西村ひろゆき氏の論破のテクニックを分析したみた | ブログ

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2ちゃんねる初代管理者として有名な西村ひろゆき氏は、検索すると「ひろゆき 論破」と検索サジェストがでるくらい、議論が得意なようです。

そこで、今回は、ひろゆき氏の論破のテクニックを分析してみました。

まず、とりあげる素材は、こちら
ひろゆきさん、どうして「今の日本では“フェミニズム”って言葉を使わないほうがいい」のですか?

この対談の中で、次のようなやりとりがあります。

「髙崎:まさにそういう「選択肢の少なさ」が、日本の女性の生きづらさのひとつだと思います。西村さんは、日本は女性にとって生きづらい国だと思いますか?」
「西村:うーん。「自由に働けることが良いことである」という価値観でいくとそうなんですけど、別の基準で考えると一概にそうとは言えないんですよね。
たとえば、日本は男女の寿命の差が7歳くらいあって、フランスに比べても大きい。 もし奥さんが先に亡くなったら、日本人の男性は大体3年以内に死ぬって話もあります。 男性の方が受けているストレスが強いとか、生活力が低いとかの理由が考えられますが、「健康で長生きした方が幸せ」という基準で見たら、日本の男性の方がかわいそう、という状況にもなりうるわけで。 「健康で長生きした方が幸せ」という基準で見たら、日本の男性の方がかわいそう、という状況にもなりうるわけで。」


ここでは、ひろゆき氏が使っているテクニックがいくつかあります。
まず、対談のテーマがフェミニズムとなっていて、職業や生き方における女性の選択肢の少なさについての質問なのですが、そのこと自体は否定しようがないのか、ひろゆき氏も同意はします。しかし、続けて、平均寿命という質問の趣旨とは関係のないことを持ち出してきます。


これは、Burying bad newsの応用です。Burying bad newsは、直訳すると「悪いニュースを埋める」ということですが、英語版wikiでは、メディアがあるニュースに注目している間に政府が悪いニュースを発表して、悪いニュースを目立たなくする、とされています。ひろゆき氏は、平均寿命の話を持ち出すことによって、女性の選択肢の少なさ、というインタビューアの設定したテーマを埋没させることに成功しています。

 

また、関連のない話をすることは、質問を無視することによる質問回避Evasionというテクニックであるとも言えます。一応、なにか話しているので回答拒否ということではないのですが、テーマについて実質的に話すことを拒否している対応です。

で、ひろゆき氏の凄い点は、話している内容にもテクニックを駆使しているところです。
ひろゆき氏は、日本の男女の平均寿命の差とフランスの男女の平均寿命の差を指摘した上で、日本の男性の方がかわいそうじゃないか、という結論を導き出しています。

まず、なんらかのデータを持ち出すと、それだけで説得力がつきます。どんなに素晴らしい主張でも、事実の前には無力ですからね。これも主張に説得力を持たせるテクニックです。
しかし、ここで、ひろゆき氏って、やっぱりすげぇって思ってはいけませんw。データや事実といったなんらかの根拠を伴う主張は、そのデータや根拠となる事実を確認する必要があります。

では、平均寿命について確認してみましょう。世界の平均寿命ランキング・男女国別順位、WHO 2018年版


調べる年度で多少の差はあるでしょうけど、確かに、日本人男女の平均寿命の差の方が、フランス人男女の平均寿命の差よりも大きいですね。しかし、だからといって、ひろゆき氏が主張するように、日本人男性の方がかわいそう、といえるのでしょうか? 

 

確かに、日本人男性の平均寿命は、日本人女性よりも短いのですが、それでも世界第2位となっていて、ひろゆき氏がもちだしたフランス人男性の平均寿命よりも、1歳長いのです。フランス人男性は、フランス人女性との平均寿命との差が小さいからかわいそうじゃないというひろゆき氏の前提があるのですが、そのかわいそうでないはずのフランス人男性よりも平均寿命が長い日本人男性がかわいそう、というのは、おかしいですよね。

ここでひろゆき氏がつかっているのは、Cherry picking日本語でいう、「いいとこ取り」ですね。平均寿命で日本人の男女の差が大きいことだけに着目して、絶対値で日本人男性が世界第2位でフランス人男性よりも平均寿命が長い、ということを無視して、日本人男性がかわいそう、というひろゆき氏の主張の根拠として使っています。

