閑話休題
~Mieさんのこと~
Mieさんとは大学一年生の「語学」の授業でおずおずと自己紹介をしあった。
二年生からはゼミも 一般教養の選択科目も重なった。
束縛し合うほどではなかったが、気が付けばなんとなく彼女が傍にいた。
彼女は中高一貫の名門の超お嬢さま学校を卒業し、私は、県立の進学校。
毛色の違う二人だったが、妙に気が合った。
初めてパチンコをしたのも、Mさんと。 たった100円。
はじめての飲酒
も学生寮の部屋でこっそり。
恋の話
もふたりだけで。
大学を卒業し、結婚し,それでも長い電話はよくしていたなぁ。
子が産まれ、それぞれの夫が独立開業し、次第にお互いの忙しさの中に埋もれ、だんだん間遠になり、
年賀状と誕生日カードだけが二人をつないでいた期間は長い。
夫の突然の自死も、彼女には伝えられなかった。ーここが私の弱いところ。
風の便りで知ったのだろう・・・・夫の帰天から半年ほど経ったころ、
彼女からハガキが舞い込んだ:
ひらがなでひとこと:
「わたしにできることはなぁに?」
彼女らしいな、あぁ彼女だぁ、と葉書を抱きしめて泣いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、 それから数年して、彼女から分厚い手紙が届いた。
箱身ひとつで家を出たこと、息子は夫のもとに残したこと、荷物は段ボールはひと箱だけだったことなど。
驚くべき内容だった。
「私のために祈ってください。」と手紙は結ばれていた。
祈りますよ! 祈りますとも! 何があったのだろうか?
祈りながら連絡を待った。
待つことに疲れた頃、 彼女から「こちらに来る用事はないか?」と連絡が。
直近の週末を指定した。
もう私も以前のように豊かではなかったが、集められるだけの現金をしのばせて
待ち合わせ場所に向かった。
彼女はそれまでと変わりなく おだやかで美しい笑顔。
抱きつく私に「心配かけてごめんね。」と。
雨風をしのげる場もあるし、お年寄りのお世話をする仕事も見つかったから大丈夫よ、と逆に励まされた。
私が黙って差し出したものが受け取られることもなかった。

あれから15年。
彼女は、鉄の階段に靴音の響くアパートの一室で、
清貧に今も暮らす。
彼女の旦那さまとの間のことは描きたくない。
酷い男もいるものだ、とだけ。
一昨日、彼女の住む町の近くを通った。
彼女が同じ空の下にいるだけでいい。
初めて会った日から四十数年がたつ。 Mさんは私の『親友』だ。ほんとうに。
~祈るときに灯す和蝋燭~