津島サトル(新生学園の生徒) 山崎育三郎
津島サトル(現在のサトル) 福井晶一
南枝里子(サトルの恋人・ヴァイオリン) 小川真奈
伊藤慧 (サトルの友人・フルート) 平方元基
鮎川千佳(枝里子の友人・ヴァイオリン) 増田有華
生田寛 (サトルの同級生・コントラバス)松岡卓弥
沢寛子 (サトルの同級生・ヴァイオリン)加藤雅美
合田隼人(サトルの先輩・ヴァイオリン) 石井一彰
戸田健一(サトルの先輩・チェロ) 輝馬
白井孝輔(サトルの同級生・ヴァイオリン)前山剛久
柳沢千秋(サトルの同級生・クラリネット)木内健人
浅葉知恵(サトルの同級生・ピアノ) 西岡優妃
吉岡妙子(サトルの同級生・ヴィオラ) 吉田萌美
久遠みつ子(新生学園・音楽教師) 金沢映子
金窪健史(新生学園・倫社教師) 加藤虎ノ介
北島礼子(新生学園・ピアノ教師) 田中麗奈
南トシ子(枝里子の母) 木の実ナナ
松野敏明(新生学園理事長・サトルの祖父)小野武彦
オーケストラ 東邦音楽大学管弦楽団
「船に乗れ!」は数年前に本屋大賞に入賞した名作が原作ということで、今回、原作を読んで予習して観劇に臨んだ。青春の挫折と人生の不条理、芸術家になることのたいへんな現実・・と重いテーマを追うが、「音楽」というテーマはなくとも、誰もが経験する人生の苦い味は、多くの人の心を打つものだと思う。
「交響劇」という耳慣れない副題が付いているが、オーケストラが、まさに「登場人物」の一画を担って、舞台正面に堂々と登場し、生の音楽を演奏しながら劇が進行する、という形をとっている。そして、クラシックの音楽を元にして、日本語の歌詞で歌う曲が作られ(宮川彬良)、登場人物の気持ちが高揚すると「歌」の場面になっていく。やはり、ミュージカルに近いかな?という印象。
以下、ネタバレ含みますので、知りたくない方は、この先は読まないで下さいね。
舞台上に、X形の白い通路状のものを作り、ここを行き来したり、段差を利用して腰掛けたり、といった使い方をしている。奥にはスクリーンが掛けられ、舞台背景にあたる景色を、モノトーンで表現している。
始まりは2010年。45歳になっているサトルがチェロを持って出てくる。そこから回想となり、1980年へ。「新生学園高校 音楽科」の生徒となった15歳のサトルが登場。同じクラスの仲間も出て、高校の授業シーンも出て来て、ここまではごく普通だが、彼らは「音楽科」。オーケストラが授業に組み込まれていて、オケの練習が始まる。
授業風景は、後ろのオケの席を暗くして、その前で芝居。10人ほどしか生徒がいないのはちょっと寂しい感じだけれど、舞台なんだからこれは仕方のないところか。倫社の金窪先生が出て来て、この物語のもう一つのテーマである「哲学」が語られる場面になる。「人生いかに生きるべきか」という、とんでもない問いが、のっけから出てくる。
この金窪先生(加藤虎ノ介)は、ひじょうに重要な役回りで、ある意味、主人公の人生に関わってくる存在。哲学好きのサトルと意気投合する先生は、自宅に遊びにくるように誘う。雑然とした狭い先生のアパートにビビるサトル。
オケのシーンは、曲に合わせて編成が変わり、人数が増えたり減ったりしながら進行していく。さすがにオケは聴かせてくれた。全く合わない、初めの「白鳥の湖」は、かえって難しかったのでは??と思える。なんといっても、三流音校のハチャメチャオケなのだから・・・(「桃が丘音大」のSオケみたいな・・)
楽器演奏については、もちろん「エアー」だけれど、ボウイングがちゃんとしているのには驚かされた。一人一人に、楽器担当のソリストがいて、各登場人物の演奏シーンでは、スポットライトを浴びて、ソリストが演奏するのだが、そのボウイングと合わせてきているのだ。哀しいかな、左手が止まっているのは、いたしかたない。(先日の「OPUS」と同じ)
ことに、サトルの恋人役の南枝里子(小川真奈)は、演奏シーンが多く、大変だったと思う。この努力は素晴らしい。
