濯ぎ川
  男     茂山あきら
  女     鈴木実
  姑     茂山千三郎
          後見  島田洋海


狂言解体SHOW!!   呼声(よびこえ)
  太郎冠者  茂山逸平
  主人    山下守之
  次郎冠者  井口竜也
          後見  鈴木実

(解説者)
 網本尚子(東京富士大学教授)
 土田英生(劇作家・演出家)
 茂山宗彦
          司会  茂山童司

       休憩

素袍落(すおうおとし)
  太郎冠者  茂山千五郎
  主人    茂山正邦
  伯父    茂山七五三
          後見  島田洋海



毎年、「お豆腐の和らい」では、型にはまらないどころか、大きく破った、面白い試みを見せてくれている茂山家。今年はなんと、演じられている狂言の舞台に、実況の解説がつき、演者は自在にストップを掛けられる、といった奇想天外な事態に・・

「濯ぎ川」は、新作ながら、よく演じられるもので、全く違和感がないし、人気曲だけあって、本当に面白い作品だ。千三郎さんの姑で観ることが増えているような気がする。腰を曲げた状態での演技が続くので、実際に年配の役者では辛そうだ。東京出身の鈴木さん、女役で故郷に錦。

そして、まるで野球放送のように実況解説の入った「呼声」。太郎冠者役の井口さん、試練の舞台になった。
まず最初に掛かった「ストップ」は、冒頭太郎冠者が名乗りを上げるところ。狂言では、膝をやや曲げて立つのだが、この軽い「空気椅子」状態で、解説者の遣り取りが続く間、耐えなければならない・・だんだんプルプル震えてくる・・
なぜ、ここで止められたか、というと、狂言ではごく当たり前の「名乗り」。これが現代劇の作・演出家の土田さんの腑に落ちないところだったようで・・
なぜ「名乗るのか」これに対して、宗彦さんが、自説を展開、当時の都市の人口からして、狂言師=近所のおっさんである可能性が高い。そのため、これは狂言なのだ、ということを分からせるためのもの、という。ふーん、と納得しかかったが、「ほんとですか?」と念を押され、「ウソです」とあっさり・・
このあとも、井口さんが扇を広げて手を上げたところで止められたり、と延々受難は続く。なかなか主役の太郎冠者が登場しない。解説の面白さにたまらず笑いそうになる太郎冠者・・
なんにせよ、解体しようとしても、600年もの時が横たわっているわけだから、それは難しい。今現在、プロによる商業ベースに乗った演劇の最古のものが能・狂言だ。たぶんに脱線しそうになる狂言師の解説?を引き戻す、大学教授。
舞台上では居留守を使う太郎冠者に、だんだん悪のりを始める主人と次郎冠者。平家節で呼んでみたり、小歌節、踊り節へとエスカレート。しまいに三人で唄い踊るという有様に・・
そこでも、容赦なくストップが掛かり、脚を宙に浮かせたままの体勢に、みんなバランスを崩しそうになるが、そこへ後見が悠然とやってきて、脚をしかるべき所に起き直して、また座に戻る。この後見にも質問は及び、舞台の全ての責任を負う人だ、ということで、今で言う演出家でもある、という。
なかなか面白い試みだったので、次回、こればかりのワークショップがあってもいいのかもしれないが、役者はいやがるでしょうねぇ・・

そして休憩後、千五郎師の「素袍落」。すばらしかったのは勿論なのだが、膝の調子が悪そうで、心配になった。昨年痛められたところがまだ本調子ではないのだろうか・・

終演後、ロビーで「本日の功労者」、井口さんを見かけたので、「どうも、お疲れさまでした!」と声をかけたら、「どうでしたか?お楽しみいただけましたか?」と聞かれ、とても面白かったと言ったら、満面の笑みで、「そう言っていただけたら、何よりです!」と、元気に答えてくれた。狂言が大好きでたまらない熱意がひしひしと感じられ、暖かい気持ちになって会場を後にした。