リダクテッドは、redact(編集する)の過去形「編集済み」という意味で、ここでは、「都合の悪い情報が削除された文書や映像」を指します。
巨匠ブライアン・デ・パルマ監督の今作、イラクのサマラに駐留する米軍兵士のプライベートビデオによるドキュメント映像に検問所における悲劇、米軍による悪逆非道な惨殺事件、米兵への報復などが絡み、プライベートビデオの映像は明るく弾けた当初からは想像できないほど、どんどん陰鬱で暗澹たる映像になっていきます。
この作品は、あくまでフィクションであるとしていますが、実際の事件やたくさんの資料を基に作り上げた限りなく真実に近い虚像であるといえます。
サマラのある検問所にはピンと張り詰めた空気が漂っています。そんな場面にレクイエムのような音楽が流れ、さらなる緊張を煽ってきます。
米軍のいるあちこちにはテロによる爆弾が仕掛けられ、常に死と隣り合わせの中、緊張、恐怖、疑心暗鬼に心身は疲弊していきます。
そんな中、検問所にやってくる車を検問する米軍は、識字率の低い市民に通過方法を事細かく指示し、その指示を破った者には銃弾を浴びせます。
2年間の検問で、米軍が殺した2000人のうち、敵はたったの60人だったそうです。
1940名は、まったく罪も無い一般市民です。しかも、米軍兵は、何のお咎めもなしです。
また、検問所を通る少女には犯罪まがいのボディチェックを行い、己の欲求を満たしているかのように思えるシーンも。そして、米軍によるレイプ殺人事件が発生します。己の欲望・欲求を満たすために悪鬼と化す姿は、抑止され恐怖や緊張を強いられる中で行き着いた、人間崩壊を見せられたようにも思います。
最後にはイラクの国民の目を覆うばかりの真実の写真が惨状を訴えかけてきます。
そして、まったく無音のままエンドロール。
観客は完全にフリーズ状態となり映像が走馬灯のように繰り返されます。
この作品には悲劇しかありません。誰も幸せにはなりません。誰も喜んでいません。作品からくる強いメッセージを受け止めて、戦争の愚かさ、残酷さ、卑劣さを改めて思い知りました。
日本もそうですが、都合の悪い事は隠し、捻じ曲げ、時には闇に葬っている事実に、ただただ虚空を仰ぎ、憤るしなかないのか。
現状を知らない、知らされない自分たちに何が出来るんだろう。
今、アメリカでは大不況のなか、軍隊へ入る若者が増えているといいます。しかし、その一方で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)による自殺者が多数おり、爆発や爆風による脳障害が相当数(イラク戦争では派兵された2割以上と言われています)に及んでいるといいます。
力による抑制、抑圧が正義なのか、それを是とするならば、何の罪も無い民間人の命を奪うのが本当に正義なのか、自国の兵士の人生を狂わせるのが正義なのか、当事者に強く問いたい。
