ…)
柔らかみのある実盛像だ。
脇では、歌六の瀬尾のハラがいい。
実は、小万はこの男が赤子の時に捨てた子。
この家の夫婦が、我が子以上の愛情を掛けて育ててくれた恩に報いる。
我が命一つで、
娘の死も犬死にならずに済み、
また、孫の出世の手掛かりにもなる。
最期は、孫の手を持って、
我と我が身の頸を斬り落とす@@
所謂、刎頚(ふんけい)…凄まじい死に方だ。
ほとんど少ない出番ながら、
孝太郎の台詞の上手さは、耳に心地よい。
義太夫狂言の台詞回しの上手さは、今活躍の女形のなかでも一級品だ。
米吉が、葵御前で出ている。
先月は無骨な四天王だったから、ホッとする思い。
出の衣装が、町人のもので下げ髪だったからか、
ちょっと粋な風情が出てしまう。
ここは、誰がやっても難しいのかもしれないが…
衣装を替えて、奥方のものになってからは、品もあり、気丈な母だった。
ここは、木曽先生(せんじょう)義賢が、最期を遂げたあと、という後日談だ。
義賢最期、といえば仁左衛門で、この演目にはご縁があるようだ。
先月の盛綱、今月の実盛、
と、義太夫狂言の主役が続いているが、
今一番観てみたいのは、その仁左衛門の義太夫狂言だ。
今後も、引き続き出て欲しい。(お願いします!!)
七月の松竹座は、
義経千本桜の碇知盛が出るそうだが、
仁左衛門はやらないだろうか…
もう一度、観てみたいものだが。
他に、
猿之助大車輪の「黒塚」。
圧倒的に後半の躍動感が素晴らしい!
近頃の照明には、毎回疑問を感じてしまうが…
最後は、
「二人夕霧」。
上方のふんわりとした笑いに包まれる、佳品。
ここでも孝太郎の夕霧が可愛らしく、良かった。
この方も、もうちょっといい役をもらえたらできるのだと思う。そのためには、襲名が必要なのかな?
(この家には、我童があるが…)
鴈治郎、魁春、東蔵と揃っていい顔ぶれ。
千之助の口三味線の手真似が、
しっかりと三味線の構えとバチ捌きになっていた!

