通し公演 妹背山婦女庭訓
第一部
◆大序 大内の段
竹本碩太夫、豊竹亘太夫、竹本小住太夫、豊竹咲寿太夫
鶴澤清允、鶴澤燕二郎、野澤錦吾、鶴澤清公
◆小松原の段
久我之助・豊竹芳穂太夫
雛鳥・豊竹咲寿太夫
小菊・竹本南都太夫
桔梗・竹本文字栄太夫
玄蕃・竹本津國太夫
采女・竹本小住太夫
竹澤團吾
◆蝦夷子館の段
口 豊竹亘太夫、鶴澤清公
奥 竹本三輪太夫、鶴澤清友
(人形役割)
蘇我蝦夷子・吉田玉佳
中納言行主・吉田清五郎
大判事清澄(大内)・吉田玉勢
宮越玄蕃・吉田勘市
後室定高・吉田玉誉
采女・桐竹紋臣
藤原鎌足・吉田簑太郎
荒巻弥藤次・吉田文哉
久我之助・吉田玉助
雛鳥・吉田簑紫郎
腰元小菊・桐竹紋吉
腰元桔梗・吉田玉誉
めどの方・吉田文昇
大判事清澄(蝦夷子館)・吉田玉男
蘇我入鹿・吉田文司
その他大勢
二段目
◆猿沢池の段
豊竹希太夫、鶴澤友之助
<休憩>
◆鹿殺しの段
竹本碩太夫、野澤錦吾
◆掛乞の段
豊竹睦太夫、鶴澤寛太郎
◆万歳の段
竹本織太夫、鶴澤清志郎、鶴澤清允
◆芝六忠義の段
切
豊竹咲太夫、鶴澤燕三
(人形役割)
天智帝・吉田勘彌
藤原淡海・豊松清十郎
禁廷の使・吉田玉彦
漁師芝六・吉田玉也
倅三作・桐竹勘次郎
女房お雉・吉田簑二郎
大納言兼秋・吉田玉輝
米屋新右衛門・吉田玉勢
倅杉松・吉田和馬
鹿役人・桐竹勘介
興福寺衆徒・桐竹亀次
藤原鎌足・桐竹勘十郎
采女・桐竹紋臣
その他大勢
◆三段目 太宰館の段
豊竹靖太夫、野澤錦糸
(人形役割)
大判事清澄・吉田玉男
後室定高・吉田和生
蘇我入鹿・吉田文司
荒巻弥藤太・吉田文哉
その他大勢
東京では、1999年5月以来、ちょうど二十年ぶりの「妹背山婦女庭訓」通し公演だ。
チケットの売り上げも好調で、あっという間に売り切れ・・・
ゲットできなかった方の嘆きも耳にした。
こういう公演を、みんな待っている!ということですね。
ということで、劇場には上手、下手両方に床が設えられている。
これは、この演目に限ってのことで、
下手床を作る事によって、観客数も減ってしまうことになる。
一部では、このいつもとは違った劇場内の様子を感じつつ、
それが使用される二部までお預け状態で開演を待つ。
大序は、前回公演が98年前だという。
誰も見た人はいないし、もちろん演奏したり遣ったりした人もいない。
呂勢太夫、藤蔵が古い譜(といっても五線譜ではないので、心もとない)を複数付き合わせて・・
と、プログラムにあった。
大序の始まりが、10時ということで、もとよりエライ方々の登場は無し。
若手による御簾内の演奏と、人形ということになる。
御簾内だと、みなさん油断されてるかもしれないけれど、結構見えるものです。
思いっきり変顔で弾いておられる三味線の方もいて(笑)面白かった!^^;
ここは、一応復活上演しました、というところが全て。
おそらくは次回からまたカットで上演されるのではないかな?
(また20年後ということになると、もう目にすることはできないかも・・)
「小松原の段」は、山の段の発端となる、
雛鳥・久我之助(こがのすけ)ラブロマンスの始まり部分。
二人とも一目ぼれしてしまうのは、なんの因果か・・・。
初々しく美しい二人の姿にうっとり。
前回文楽劇場に続いての久我之助・玉助さんと、こちらは初役雛鳥・簑紫郎さん。
今まで簑助さんの雛鳥にリードされていたのが、今回は後輩の雛鳥なので
自分がリードする立場、と先日伺った。
そんなふうに、人形の芸は伝わっていくのだなぁ、と改めて思う。
「蝦夷館の段」
これは、初めて観た時に結構衝撃で・・・
めどの方が可哀想でたまらなかったのを思い出す。
帝位簒奪の陰謀を企てた父を殺して、一瞬いい人?
