著者:片岡義男
発行:左右社 / 2011年7月 / 単行本
ジャンル:短編小説
<目次>
アイス・キャンディに西瓜そしてココア
追憶の紙焼き
髪はいつもうしろに束ねる
万能のティー・スプーン
鯛焼きの孤独
赤いスカートの一昨日
木曜日を左に曲がる
あとがき
この作品の中で気に入ったのは、詩が収録されていることです。
赤いスカートの一昨日、という作品の中に登場します。
片岡氏の詩はまさに、言葉の連続というか羅列です。
それをどう読むかは、読者の想像力次第。
その他、気になった個所のご紹介です。
「確かに嫌な言葉ね。嫌というよりも、貧しい言葉ね。(中略)」
「自分の乏しい体験や、あるかなきかの貧しい知識に照合させて、都合良く照合されるものが自分のなかにないと、それはその人にとって、ピンとこない、ということになる。」
「排除の言葉ね。」(「万能のティー・スプーン」より/98頁)
片岡氏の作品に登場する「コーヒー」はいつもエスプレッソでした。
それがいつか、深煎りのコーヒーという表現となり、
ついには、スター・バックスやドトールまでもが作品に登場してしまいました。
喫茶店というものは存在しても、言葉自体がほぼ死滅した今、
氏が作品に登場させるコーヒーにも、変化がみられます。
そして、そのようなチェーン展開のコーヒー・ショップが増えるにつれ、
「香りのしない」コーヒーが日本中に溢れかえっている気がするのです。