草野心平 『子供に。』
遠い蒼い空の奥の窪みのように。
お前は俺の中に沈み。
おれは抱きすくめる。
毎日は買ってやれない飴ん棒達をこんなによろこぶのを。
お前の頬にこすりつける。
おれは想い出す。
前橋の冬。
お前はそこのトタン屋根の薄暗い長屋の六畳に生まれた。
おむつの万艦飾の下で一ダース程の貧しいはなたれ天使達が。
お前も裸でよちよち歩いていた。
そうして、今。おれらは一枚の布団を四人で着。
その中の一人が小さいお前でおれの胸に埋まってねるのだ。
やがてはそれをお前に話すことが出来る。お前はむしろそれをうれしく思うだろうことを信じ。
おれはお前をだきすくめる。
(何んたる声をたてたい吸い込む空)
さ。べい独楽と遊べ。
ナ。
夜の仕事に。おれは出掛けて行かにゃあならん。
この詩を読んでいて
親が子を虐待し あげく 死に至らしめる
ということが果たしてこの世にあるものだろうかと
ふと思ってしまう
日々聞こえてくる悲愴な事件に
世の無常、不浄を思うしかないのか
無力を ただただ ただただ 知るのみ