
シグナム「元の能力故か……奴はどうにも我が強い。己の戦い方、スキルを高めたがり、力をつける度に基礎を疎かにする」
つばさ「私にも覚えがあります。今では少し、恥ずかしいですけど」
シグナム「それをしても度が過ぎていた。己の力に自信があるあまり、相手を見下し、調子に乗り……」

シグナム「最近では、何度教えても言うことを聞かん。それでももとの筋がいい故に、勝ててしまう」
つばさ「シローとひびきは素直でしたが……ふふっ、跳ねっ返りですね」
シグナム「頭が痛いくらいにな」

シグナム「だから、実戦経験を持つ者相手にどれだけ通じるものか、試してやりたかった。その戦いの中で何かを学べれば……
……いや……格下と思うであろう相手に、いっそ負けてほしいと思ってしまっていた」
つばさ「…………」
シグナム「指導者としてあるまじきことだと思っている……手塩にかけ、師事している身だと言うのに、負けてしまえなどと……」
つばさ「……いえ、そんなことはないです」

つばさ「彼女は強い。シローが容易く勝てる相手でもない、素晴らしい力を秘めた子です。彼が負けていても、おかしくはなかった」
シグナム「…………」
つばさ「それに……私は、正しい道に進めるのであれば、彼から嫌われても……
この命をかけても、構わない。その覚悟だけは、常にこの胸にあるつもりです」

つばさ「私達は、彼らを導かなくてはいけません。それは、自分で歩く道を決めるより、自ら歩みを進めるより、ずっと大変なこと……
後進の指導は……大変なことも、悩むことも、苦しむことも沢山ある……一概に、楽しいものだとは言い難い……」

つばさ「だからこそ、やりがいがあるんです」
シグナム「……ふんっ、惚気てくれるな」
つばさ「ふふっ。ええ、惚気です」
シグナム「……、……ふんっ」

シグナム「ともあれ私は賭けに負けた。くだんの話、私の名をもって申請書は出してやろう。精々がんばれと伝えてやれ」
つばさ「ふふっ、伝えておきます。それと……賭けには、本当に負けたのですか?」
シグナム「……ふんっ、抜かせ」