
ネロ「余の名はネロ! 誉れ高きはカザンが現皇帝、万能の天才にして至高の芸術!
ネロ・クラウディウスである!」
シロー「っ……ネロ・クラウディウス……アンタ今、そう言ったのか?!」
ネロ「ふむ? 先は知らぬと言ったが、その反応……異国の地ででも風の噂に届いているようであるな。うむ!」

『ネロ・クラウディウス』
……今から約1000年前、ハーネスの地に存在したカザンと呼ばれる国を総べていた皇帝……いや、暴君……
歴史資料レベルの書物に、幾度も書き綴られるような人物……屋敷にいたころの歴史の授業で……
書庫で読んだ伝記や英雄譚で……幾度も、目にした人物……

シロー(嘘、ついてるようには見えない……いったい……?)
ネロ「む、どうした? 余の顔に何かついておるのか?」
シロー「えっ、あ、いや……(と、いうか……)」

シロー(冷酷、かつ残忍……良くも悪くも有能すぎて、他の誰とも分かり合うことができなかった暴君……って感じで、歴史書には記されてたけど……
こうして話してると……)
ネロ「……ははん、さては余の美貌に見惚れてしまったのだな?」
シロー「え、あ、いやなんてーか……」

ネロ「よいよい、恥じらう必要などない! 余の美貌の前では仕方がなく、当然のことなのだからな!」
シロー(なんか、随分と印象違って見えるなぁ……)

ネロ「それよりさっきから思っていたが……汝はパッとせんな」
シロー「、……んんっ?」
ネロ「目からは覇気が感じられんし、会話も歯切れ悪く戸惑ってばかり。態度も煮え切らん。それでも剣士か? 腰の業物が泣いておるぞ」
シロー(ぐっ……なんも、反論できないな……)

ネロ「しかし難儀なものよな。よりにもよって斯様な時に、気付いたらこんなところにいたとはな」
シロー「……こんな時、って」
ネロ「む、知らぬのか? ……そうか、汝はここらの事を知らんのであったな」

ネロ「今、我が国の水源にマモノが巣食っておる。故に、これから余が直々に討伐しに行くところなのである!」
シロー「水源の……マモノ、退治……!」
ネロ「うむ!」

ネロ「国を離れるのは心配だが、鼻持ちならん元老院が珍しく腰を上げてくれたおかげで、国の守りは万全。後顧の憂いもない」
シロー「っ……!」

ネロ「それに、羽を伸ばせると考えれば此度の一人旅もまぁまぁ悪くはない」
シロー「…………」
ネロ「だが、しかし……ふむ! よしっ!」

ネロ「汝、此度の旅路への同行を許可しよう!」
シロー「っ、へっ!?」
ネロ「汝をこのまま放っておいてはマモノにやられかねん。我が国の領土にいる以上、捨て置くわけにもいかんしな」

ネロ「なに心配はいらん、汝が戦う必要はない。余がいれば何も問題などないのだからな!」
シロー「え、えぇと……まぁ、手がかりも何もないし、助かるけど……」
ネロ「うむっ! なら決まりだな!」

ネロ「さあついてまいれ! 余の傍を離れるでないぞっ!」
シロー「あっ、ちょっ、待てって!」