そして、歌についてだけれど、なんといっても45歳のサトルを演じる福井晶一さんの歌唱の素晴らしさが際立っていた。ミュージカルをあまり観ていないので、初めて拝見したのだが、演技にも深みがあり、伸びやかで美しいバリトンの声といい、たいへん魅力的なミュージカル俳優さんだ、と認識を新たにした。日本で、これだけ歌える方がいるのか、という思いだ。
彼の存在が、ぐっと作品のクオリティを上げてくれていた、というのは、その他のキャストの歌が、お世辞にも素晴らしいとは言いがたかったから。マイクを頭から口元に回して、オケに負けない音量を出そうとしているせいか、絶叫型の歌い方が多く、もう少し歌の訓練をきちんとしたキャストだったら、また違った味わいもあったかもしれない(主人公の山崎育三郎は別として)
これは、キャスティングで予想がつくことで、楽曲(宮川彬良)が素晴らしいものが多かっただけに、ちょっと残念だ。本格ミュージカル俳優器用で作ったら、作品のグレードはもっと上がるんだろうなぁ、などと妄想。妄想に拍車がかかり、ピアノの北島先生も、田中麗奈(美しくて、演技はとても良かった)ではなく、松下奈緒にして、ピアノの生演奏だったら・・とか。いや、そんなにグレードアップを望んだら、ギャラはとめどなくアップして、1万円では観ることは不可能になってしまうか(汗)
と、いろんなことを思いながら舞台を見つめているうち、物語は進行して、少年少女の恋も進行して行くのだが、「音楽家」を目指す彼らは、恋人であってもライバルである、という哀しい現実がある。
サトルのドイツ短期留学が決まり、枝里子に打ち明ける場面で、枝里子はハッキリと告げる。「サトルよりもあたしのほうが才能ある!なのになんでサトルは行かれて、アタシは行かれないの?」
ここから二人の関係も、枝里子の人生も、サトルの人生も狂っていく。
この枝里子のひと言は原作にあって、このひと言が切り捨てられずに採られたことは、脚本家(鈴木哲也)が原作を重視しているのが分かるし、よくぞ入れてくれました、という思いだ。すべての芸術家(になろうとしている人も含めて)同士は、恋人になることは難しい、のだろうなぁ・・
枝里子は妊娠、結婚、出産という予定外の人生を辿ることになり、サトルもドイツで己の限界にぶち当たり、枝里子のことが追い打ちをかけ、ある人物にとんでもない八つ当たりをしてしまう。
「言うな、言うな!」と、45歳のサトルが静止する中、とんでもないことを言ってしまい、そのひと言で学校を追われることになる教師が金窪先生だ。あれほど意気投合して、哲学を語り合っていたというのに。
ところが、そんな酷いことをしたあとも、青春まっさかりのサトルは相変わらず音楽漬けの日々を送り、北島先生とデュオの仕事をしたりしている。
しかし、だんだん音楽を職業にすることの途方もなさが見えてきて、ついに音楽を辞めようと決意するが、学校生活は平静を装って、今まで以上にオケにも身を入れている。
そして最後の文化祭、オケの演奏、三年生の演奏を迎えるが、そこで思いもよらぬことが起こる。音楽が創り上げた奇跡。
もう一つ、サトルには卒業前にしておくことがあった。金窪先生への謝罪だ。一度行ったことのあるアパートに訪ねて行く。もちろん、失業した先生は、サトルを赦そうとはしない。しかし、この言葉を贈って、彼の謝罪を受け入れようとする。
「船に乗れ!(中略)
船酔いは苦しい。波がおさまってくれないかな、と思う。だが波はおさまらない。(中略)誰がなんといおうと船酔いが軽くなったからといって、船が揺れ続けているということを忘れてはいけない」
静かに語る加藤虎ノ介さんの長台詞が、観ている全ての人に語りかけてくる。さすがに、この役はこの人でしょう。最後に、台詞で舞台を締めてくれた。
オーケストラは最後に、「ハフナー」。フル編成で締めくくった。
カーテンコールで、最後にもう一度全員が現れ、一列に並んで歌って幕(は、ないけど)。この歌うシーンで、台詞のみだったキャストも歌っていた人がいたのが微笑ましかった。
以上、この日は天井桟敷3階席からの観劇。遠かったので一度に舞台が観られた。双眼鏡使用で細かい所はなんとか・・。
次回、千秋楽は1階席前方。また違った視点で観られるかもしれない。