ちなみに、日本人男女の平均寿命の差がフランス人男女の平均寿命の差よりも大きいことは、日本人男女の喫煙率の差が、フランス人男女の喫煙率の差よりも大きい、ということで十分に説明がつくのではないでしょうか? 

https://memorva.jp/ranking/unfpa/who_whs_tobacco_smoking.php

また、この対談では、別のデータも持ち出しています。


西村:あと、日本の男性には「生まれ変わったら女になりたい」っていう人、そこそこ多いと思うんですよね。

ひろゆき氏が「思う」と推測で言っているので、データの引用ではないのかもしれませんが、これについても確認してみましょう。
もういちど生まれかわるとしたら、あなたは男と女の、どちらに、生れてきたいと思いますか? 国民性調査

この調査では、男性が女性に生まれ変わりたいと回答しているのが、約6%です。これをひろゆき氏は、そこそこ多いと思う と述べています。「思う」のは主観ですから、なんと言っても構わないでしょう。そして、男性が女性に生まれ変わりたい人は多い、という印象を与えることに成功しています。

 

しかし、この調査で女性が男性に生まれ変わりたいと回答しているのは23%ですから、男性で女性に生まれ変わりたい人の割合6%という数字を多いと形容するのはいかがでしょうかねぇ。テクニック的には、なにかの調査を根拠にして自分の主張に説得力を与えているのですが、その調査が示唆することとは関係なく、ただ、根拠がある、と主張しているだけで説得力に効果があるのです。

もう一つ別の調査
if…。生まれ変わったら、男?女? 調査方法 インターネットによるアンケート調査 調査期間 2016年3月11日(金)~3月15日(火)
で、こちらの調査では、女性が男性に生まれ変わりたい22.5%、男性が女性に生まれ変わりたい19.9%と国民性調査とはかなり違う傾向の数値がでています。ただ、男性が女性に生まれ変わりたいよりも女性が男性に生まれ変わりたい、の方が数値としてはやはり大きくなっています。ただ、この調査からは、男性が女性に生まれ変わりたい、と答える男性がそこそこ多い、というひろゆき氏の主張もまんざら嘘ではないようです。しかし、男性が女性に生まれ変わりたい、とする理由として、

「経験してみたいから」が34.5%と最も多く、「オシャレしたいから」が8.6%、「チヤホヤされたいから」が6.9%、「楽しいことが多そうだから」と「得することが多いから」がともに6.0%と続きました。他には「子育てや家事をしたいから」や「仕事の負担が少なそうだから」などが挙がりました。

となっており、ひろゆき氏が挙げたような理由(うーん、女性は顔がある程度かわいければ、そこそこまともな結婚ができて一生食いっぱぐれない。)に該当するような理由(チヤホヤ~、得することが多いから、仕事の負担が少ないから)は、少数派となっています。

 

ひろゆき氏の主張では、多数派であるかのような印象を与えていますから、これは、Faulty generalization (誤った一般化)というテクニックになります。

ただ、ひろゆき氏は、あくまで「思う」っていう主観を土台に語っているだけって、逃げ道を用意してあります。なにを根拠に語っているのか不明ですが、こういう検証できない根拠を元に自分の思うような結論を導くのもテクニックなんです。

ちなみにひろゆき氏の、世の中に「女って楽じゃん」と思っている男性が一定数は存在する、と指摘していること自体は、ネット調査の点からは、妥当なことを述べていて、ここについてひろゆき氏が非難されていることを不当だと主張しています。
読解力の無い人が多数派の時代なのかな。
ひろゆき氏の切り取りだけみれば、ひろゆき氏のいう通りのようにも思えるのですが、


「ただ母親を見ているので、「そうは言っても女の人の方がラクだよね」ってのはどこかにある。」

 

と現在形で「女の人の方がラク」と語っていたりするから、同一視されるような根拠をひろゆき氏も提供しているんですよね。


ここで、なぜ「専業主婦とか主夫ってラクだよね」ではなく、現在形で「女の人ほう方がラク」になるのか? 男の立場から言えば、ホストを持ち出されて、「男ってラクでいいよねぇ」って言われているのと同じことです。

 

この辺りに、ひろゆき氏自身も、絶対的に男女をフラットに考えることができない部分が垣間見えてしまうのです。(どこかにある、というのは、限定化した言い方なので、全部そう思っている訳じゃない、子供の頃の感想の名残というのもわかりますけど)


