林家つる子   黄金の大黒
隅田川馬石   お若伊之助
橘家圓太郎   算段の平兵衛
     仲入り
柳家三語楼   畳水練
蜃気楼龍玉   札所の霊験



「圓朝に挑む!」という企画もの。7~8年も前から定期的に開かれていたようなのだが、今回初めて伺った。

この会の仕切り役、圓太郎師から、「
お若伊之助」は、みんな演るからNG、と言われたものの粘ったら、「他に珍しい噺が出たら」と条件付きでOKされ、三語楼師が珍しいのを掘り起こしてきてくれたおかげで、日の目を見ることになった、というネタ下し。

この日は、この一席に尽きる、と言いたくなるほどの高座。
演じたいという気が充溢した、見事なもので、客席はシーンと聴き入って、お辞儀と同時に馬石師の呪縛から解き放たれたように大きな拍手で包んだ。

もう少し長い噺だったような気がするのだが、余分なところを見事に刈り込んで、緻密な織物のように、隙間の無いしっかりとしたストーリーに仕上げてきた。
ちょっとしたことで気鬱になってしまうという、大店の娘らしいお若の気の弱さ。店を切り盛りしているというお若の母の気丈さ、勘の鋭さ。いちいちピッタリとはまり込んでいる。

さらに、右往左往する鳶のかしら、荻江節の浄瑠璃語りの伊之助、お若の伯父、すべての登場人物を生き生きと動かすことができるのは、さすがだ。

異類婚がモチーフになっているという、苦手な噺だったので、失礼ながらあまり期待していなかったのだが、いい意味でここまで裏切られるとは思わなかった。

問題の、
お若伊之助の色事にあまり比重を置かず、周辺の細かい部分を積み上げていったところが成功に結びついたのかもしれない、と思う。

鄙びた根岸の里の屋敷の縁先で、ハラハラと散る桜のはなびらを眺めながら、会えなくなった
伊之助を想い、ふと視線をさまよわせたところに、恋しいその人を見つけたお若。絵のような光景がしっかりと浮かんだ。

この後、圓太郎師お得意という「算段の平兵衛」(米朝師が掘り起こしたネタ)、珍しい「畳水練」を聴いても、どうも散漫な印象。

トリネタの「札所の霊験」(七兵衛殺し」は、さすが「殺しの龍玉」だったのだが、いかにせん、ストーリーが単純すぎて全く面白くないので、これは聴かせようとしても、ちょっと無理があったかな・・という印象。

お若伊之助」に大満足で、打ち出された。