津島サトル(現在のサトル) 福井晶一
南枝里子(サトルの恋人・ヴァイオリン) 小川真奈
伊藤慧 (サトルの友人・フルート) 平方元基
鮎川千佳(枝里子の友人・ヴァイオリン) 増田有華
生田寛 (サトルの同級生・コントラバス)松岡卓弥
沢寛子 (サトルの同級生・ヴァイオリン)加藤雅美
合田隼人(サトルの先輩・ヴァイオリン) 石井一彰
戸田健一(サトルの先輩・チェロ) 輝馬
白井孝輔(サトルの同級生・ヴァイオリン)前山剛久
柳沢千秋(サトルの同級生・クラリネット)木内健人
浅葉知恵(サトルの同級生・ピアノ) 西岡優妃
吉岡妙子(サトルの同級生・ヴィオラ) 吉田萌美
久遠みつ子(新生学園・音楽教師) 金沢映子
金窪健史(新生学園・倫社教師) 加藤虎ノ介
北島礼子(新生学園・ピアノ教師) 田中麗奈
南トシ子(枝里子の母) 木の実ナナ
松野敏明(新生学園理事長・サトルの祖父)小野武彦
オーケストラ 東邦音楽大学管弦楽団
「船に乗れ!」は数年前に本屋大賞に入賞した名作が原作ということで、今回、原作を読んで予習して観劇に臨んだ。青春の挫折と人生の不条理、芸術家になることのたいへんな現実・・と重いテーマを追うが、「音楽」というテーマはなくとも、誰もが経験する人生の苦い味は、多くの人の心を打つものだと思う。
「交響劇」という耳慣れない副題が付いているが、オーケストラが、まさに「登場人物」の一画を担って、舞台正面に堂々と登場し、生の音楽を演奏しながら劇が進行する、という形をとっている。そして、クラシックの音楽を元にして、日本語の歌詞で歌う曲が作られ(宮川彬良)、登場人物の気持ちが高揚すると「歌」の場面になっていく。やはり、ミュージカルに近いかな?という印象。
以下、ネタバレ含みますので、知りたくない方は、この先は読まないで下さいね。
舞台上に、X形の白い通路状のものを作り、ここを行き来したり、段差を利用して腰掛けたり、といった使い方をしている。奥にはスクリーンが掛けられ、舞台背景にあたる景色を、モノトーンで表現している。
始まりは2010年。45歳になっているサトルがチェロを持って出てくる。そこから回想となり、1980年へ。「新生学園高校 音楽科」の生徒となった15歳のサトルが登場。同じクラスの仲間も出て、高校の授業シーンも出て来て、ここまではごく普通だが、彼らは「音楽科」。オーケストラが授業に組み込まれていて、オケの練習が始まる。
授業風景は、後ろのオケの席を暗くして、その前で芝居。10人ほどしか生徒がいないのはちょっと寂しい感じだけれど、舞台なんだからこれは仕方のないところか。倫社の金窪先生が出て来て、この物語のもう一つのテーマである「哲学」が語られる場面になる。「人生いかに生きるべきか」という、とんでもない問いが、のっけから出てくる。
この金窪先生(加藤虎ノ介)は、ひじょうに重要な役回りで、ある意味、主人公の人生に関わってくる存在。哲学好きのサトルと意気投合する先生は、自宅に遊びにくるように誘う。雑然とした狭い先生のアパートにビビるサトル。
オケのシーンは、曲に合わせて編成が変わり、人数が増えたり減ったりしながら進行していく。さすがにオケは聴かせてくれた。全く合わない、初めの「白鳥の湖」は、かえって難しかったのでは??と思える。なんといっても、三流音校のハチャメチャオケなのだから・・・(「桃が丘音大」のSオケみたいな・・)
楽器演奏については、もちろん「エアー」だけれど、ボウイングがちゃんとしているのには驚かされた。一人一人に、楽器担当のソリストがいて、各登場人物の演奏シーンでは、スポットライトを浴びて、ソリストが演奏するのだが、そのボウイングと合わせてきているのだ。哀しいかな、左手が止まっているのは、いたしかたない。(先日の「OPUS」と同じ)
ことに、サトルの恋人役の南枝里子(小川真奈)は、演奏シーンが多く、大変だったと思う。この努力は素晴らしい。
