出版:三修社 / 2007年 / 単行本
ジャンル:歴史、日本史
仙台出身の歴史小説家、星氏の作品です。
氏は、会津藩の歴史を中心に多くの作品を書かれています。
彰義隊についてご紹介します。
鳥羽伏見の戦い(1868年/慶応4年)で幕府軍が新政府軍に敗れ、将軍徳川慶喜は大阪城を離れ、江戸に還ります。
その後、江戸における慶喜の警護の目的で結成されたのが、彰義隊です。
新撰組が京都の守護なら、彰義隊は江戸の守護だったということです。
<目次>
はじめに
第一章 慶喜逃亡
第二章 東叡山寛永寺
第三章 戦火関東に広がる
第四章 奥羽越列藩同盟
第五章 上野戦争前夜
第六章 アームストロング砲
第七章 残党狩り
第八章 榎本艦隊
第九章 東京遷都
特別寄稿 彰義隊と江戸っ子(乙部融朗)
彰義隊決戦の地・上野公園散策(遠藤由紀子)
あとがき
気になった個所のご紹介です。
「山岡はのちの幕末の三舟と呼ばれる男である。三舟とは、勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟である。」(31頁)
→山岡鉄舟は、江戸の戦争を回避するため、慶喜の意を受けて西郷隆盛と直談判した豪の男です。
「「これをのめば、江戸攻撃はいたしません」
と西郷がいった。山岡は項目に目を通した。
一、城を明渡す事
一、城中の人数を向島へ移す事
一、兵器を渡す事
一、軍艦を渡す事
一、徳川慶喜を備前へ預ける事」(36頁)
→山岡は最後の一項をのめないとし、それを西郷に認めさせます。
「寛永寺のシンボルは輪王寺宮だが、上野の山の最高実力者は寛永寺執当職、覚王院義観である。彰義隊の黒幕はこの人である。」(60頁)
「司馬遼太郎の作品に『アームストロング砲』がある。司馬が強調したのは佐賀藩の文明だった。「幕末、佐賀藩ほどモダンな藩はない。軍隊の制度も兵器も、ほとんど西欧の二流国なみに近代化されていたし、その工業能力も、アジアでは最もすぐれた「国」であったことはたしかである。」」(183頁)
「この一連の上野戦争、我れ関せずと傍観していたのは勝海舟と福沢諭吉だった。」(189頁)
「当初、西郷にとって彰義隊はそれほどの存在ではなかった。江戸の警護に使ってくれと海舟がいい、人のよい西郷が押し切られた形で彰義隊が発足した。江戸の治安部隊である。しかし、彰義隊が暴れまわり、江戸っ子が盛んに応援するようになって、考えが変わった。討伐である。」(192頁)
「江戸の者は彰義隊は不敗だと思っていたが、たやすく打ち落され、落胆の様子だった。」(195頁)
「彰義隊に集まった若い旗本たちは、完全に行き場を失っていた。未来の保証はなにもない。海舟がどうわめいても、そこには説得力がなかった。忍耐すればこうなるという展望を与えることができなかった。ただやめろでは、若い旗本たちの暴発をとめることは無理だった。彼等にとって海舟は腰抜けであり、尊敬の対象ではなかった。」(200頁)
「慶喜がふがいなく恭順し、海舟と西郷の腹芸で江戸の無血開城となったのは、それなりに評価できるが、旗本の若者たちは、行き場を失ってしまった。彼らはいかに生きるか、目標を失っていた。これも慶喜の大罪の一つだった。」(219頁)
「榎本は当時の日本人としては、最高の国際人であった。ヨーロッパで五年間生活し、国際法にも通じていた。各国の外交官も驚いた。語学はオランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、だいたいの言葉は話せた。」(254頁)
「会津に一片の同情もないのは、あまりに矮小で冷淡すぎる仕打ちだった。榎本は海舟の本心を見抜いた。一徳川家しか眼中になく、国家、国民はどうでもよいという自己中心の思想だった。」(247頁)
「列藩同盟には演出家がいなかった。世間をあっと驚かせるデザインが少なかった。今日、見ることができるのは、列藩同盟の旗である。輪王寺宮を皇帝に推載したのだから、菊の御紋ぐらいは、こちらも付けるべきだった。」(274頁)
→wikipediaの「奥羽越列藩同盟」のページで旗をご覧いただけます。
「彰義隊というのは、江戸の町の人にたいへんに人気がありました。「情人(いろ)にもつなら彰義隊」水商売の女の人たちはそういう言い方をしたそうです。」(291頁)
「(前略)上野の陥落は、表面上は西郷の功績ということになりました。そのゆえに現在の上野の山には西郷の銅像があります。戦いに勝った将軍の偶像を、陥落させた城跡や征服した国の首都に建てた例は外国にはありません。東京にマッカーサーの銅像を建てよう、と言い出したのは日本人ですが、実現しませんでした。」(297頁)
「彰義隊は時世に逆らい、ただ一つの目的、徳川家再興というプライドを持った。単純だからこそ、その志は糾合した。生きることに執着せず、死ぬことで本懐を遂げたサムライたちであった。決して、死にたかったわけではない。生きることを考えたからこそ、死に至ったのである。」
星氏は歴史小説家ということですが、引用させていただいたように、途中司馬遼太郎氏の作品が引用されるなど、フィクションの舞台のみで構成された作品ではありません。
慣れないと、少し読みづらい部分もあるかもしれません。
また、主観となる人物の視点で描かれてないので、多くの事柄がぶつ切りに列挙されているような印象も受けました。
ぼく自身は、関西の人間のため、上野には馴染みがないのですが、機会を見つけて、ぜひ一度上野を散策してみたいと思いました。
彰義隊―われら義に生きる/星 亮一

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