柳亭市弥      一目上がり
桂吉坊       天神山
     仲入り
ゲスト 上方唄   松浪千壽
桂吉坊       そってん芝居


半年に一度の吉坊師の渋谷での独演会。いつも告知が遅くて、タイミング外して、行かれなかったという方も・・。もうちょっと早めにお願いします!
満席になってしかるべき会、ですから。(次回は、12月1日)

「天神山」は、東京では「安兵衛狐」。馬石師が寄席でよく掛ける。
上方版は、もうちょっと長くて、後半は芝居がかりのサゲに至る、というもの。
ただ、サゲが、取って付けた感じで、無理矢理「葛の葉子別れ」に・・。たしかに、狐といえば、「葛の葉」になるなぁ。
三十三間堂や葛の葉の子別れは、大人気狂言で、みんな知ってた話。そこに持って行く上方版の成立過程が興味深い。

「へんちきの源助」と「胴乱の安兵衛」という、ひょうきんな二つ名を持つ長屋の住人がそれぞれ、幽霊と狐をヨメにする、というストーリー。

ここで、聴き所は、「墓見」(幕見にあらず)に行った源助が墓を相手に冗舌に喋りながら酒を飲むところや、安兵衛が女房を授けて下されと、安井天神に願掛けしてベラベラと止まらず喋るところや、狐獲りの男相手の喋りなど、とにかく喋り倒す。

テンポ良くマシンガントークに及ぶ彼らこそ、上方落語の魅力の一つ。久しぶりに聴いたな、と思える快感だった。文句無しにおもろい!

珍しい上方唄のお師匠さんの、つややかな唄のあと、トリネタは、「そってん芝居」というもの。
「そってん」は、「剃っ天」または「剃ってん」か。髪結の男が、客の頭を剃りながら、凶器をもったまま、仕方話で芝居を始める、という物騒なもの(汗)
さらに後半は、東京でいう「蔵前駕篭」のストーリーになり、前半と後半との繋がりが取って付けたようだし、米朝師が発掘しながら実演に至らず、吉朝師は、一度やってはみたものの、お蔵入り・・という曰く付きのネタだという。

髪結の仕草をたっぷりと見せるところがあるため、吉坊師、芝居の床山さんに実演してもらい、髷を結う様を体験しようとしたのだが、まず、頭のてっぺんに錐を打ち込むのを見てしまい(汗)これはどんならんがな・・と、マクラから快調にスタート。

手を動かすよりも口の方が忙しい、という髪結の男、観て来たという芝居、忠臣蔵の二段目の仕方話に余念がない。
しかし、注文主の旦那は、伯父の見舞いに堺まで急いで出掛けるから、早く早く、と急かすのだが、どうにも芝居の噺が止まらない。(二段目、珍しいから、誰かに話したかったのかも・・)

桃井若狭之介は成駒屋、加古川本蔵は松嶋屋が付き合っているという。江戸時代を背景にしているが、おそらくここは、11代目仁左衛門と初代鴈治郎だろうか。(当代のお祖父さん)。成立した頃、または後代に入れたものかな。
「松切り」を、実際の髪結の道具を使ってやるのだから、旦那は堪らないが、この旦那も根が好きと見えて、このあとのの「鮒侍」の師直の台詞をついうっかりやってしまう(先代松緑の声色に聞こえた^^)

「遅い」と急かすのを受けて「遅なわりしはの不調法」と受ける髪結。もう、楽しいったらない!

ところが、そんなことして巧く結えるはずもなく、髷が顔の前にだらりと垂れ下がった状態(手ぬぐいを細長く丸めて下げる)。それでも、急ぐ旦那はその顔で、さらに追いはぎ除けに、肌着だけという格好で、辻駕篭を拾いにいく・・その様子の可笑しいこと!

あとは、「蔵前駕篭」と同じサゲで、追いはぎから「もう、済んだか」と言われておしまい。

このアホらしい噺、前半だけでもいいのかもしれない。大師匠や師匠から享け継いだ稀少なネタ。ぜひ、続けていってほしいものだ。