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◆鎌倉三代記

 

局使者の段    

豊竹希太夫・鶴澤清馗

 

米洗いの段   

 豊竹靖太夫・野澤錦糸

 

三浦之助母別れの段

竹本文字久太夫・鶴澤藤蔵

 

高綱物語の段

竹本織太夫・鶴澤清介

 

(人形役割)

三浦之助母・吉田和生

女房おらち・吉田簑一郎

女房おくる・桐竹紋臣

讃岐の局・ 桐竹紋秀

阿波の局・桐竹紋吉

北條時姫・吉田勘彌

安達藤三郎実は佐々木高綱・吉田玉志

三浦之助・吉田玉助

富田六郎・吉田文哉

その他大勢

 

 

◆伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)

 

八百屋内の段

 竹本津駒太夫・竹澤宗助

 

火の見櫓の段

豊竹芳穂太夫・竹本南都太夫・豊竹亘太夫・竹本碩太夫

野澤勝平・鶴澤清公・野澤錦吾・鶴澤燕二郎

 

(人形役割)

小姓吉三郎・吉田玉勢

下女お杉・吉田簑紫郎

娘お七・吉田一輔

親久兵衛・吉田勘市

久兵衛女房・桐竹亀次

丁稚弥作・吉田玉翔

武兵衛・桐竹勘介

太左衛門・吉田玉路

その他大勢

 

 

 

「鎌倉三代記」は、三年前に観て以来、素浄瑠璃、歌舞伎で拝見してきたが、

中で、竹本駒之助師の素浄瑠璃に初めて伺ったときが、この演目で、

神津武男氏の解説でこの作品が「難波戦記物」というジャンルにあることを知った。

 

難波戦記(なんばせんき)とは、大阪城落城に至る物語で、

そこは当時江戸幕府に遠慮して時代設定を鎌倉幕府に変えたりしているが、

 

観る人はみんな知っていて、時の権力に楯突く物語は痛快で、

現実にはあっという間に滅びてしまった豊臣家への大阪人の哀惜の想いが

日本人の判官びいきの感情と相まって、長く愛され続けていったというところなのでしょう。

 

人形浄瑠璃の中の、「難波戦記物」という一ジャンルの人気たるやすさまじかったそうで、

その上演回数はたいへんなものだったという。

 

さて、今月の公演だ。

三年前に拝見した時とは、床・人形共に配役が大きく入れ替わった。

 

中で、「局使者の段」の希・清馗コンビは変わらない。

希さんの語りに安定感があったのは、再演ゆえか?

清馗さん、痩せた?お顔がほっそりされたような・・

 

「米洗いの段」の靖・錦糸コンビ。

ビシビシと錦糸師に鍛えられている途上の靖さん。

低音に明瞭さを欠いているきらいが見られるので、そこきばって!!

 

お姫さんがお豆腐買いに行って、

帰りはお供が迎えて傘をさしかけられ、行列で・・という奇抜な舞台に笑いを誘う。

 

さらに、水くんだりすりこ木摺ったり、

やたら甲斐甲斐しいが何やってもうまくいかず、おらちがやってくれたり、

局たちが替ったりしている。

 

歌舞伎では途中からの演出になるが、文楽のこうした軽いチャリ場は楽しい。

このあと大変な悲劇に見舞われるわけで、そのギャップが効果的。

 

「三浦之助母別れ」から、本格的に物語が動き出す。

そこを導入部の藤蔵さんの三味線が気迫のこもった撥さばきで描き出していく。

 

三浦之助母は和生さん。

動きの少ない中、武家の母の覚悟を内に秘めた佇まい。

この母は自宅にいて病の身を養っているのだが、そこは戦場のような趣。

 

「高綱物語の段」で、この場の人々の一切が明らかになり、

敵方の安達藤三郎と名乗っていた男こそ、佐々木高綱で(大阪城の人物では真田幸村)

さまざまに巡らした戦略の一つとして、

北條時政(徳川家康)の首を時姫(千姫)に取らせようとするために、

あれほど嫌がっていた実家へ戻らせる。

 

それを励まし、一つの手柄を与えようと、

三浦之助母は、時姫の槍に突かれて落命する。

満身創痍の三浦之助も、今一度戦場に戻るが死んでゆく運命。

 

さらに、父の元へ行ってその首を取った後、

時姫も自害をするという手筈。

(しかし、時姫は失敗するのだろうな。。たぶん)

 

幕切れ近く、佐々木高綱が松の木に昇って「物見」をする、

という演出があるが、

「太功記 十段目」の光秀も同じシーンがあって、

この二作は舞台面がとても良く似ている。

(太功記のほうが20年ほどあとの作品なので、参考にしたのか)

 

 

さて、重厚な悲劇のあとは、「伊達娘恋緋鹿子」。

こちらも、八百屋お七の放火事件を扱っているので、

悲劇には違いないが、幕切れがとにかく派手で楽しい。

 

3年前の赤坂文楽で、偶然この二作品が取り上げられた。

 

その時は、背景もなく、相手役もなく、

一輔さんが遣うお七一人の動きで「火の見櫓の段」の解説だった。

(火の見櫓無しで、上がっていくところを見られたのは貴重だった)

 

その前に「八百屋の段」がついて、

無理難題のお七の縁談への一家中の嘆き。

火災に遭って何もかも失った一家の苦衷が描かれる。

 

無理やり嫌な男に添わせる両親・・

それはこの家の生活の為だったのだが、

お七のしでかした結果はあまりにも重大で、ささやかな両親の想いなど、

こっぱみじんに吹き飛んでしまうわけだ。

 

吉三郎がしのんできて、

女中の手引きで縁の下に隠れてそのやり取りをすべて耳にする。

最早自分に残された道は、切腹しかないと、恋しいお七一家を巻き込むまいと去っていく。

(お家の宝刀を探し出す期限が迫っていたために)

 

ところが、この刀は(なぜか)お七の夫になる武兵衛が持っている、

と分かり、

 

「火の見櫓の段」では、櫓に昇って太鼓を打って火事(ウソの)をしらせ、

木戸を開けさせて、お杉や丁稚の活躍で奪い取った刀を持って吉三郎の元へ・・

 

という幕切れで、

派手な人形の遣いや、武兵衛方とお七方の刀の奪い合いの面白さなど、

喜劇的?な見せ場が続き、

後の悲劇は全く感じさせない派手な幕切れだ。

 

文楽を観終わると、

あまりの熱気にいつもオーバーヒート気味になるが、

 

この日はこのあと、渋谷で「吉坊ノ会」に回った。