◆義経千本桜
三段目切 すしやの段
太夫 竹本駒之助
三味線 鶴澤津賀寿
日本にただお一人の、
現役人間国宝の義太夫語りである、
竹本駒之助師匠。
この方の語りを聴く、素浄瑠璃の会も、
第十弾にして、最終回を迎えた(翌日の講演で終わる)
そして、この日もまた、
「すしや」を、たったお一人で語り切った。
時間にして、約一時間と45分ほど。
文楽公演ではありえない。
ブツブツと、三つくらいに切って、
リレー形式で語り継ぐ。
そういう形が当たり前だと思ってしまっていたが、
そんなことはごく近年のことで、
昔は、一段、一人で語り切るのは、当たり前のことだったようだ。
齢、八十をとうに過ぎた駒之助師。
体力的に、かなりキツいと思われるが、
いつもは語らぬ場面まで含めて、全く危なげなく、
シッカリと語り終えた。
そして、毎回確かな撥さばきで語りを支える
津賀寿師匠も、長丁場、弾ききられた。
ただただ感動、感銘だ。
お二人の肩衣が、
いがみの権太の衣装柄だったのも、嬉しい。
小柄な駒之助師匠から漲る気迫が、
聴くものに迫ってくるこのシリーズも、終了。
本当に残念だ。
素浄瑠璃というものの魅力が、
やっと分かりかけてきて、浄瑠璃初心者の私も、
すごしずつ楽しめるようになってきたところだった。
また、この会では、開演前に、浄瑠璃本の解説が付く。
そこで、浄瑠璃研究家の神津氏の、研究によるところの解説を聴けるのは、とても興味深かった。
今回は、実在する下市の寿司屋と、浄瑠璃本文の「すしや」との因果関係について述べられ、大変面白かった。
先祖が盗賊として描かれてきたわけで、文句も出ようというものかもしれない。
しかし、それによって以後改悪され、
すしやの主人、弥左衛門が、なぜ平家の維盛にそれほどまで肩入れするのか、が全く分からなくなってしまった。
以前、大きな誤りをはたらき、その後悔から、重盛の遺児、維盛家族を匿っている、
ということが分かれば、その性根がハッキリする。
現行のウヤムヤは、実在する寿司屋からのクレームから始まったもの、ということだった。
そのあたり、数冊の時代の違う浄瑠璃本文を比べた資料が配られ、かつその本はどういった性質のものかの説明も加えられ
、非常に理解の助けになった。
この会が終わっても、こうした浄瑠璃本の講演の機会があったら嬉しい、と思う。
長きにわたり、この公演を世に送り出して頂き、関係各位に感謝です。
そして、駒之助師匠のますますのご健康とご活躍を祈っております。
また、どこかで、聴く機会を見つけていきたいです。
ありがとうございました。
