きっかけは別の恋から
誰にでもあることかもしれない。
別れた直後は気づけなくても、時間の経過とともに理由がわかることがある。
しかもひょんなことから、そうだったのねと苦い思いを噛みしめることも。
そんな出来事がまた最近起こった。
発端は、仕事で一緒だった男性との関係だった。
私がその仕事を辞めることになったので、男性と会えなくなる。
会いたいけど、会えない。
その切なさにとうとう耐え切れず、私はタロットで彼との関係を鑑定してみた。
するとーーー
恋を表すカードは一つも出てこない。
完全に片思いだ。
しかも私の願望のカードは、あきらめきれずに、新しい一歩を進めない。
まだ彼に執着しているというカードだった。。
私の恋心と、相手の気持ちが完全に乖離している。厳しい現実が頭をよぎる。
タロットは全体を読み取ることが大事だけど、恋のカードが一つもない。「無理だよ」と私の肩をそっと押してくれる。
もし彼の気持ちを無視して、私から積極的にどんどん進めていったらどうなるか。
これまでの恋愛経験から、私が傷つくことは明確。
二人の関係を深めていく時間が足りなかったかもしれないけど
彼が私のことをどう見ているかというカードでは、常識的で知性を振りかざすクールな女性と出ていた。
カードはあくまでもヒントと私は考えているので、もちろん、その通りではない。
でも彼の態度から、そんなこともあるかもしれない。可能性の一つとしてね。
過去の恋とダブって見えた
互いに本物の恋ではなかったということがわかると、
かなり前の切なすぎる年下の彼との恋が破局したことがダブって見える。
その年下の彼との出会いは、ある会食会。
隣に座ると話が弾んで、二次会、三次会とずっと一緒で、帰りの電車も途中まで。
乗り換え電車を間違えたというアクシデントも楽しかった。
最初から「ずっと楽しい」が続き、また会いたくなる。
完全に恋する女になっていった。
そのあとも二人でお茶したりして、ますます彼のことが好きになっていった。
ところが彼が会社を辞めて仲間と会社を作る予定だと打ち明けられ、それから連絡が取れなくなった。
やっと彼から連絡があり、彼が自分たちの会社のことでいっぱいだったことを知る。
連絡が取れない理由がやっと分かると、
逢いましょうということになって、初めて二人きりで夜ご飯へ。
待ち合わせをしたカフェはまだある。でも一緒にご飯を食べた和食の居酒屋は、もうない。
あの夜、居酒屋を出ようとしたときに、
彼がブーツの紐を丁寧に結んでいたしぐさが、美しいと感じた。
それから小さなカウンターバーで飲み、気づいたら最終電車が終わっている。
「タクシーで帰る」と言ったら、「うち、来なよ」と彼。
当時、彼が住んでいたマンションまで、タクシーですぐだった。
今から思うと、彼は「楽しいから一緒にいたい」といういう理由で誘ったのに、
一方、私と言えば、鼓動が高くなり、期待値は最大限に。
既に、ここからずれが生じていたんだろうね。
タクシーから降りて、近くのコンビニで彼は飲み物と「これ、美味しいよ」とおにぎりを購入。
マンションの部屋のドアの前で「ちょっと片付けるから待って」。私はドアの前で待たされる。
期待はますます高まる。今夜、彼とそうなるの?
恋する乙女、いえ、恋する大人女子の私はふと思い出した。
父が他界したときに、次の恋の相手と結婚する。
なぜかそんな決意を抱いていたことを。
すると、猛烈に彼のことが「運命の人」に思えてしまう。
恋心が暴走する瞬間だった。
でも彼はそんなつもりはなかったんだよね。
部屋で彼が好きだという映画を観て、眠くなって、寝ようということになり、
彼はベッドで、私はソファーかなと思ったら、
自分が横になっているベッドで、私が隣に来ても良いという。
え?これってやっぱりそうなの?
恋する大人女子は、そのまま彼の横で、白雪姫のように眠っていればよかったのに
大人女子は白雪姫のような優雅さを忘れて、暴走してしまいました、とさ。
終わった後で、彼は突然「違う」と言い出した。
何が違うの?
言葉にならない激しい動揺が私を捉えて、そのまま心は膠着状態に。
彼はキッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してごくごくと飲んだ。
最初のとりでを超えられなかったこと
私は彼と男女の関係になりたかったけど、彼はあの夜、そのつもりはなかった。
それに気づくのに、かなりの時間がかかった。
最初の出だしにつまずくと、そこから関係を引き上げるのは、至難の業が必要となる。何事にも。
あの時の私に、今の私がアドバイスするとしたら、
ショックを受けたら、しばらく放置しておくこと。
繋がっていると感じていたい気持ちはわかる。それでも放置して、他のことに夢中になること。
縁があるなら、必ずまた会えるのだから。
確かに、その通りになった。何年かたってから彼と再会したが、
でも彼と本当に別れることになってしまったのは、この最初のすれ違いからのショックを乗り越えられなかったから。
何年か経って再会した相手は、別人だと捉えたほうがいい。
別の人と新しい関係が始まるのだ、とね。
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夏目かをる
コラムニスト、小説家、ライター
2万人の働く女性を取材、執筆
10万人に一人の難病を後遺症なしに完治
https://docs.google.com/document/d/1n63V0M6XT2Het6GGRYbOC-ScTSg8v2EzgtV7n6O0gtE/edit?tab=t.0
★書籍
・「英語でリッチ!」(14人のインタビュー集アーク出版)第12回ライターズネットワーク大賞受賞
・「サイ・イアングアンストーリー」(著名なクラシックアーティストの写真集コピーライティング)
・「歌舞伎入門 役者がわかる!演目がわかる!」(世界文化社・共著)
・「水絵を描く~佐々木悟朗の世界」(美術出版社)
・電子書籍「女子力アップの恋愛極意!~恋愛バイザーが本音伝授」(ウィナス)
【小説】
・「ボディ・クラッシュ」(河出書房新社)
・「季節はずれの恋」(講談社ムック本)
https://tcw.jp/moon-river/pdf/kisetuhazure.pdf
・「愛しているといってくれ」、「巡り合う恋人たち」など(いずれも飲食雑誌の巻頭小説)
【web】
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