そして、歌についてだけれど、なんといっても45歳のサトルを演じる福井晶一さんの歌唱の素晴らしさが際立っていた。ミュージカルをあまり観ていないので、初めて拝見したのだが、演技にも深みがあり、伸びやかで美しいバリトンの声といい、たいへん魅力的なミュージカル俳優さんだ、と認識を新たにした。日本で、これだけ歌える方がいるのか、という思いだ。
彼の存在が、ぐっと作品のクオリティを上げてくれていた、というのは、その他のキャストの歌が、お世辞にも素晴らしいとは言いがたかったから。マイクを頭から口元に回して、オケに負けない音量を出そうとしているせいか、絶叫型の歌い方が多く、もう少し歌の訓練をきちんとしたキャストだったら、また違った味わいもあったかもしれない(主人公の山崎育三郎は別として)
これは、キャスティングで予想がつくことで、楽曲(宮川彬良)が素晴らしいものが多かっただけに、ちょっと残念だ。本格ミュージカル俳優器用で作ったら、作品のグレードはもっと上がるんだろうなぁ、などと妄想。妄想に拍車がかかり、ピアノの北島先生も、田中麗奈(美しくて、演技はとても良かった)ではなく、松下奈緒にして、ピアノの生演奏だったら・・とか。いや、そんなにグレードアップを望んだら、ギャラはとめどなくアップして、1万円では観ることは不可能になってしまうか(汗)
と、いろんなことを思いながら舞台を見つめているうち、物語は進行して、少年少女の恋も進行して行くのだが、「音楽家」を目指す彼らは、恋人であってもライバルである、という哀しい現実がある。
サトルのドイツ短期留学が決まり、枝里子に打ち明ける場面で、枝里子はハッキリと告げる。「サトルよりもあたしのほうが才能ある!なのになんでサトルは行かれて、アタシは行かれないの?」
ここから二人の関係も、枝里子の人生も、サトルの人生も狂っていく。
この枝里子のひと言は原作にあって、このひと言が切り捨てられずに採られたことは、脚本家(鈴木哲也)が原作を重視しているのが分かるし、よくぞ入れてくれました、という思いだ。すべての芸術家(になろうとしている人も含めて)同士は、恋人になることは難しい、のだろうなぁ・・
枝里子は妊娠、結婚、出産という予定外の人生を辿ることになり、サトルもドイツで己の限界にぶち当たり、枝里子のことが追い打ちをかけ、ある人物にとんでもない八つ当たりをしてしまう。
「言うな、言うな!」と、45歳のサトルが静止する中、とんでもないことを言ってしまい、そのひと言で学校を追われることになる教師が金窪先生だ。あれほど意気投合して、哲学を語り合っていたというのに。
ところが、そんな酷いことをしたあとも、青春まっさかりのサトルは相変わらず音楽漬けの日々を送り、北島先生とデュオの仕事をしたりしている。
しかし、だんだん音楽を職業にすることの途方もなさが見えてきて、ついに音楽を辞めようと決意するが、学校生活は平静を装って、今まで以上にオケにも身を入れている。
そして最後の文化祭、オケの演奏、三年生の演奏を迎えるが、そこで思いもよらぬことが起こる。音楽が創り上げた奇跡。
もう一つ、サトルには卒業前にしておくことがあった。金窪先生への謝罪だ。一度行ったことのあるアパートに訪ねて行く。もちろん、失業した先生は、サトルを赦そうとはしない。しかし、この言葉を贈って、彼の謝罪を受け入れようとする。
「船に乗れ!(中略)
船酔いは苦しい。波がおさまってくれないかな、と思う。だが波はおさまらない。(中略)誰がなんといおうと船酔いが軽くなったからといって、船が揺れ続けているということを忘れてはいけない」
静かに語る加藤虎ノ介さんの長台詞が、観ている全ての人に語りかけてくる。さすがに、この役はこの人でしょう。最後に、台詞で舞台を締めてくれた。
オーケストラは最後に、「ハフナー」。フル編成で締めくくった。
カーテンコールで、最後にもう一度全員が現れ、一列に並んで歌って幕(は、ないけど)。この歌うシーンで、台詞のみだったキャストも歌っていた人がいたのが微笑ましかった。
以上、この日は天井桟敷3階席からの観劇。遠かったので一度に舞台が観られた。双眼鏡使用で細かい所はなんとか・・。
次回、千秋楽は1階席前方。また違った視点で観られるかもしれない。