もうちょっと、ひろゆき氏のテクニックを見ていきましょう。次の題材は、こちら。他者に敬意を払わない集団とフェミニストの先鋭化

「欧州やアメリカでの差別とは何か?」という知識が本当にあるのか? という確認をしてみたのですね。
「イギリスもEquality Act 2010という法によって、人種、民族、性別による差別を禁止しています。
つまり、「アファーマティブ・アクション」自体は差別だよね、、という認識なのです。
そして、アメリカの「アファマーティブ・アクション」も性別による差はなく、人種による差しか認めていません。」


海外の事情を持ち出すっていうのは、反論がなかなか難しいですね。日本語の主張根拠について、根拠を確認する、という人も割合としてはあんまり多くないような気がしますが、これが海外となると更に、ハードルが高くなりますね。さすが、留学経験があって、フランス在住者は、言うことが違いますね。

でも、検証すると、ここでもやってることは、一部を全体のようであるかに見せかけることと、元の根拠とは全く関係のない主張をするっていうテクニックです。

まず、フランスについて検証しましょう。

「フランスは、人種、宗教、性別による差別を憲法で禁止している」ところまでは正しい。実際に、アファーマティブアクションについても導入が検討されたことがありますが、歴史的には、憲法改正までには至らず導入されてきませんでした。しかし、フランスでは長い議論の末に、女性役員登用を40%にすることを義務化しており、アファーマティブアクションが全くない訳ではありません。


また、EUでは、女性役員のクオータ制導入を検討していますが、この点も無視するようです。

イギリスについての検証
「イギリスもEquality Act 2010という法によって、人種、民族、性別による差別を禁止しています。
つまり、「アファーマティブ・アクション」自体は差別だよね、、という認識なのです。」

というのも基本的には、その通りですが、例外があります。

・Equality Act 2010 159条は、雇用者が、雇用又は昇進の際に、保護対象の属性(人種、性別、年齢等)を持つ職の応募者や従業員を、その職種について同様に適性を持つが保護対象の属性を持たない者より優遇することを容認する。
・    北アイルランド和平プロセスの一環として、ベルファスト合意とそれに基づくパッテン報告により、北アイルランド警察の採用は、プロテスタント寄りのあらゆるバイアスを減らすために、50%をカソリックコミュニティから採用し、50%をプロテスタントとその他のコミュニティから採用することになっている。
・    Sex Discrimination (Election Candidates) Act 2002は、より多くの女性立候補者を選ぶために全て女性の候補者名簿作成を容認する。

https://en.wikipedia.org/wiki/Affirmative_action#United_Kingdom

アメリカについては。
「アメリカの「アファマーティブ・アクション」も性別による差はなく、人種による差しか認めていません。」
ひろゆき氏のいうというアファーマティブアクションが具体的にどのような措置をさすのか不明だが、クォータ制でも歴史的には女性を対象とした措置もあった、Penn/Stump v. City of Oakland, 1967。最近は、アファーマティブアクションといってもクォータ制ではなく、平等を促進するような措置を意味するようになってきているし、特定の層(女性等)についてのアファーマティブアクションを禁止する州もある(1996 California Proposition 209)。こういうトレンドになったのは、多様性は達成したから、もはや特定の属性を持つ人に対する優遇をする必要がない、と考える人が増えたというのも大きくなっています。https://en.wikipedia.org/wiki/Affirmative_action_in_the_United_States

そういう事情を全く説明することなく、女性への優遇措置自体がアメリカにはない、というのも一部を誇張した主張Faulty generalization (誤った一般化)になります。

ひろゆき氏は、男女平等というのは、性別による差を無くすこと 、と主張しているのだが、ここで主張しているのが、男性専用列車を作れ、と、レディスデー云々。現状で、女性が不利益を被っているのではないか?という現状についてのアプローチは全くありません。

 

レディスデーも検証としては題材にはなるかとは思いますが、正直言って、それほど目くじら立てるほどのことでしょうか。


こういうどうでもいいことを標的に攻撃して本質から目を反らすのは、わら人形論法といいます。

なお、男性専用車がないなら、男性痴漢被害はどうするんだ? っていう主張のようですが、男性の場合は、男性→男性 の痴漢も問題だから、自分は乗りたくなぁ。発展場を望む人とか、痴漢えん罪防止には、いいかなぁ、とは思いますけど。.