と思わせる入鹿だったが、さにあらず。
妻も犠牲に、自分が帝位を乗っ取ろうとするわけで、
スケールの大きな悪人誕生の段。
口を語る亘太夫がしっかりとしてきた。
奥の三輪太夫も的確に語る。
人形では、殺されはするが、大悪人の蝦夷子(えみし)を遣う玉佳が、
スケール感たっぷりに遣う。
大判事清澄、この段からやっと玉男さん登場!
ここで休憩かと思いきや、もうちょっと続くので驚いた。
いや、トイレに立つ人続出。それはそうだ、話の切れ目はここでしょう・・・
しかしなぜか続いて二段目の「猿沢の池の段」まで。
ここでは、いいもの一派(帝、藤原鎌足、淡海、采女)が、
入鹿謀反の後、どうなっているかの現状説明。
初日から三日間、師匠の呂太夫の代演で、
二部の「金殿」を語ったという、希太夫が友之助さんと勤める。
休憩後、
「鹿殺しの段」から、いよいよ芝六の物語になっていく。
いろいろ奈良の伝説やら伝承やらを詰め込んだ物語で、
鹿を殺すのがご法度の奈良の御定法を踏まえた作り。
(落語の「鹿政談」がよぎる)
発端の「鹿殺し」の段は碩太夫・錦吾のフレッシュコンビ。
期待の新人、碩太夫^^
鹿は、入鹿誅伐に必要な、「爪黒(つまぐろ)の牝鹿」だ。
なんか、普通の可愛い鹿に見えてしまうのだが・・^^;
白い鹿とか、特別な感じに作った方がいいのでは?と思う。
「掛乞の段」は、帝一行が、芝六・お雉のあばら家に匿われている場面。
ビラビラ簪に緋の袴の官女たちが、木綿物に着替えるが、簪はそのままだったり、
米屋が掛け取りに来て、でてきたお公家さんとの頓珍漢なやりとりが楽しい。
悲劇が起こる前の喜劇の場。
睦太夫、寛太郎さんで、場内空気を軽くしてくれる。
続く「万歳の段」は、いよいよ盲目の帝が出てきて、
周囲はここを御所と偽っているので
帝が所望される雅楽の演奏を、万歳でごまかす(無理だろう!と突っ込みたくなるが。。)
この場は、端ながら帝がお出ましになる場ということで、
初演から重要な語りを勤める太夫がでているという。今回は織太夫、清志郎。
だんだんに悲劇へと物語は進んでいく。
「芝六忠義の段」
ここで、いよいよ咲太夫・燕三コンビ登場。
浄瑠璃のお約束、高貴のお方のための犠牲となって、
庶民の子供が死んでいく・・・という悲しいパターンだ。
この場合は、芝六・お雉の息子だが、
長男の三作は、お雉の連れ子で、芝六とは義理ある仲。
ということで、子は義父の役に立とうとして、鹿殺しを名乗って出る。
三作の処刑が迫る中、興福寺の鐘の音が響き渡る。
史実にはない興福寺の登場だが、そこは浄瑠璃の世界。
一種のパラレルワールド。
「石子詰の刑」という、むごたらしい刑に処せられようとする中、
三味線の幽玄とも思える音が響いていく。
芝六は抱いて寝ていた幼子の杉松をいきなり刺し殺す。
鎌足に偽の捕手を遣わされ試されたことに憤り、見の証をたてるためだった。
また、石子詰になるところを、掘った穴から蝦夷子が隠した神鏡と勾玉が出て、三作は助かる。
死を覚悟した三作は助かり、何も知らずにいた幼子の命が奪われてしまうという悲劇。。。
神鏡の出現で帝の目が開き、
現れた鎌足、采女とともに興福寺へ・・と、いい者一派の逆襲が始まる予感。
このあと、三段目「太宰館の段」では、
入鹿がすでに帝気取りで、太宰の後家定高と大判事に指図して、
無理難題を吹っかけている。
雛鳥を自分の内裏へ「入内」させ、久我之助は出仕させよ、という。
さあ、この難題をどうする?
この続きは二部へ・・・という流れ。
錦糸さんの三味線で、相変わらず必死の語りの靖太夫。
口元がとんでもないことになるから、頼む、手ぬぐい使って下さい!!
どちらかというと地味な段で終わるが、
巨悪の入鹿が馬に乗って見得を切る(歌舞伎だったら)幕切れ。
さあ、これからの二部への期待を繋いで一部は終了。

