再読『半島を出よ』(村上龍 著) | 遠近法で描く中国 -2nd Season-

遠近法で描く中国 -2nd Season-

片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:村上龍
出版:幻冬舎 / 平成19年8月 / 文庫本
ジャンル:小説、北朝鮮、福岡

自分で自分のブログを管理するのが面倒なのですが(微笑)、
当ブログでも最低二回は紹介している作品です。
物語の設定は2011年ですから、現世界ではすでに追い越していることになります。
その時期、我が日本は、まるで悪夢のような、民主党政権だったわけです。
まるでこの作品に描かれていいる、内閣府そのもののような。

物語は、北朝鮮の反乱軍と称する少数精鋭部隊が、福岡ドームを占拠し、瞬く間に応援部隊が到着、そして福岡市を占領下に置くところから始まります。
村上作品の真骨頂ともいうべき、豊富な取材力と構成力の下に、人間の感情その醜い部分までも含めて、壮大なスケールにて描かれた内容です。
占領されている側の、福岡市民の心情の描き方が素晴らしく、現実としてありえないことではない、と感じました。

現実の北朝鮮、というならず者国家が、どのようなアクションを起こすのか、全く理解できませんが、日本人として、ある種のシュミレーションとして、読んでおくべき2冊(上・下巻)だと思います。

もうお勧めというより、必読書ですね。

最後に、巻末の島田雅彦氏の解説から一節を紹介します。
「小説は共感を確かめ合うジャンルというよりは、情報量の多さを誇り、それが本当にあったことのように錯覚させる力が問われるジャンルだった。」(下巻/588頁)

私は、小説を読もうとする読者たち(自分を含む)が、小説と小説家のレヴェルをこれ以上なく堕としているのではと感じていて、島田氏の一言は、作家自身によるそのことへの痛烈なメッセージだと、受け止めました。


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