誰も守ってくれない | ライジング

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ライジング-誰も守ってくれない



『誰も守ってくれない』


「重大事件を犯した加害者の家族を警察が守る場合がある」というこれまであまり取り上げられなかった加害者家族とその家族を守る刑事が主人公の今作は、現在の凶悪化する犯罪の裏にはこれほどまでの過酷な現実を突きつけられるのかと息を呑むようなストーリーとなっています。


時系列にドキュメンタリーな要素も取り入れ、刻一刻と激変していく加害者の妹である沙織(志田未来)と家族(特にお母さん)の姿を見ていてまさに"背筋が凍る"ような思いでした。

加害者に関わる全てを犯罪者と位置づけ、徹底的に追い詰めていくマスコミやネット、民衆、さらには擁護されてはいるものの警察からも容赦なく責められます。

ほんの数時間前まで当たり前の平凡で笑いのある学校生活から、こんなにも変わり果ててしまうのかと自己崩壊しかねない状況へと突き落とされる15歳の沙織に、同情する者なんてほとんどいない現実に、憤るしかないのが虚しいです。


現代の犯罪に対する非情なまでの攻撃、そこに置かれた加害者家族の姿を上手く描いてるなぁと思いました。

ただ、ストーリー的にひっかかるところが無かったわけではありません。

作品後半、沙織をかくまう為にペンションへ逃避行する勝浦刑事(佐藤浩市)の心情がよく分かりませんでした。実は、作品を観た後、「キネマ旬報」の佐藤浩市さんのインタビュー記事を読むとやはり彼もこの部分にひっかかっていたようで、この場面では、彼なりの表現を加えたようです(どういう表現かは、作品を観てくださいね)。たぶん、普通に考えるとあそこには"行かないよな"、"行けないよな"と思います。でも、あの夫婦のペンションだからこそ行ったのだとするその後の夫婦の対応、言葉に、自分自身に納得を試みられる要素もあるかなと思いました。


キャストでは、とにかく志田未来が抜群に素晴らしいです。きっとこの作品は彼女の代表作の1つになるんじゃないかなと思います。感情をむき出しにしたり、表情や目で内なる感情を出したりと、ほんとうに難しい役だったと思いますが、見事でした。

佐藤浩市も今更ながらですが、彼独特の渋みと安定感のある存在力、そしてその役にストイックなまでに入れ込み取り組む姿勢には脱帽です。歳を重ねるごとにどんどんと大きな存在になっているように思います。

その他に、松田龍平は、先輩(勝浦刑事)をサポートするやんちゃそうで憎めない三島刑事役を好演していますし、ペンションの夫婦役、柳葉敏郎と大好きな石田ゆり子は、映像こそ少ないですが、後半の重要なアクセントとしてこれまた難しい役どころを好演しています。


それともうひとつこの作品の主題歌、リベラの「あなたがいるから」は幻想的で、傍に寄り添ってあたたかく包み込んでくれるような素晴らしい曲です。


最近、映画やドラマで取り上げられる個人情報ですが、技術革新やモラル低下によってどんどん個人情報がさらされるリスクが上がっていく現代にいかに日々の生活は不安定で脆いものかを思い知りますね。

ただただ怖いなぁなんて言ってられなくて、この作品のタイトルにあるように、結局は「誰も守ってくれない」んだと自覚することも大事です。「自分を守る」、「自分が守る」という気概がないと、人は、アッという間に崩壊してしまいます。

そんないろんなことを想起させてくれるのも、魅力ある作品ってことかな。

2009年の日本映画も期待できそうですね。