子(ね)の日
     公卿    茂山逸平
     娘     茂山千三郎    
            後見   島田洋海

不聞座頭 (きかずざとう)
     主人    茂山千五郎
     太郎冠者  茂山童司
     菊市    茂山宗彦
            後見   井口竜也

     休憩

狐塚
     主人    茂山七五三
     太郎冠者  茂山千三郎
     次郎冠者  茂山正邦
            後見   島田洋海


二日続きの秋の茂山狂言会、この日は、珍しい曲が並んだ。

「子の日」は初めて。幕末のころ、冷泉為理が九世千五郎のために作ったそうだ。初子の日に、古の大宮人が小松を引いて、千年の長寿を祈願した遊びから来ているという。
いかにもおおどかな気分が漂う曲に、また公卿役の逸平さんが、ピタリとはまった。謡の声といい、調子といい、素晴らしい。座って笑みを浮かべている姿は、まさに内裏雛のよう。このところ、茂山家の公卿役は、逸平さんにとどめを刺す。
「子の日して心を寄する姫子松」と歌いかけた手弱女が、実はとんだ醜女で・・というお約束。さっと気を変えて、「ひとたびは手に引き取りし姫子松見捨て顔にぞ打掛くる雪」と詠んで、雪を顔にぶつけて去って行く、というひどい話だが、女は松の千年の色は雪のうちに探しにいくというから、これはめでたい、と喜ぶ。やけにポジティブな女。
めでたしめでたし、という曲だった。

そして、レア中のレア、「不聞座頭」。公演後、演者のツイッターに、「今後10年は出ない」とか、「本意じゃありません、あくまでも古典です」などと出ていた。
聾者と盲人とが、互いに相手の弱点をついていく、という曲で、これは、ちょっと現代人には笑えるものではないのだけれど、宗彦さんと童司さんの、小学生レベルのなぶり合いのおかし味で、やや救われた感があった。

「狐塚」は以前にも見ている。ああ、お酒、勿体ない・・という曲。
田の群鳥を追い払うように命じられた太郎冠者と次郎冠者。鳴子をもって出掛けていき、一心に追い払ううちにはや日暮れとなる。夜は冷える・・と震えていたところ、主人が酒を持って陣中見舞いに来るのだが、二人は狐塚から狐が来たと思い込み、せっかくの大杯の酒を主人の隙を見てこぼして返し、全く呑まない。最後にまことの主人と知れて、怒られて追いかけられる。

終演後、宗彦さんがロビーでサインに応じていたので、友人とともに「ちりとてちん見てます」「今日は小浜の寿限無でした」などと話して、嬉しそうだった。
考えてみたら、「小浜の寿限無」では、小草若が大しくじりをして最後に喜代美から追い出される、というのは、まさに狂言ではないか?小草若役の宗彦さんにぴったりだったはずだ。