6月の上旬だったかな。monが学校から帰ると興奮気味に、私にこう言いました。
「ねぇ、おかあさん。こんどのにちようび、ルルちゃんと、がくしゅうせんたーであそぶんだけど、いい?」
ルルちゃん(仮名)は、monの一番の仲良し。
いいか?って聞かれても、今日金曜日じゃん…。ダメって言ったら、どーすんのさ…。
正直にぶっちゃければ、日曜日は家族で出かけたりしたいので、お友達と遊ぶのはご遠慮願いたいところなんだけど、monが生まれて初めて自分でお友達としてきた約束をつぶしたくないな、って思ったのよね。
「おかあさんは構わないけど、お父さんが帰ってきたら、お父さんにも聞いてみてね。あと、日曜日はお出かけするときもあるから、日曜日にお友達と遊びたい時は、水曜日か木曜日にはお家の都合を聞くようにしてね。ルルちゃんちでも予定があるかも知れないでしょ。」
多分、幼稚園に行っているお子さんと違って、保育園の子は「お友達と個人的に遊ぶ」という経験が、すごく少ないと思うのね。うちなんかフルタイムだもの、朝早く出て、夕方遅くに帰ってくる。ご近所にお友達もいないし、子ども同士が行き来するっていうのは、monみたいな子にとってはまったく経験のないことで。こういうのは、すごく良い経験になると思ったんです。
「ところで、何時に約束してるの?」
「なんじ?…きめてないけど…。」
おいおいおい。
帰ってきた夫と相談して、親が口出すのはどーかとも思ったけど、どちらかが待ちぼうけになっては可哀想なので、相手の親御さんにお電話をさせてもらうことにしました。
やっぱり、ルルちゃんのお家でも、普段はお仕事をされているので、週末は家族で過ごしたいとのこと。ルルちゃんは「行っても行かなくてもいいの。」と言っていたらしい。
ルルちゃんのお母さんと相談して、
「学校が早く終わる火曜日か木曜日にすること。」
「今日の明日、ではなく、前もって家の人に都合を聞いておくこと。」
ということにし、monの人生初の「やくそく」は延期となってしまいました。
その後、お互いの都合が合わなかったり、学習センターが臨時休館だったりと、何度か約束がなかなか成立せず、だいぶ過ぎてから、やっとのことで、暑い、暑い日に約束の場所へと駆けだしていくことができました。(結局、帰ってきて「きょういってもいい?」だったけどね。)
やっと叶った約束の日、2人は学習センターで一緒に宿題をやって、本を読み、帰りには自分の図書カードで、本を借りて約束の時間までに帰ってきました。
昨日は終業式。
ルルちゃんと、夏休みに遊んだりしないのかな?と思っていたら、帰ってきたmonがこう切り出したのです。
「おかあさん。ルルちゃん、てんこうしちゃうんだって。」
私はびっくりして、
「ええ?」と聞き返すと、
「なんかね、きゅうにきまって、きのうのよるせんせいのところにでんわしたんだって。とおくにすんでるおばあちゃんのところのがっこうにいくことになったんだって。このまえてんこうした○○くんはおわかれかいしたけど、ルルちゃんにはできないから、にがっきになってからみんなでおてがみかきましょうって、せんせいがいってたの。」
ルルちゃんは、monの一番の仲良しで、遠足の時にも一緒にお弁当食べたの。
いつも、monの口から出てくる学校の楽しかったお話には、いつもルルちゃんが出てきたんだよね。
ルルちゃんはmonにお手紙をくれて、その中には「ごめんね」と「ありがとう」がいっぱい書かれていました。
最後には涙マーク。
「あしたね、ルルちゃんとおひるたべたあとに、がくしゅうせんたーであそうぼうっていっていたんだけど、いい?」
こいつは…、また「今日の明日」だよ。
でもねー、反対するわけないでしょう。
monはルルちゃんに書いたお手紙と図書カードを持って、出かけていきました。
monの通う学校では、震災の影響で、避難してきている子どももいるし、逆に放射能の不安から遠くへと避難していく子どももいます。
monのクラスでも、4月から、3人のお子さんが転校していきました。
それぞれの事情はわからないけれど、お友達が遠くへ行ってしまう、という時に、「県外避難なのかなぁ…。」と考えざるを得ない今の状況が悲しくもあります。
震災も放射能も関係ないのかも知れないんだけどね。
monがルルちゃんに宛てた手紙にはルルちゃんへの「ありがとう」の言葉と、最後は「さようなら」ではなく「またね」で結んでありました。
初めての仲良し。
初めての約束。
初めてのお別れ。
monはまだ子どもだから、その本当の意味はわかっていないようだけど。
仲良くしてくれたお友達とのサヨナラはお母さんも切ないです。
ルルちゃん、ありがとね。
元気でね。